あもる一人直木賞(第169回)選考会ー途中経過1ー | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

ふぅ・・ふぅ・・。

なんとか間に合った(まだ何も記事書いてないけど)。

3連休、マジ神!!

急遽決まった発表会に向けて詰め込まれたピアノレッスンやら老眼鏡購入やら色々予定もある中、3日で3.5冊読むとか自分で自分に感心する。

やればできる!・・とかいう前に、もっと早くからどうにかならんかったかと毎度反省。

そして半年後同じことを繰り返す。

 

てなわけで急いで帳尻合わせと参ります。

 

 

聞いて聞いて〜。まずは朗報。

もう受賞作は決まってるの。私の中で。

・・・はい、そこ!前も同じこと言ってたとか言わない。

なんてったって私には皆様も記憶に新しい輝かしい実績があるのだ!

前回は早々に決まっていたにも関わらず(=そういう時は大抵外す)、なんと大ホームラン。

しかもW受賞まで言い当てるという1000年に1度の奇跡を起こした。

ならばここらでもう一度、500年に1度の奇跡を起こそうではありませんか。

 

今回の直木賞選考会も前回同様、特に読む順番も考えないまま、以下のとおり手に取った順で読んでみた。

※()内は出版社。

 

(1)月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)

(2)垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)

(3)冲方丁「骨灰」(KADOKAWA)

(4)高野和明「踏切の幽霊」(文芸春秋)

(5)永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」(新潮社)

 

特に読む順番も考えてないとか言うわりに、最後に永井さんを置くあたり、えこひいきマンあもちゃんのセコい気持ちがよく表れている。

さらに読み進めるうちに、しまった!と思う事実が判明。

 

(3)冲方丁「骨灰」(KADOKAWA)

(4)高野和明「踏切の幽霊」(文芸春秋)

 

この2作、どっちもホラーなの。

そうでなくてもホラー系が苦手なあもちゃん、真夜中に立て続けにホラー読むの、コワイって!!

コワイ・・と震えながら読んでいたら、突然壁が「ピシッ」とか音を立てるもんだから

ひっっ

とか声出しちゃったよ。途中まで(意味深w)ほんと怖かった〜><

 

 

てなわけで順次発表してまいります。

順位については読んだ時点でのもの。

次の記事以降で順位は上下していきます。

 

※全体的に作品の内容に詳しく触れています!!!(次回以降の記事も同様)
 

1位 垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)
2位 

3位 

4位 

5位 月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)

 

◇◆

 

 

特に印象に残らないアクション小説だったなあ、という感じ。

だからと言って面白くないわけではなく、気軽に読むには楽しい。

アクション1つ1つは面白いし、昔の「あぶ刑事」(今の若い子は知らんやろなあ・・)みたいなドンパチも面白い。

ただ・・・いや舞台は現代の日本ですよね!?と問いたくなるほど、派手な撃ち合いが繰り広げられる。そして死体の山。

そんなん今の日本で起こったら上を下への大騒ぎやわ!!!

その他、色々と大事件が起こりながら事件解決へと進むのだが、か〜な〜り、都合よく進んでいた。

流石にそうはならんやろ・・

いやそんなバカな・・

とコロナで寝込んでいたあもちゃんは思いました。

(とうとう新コロに罹患して隔離中のヒマな時間に読みました~。

 新コロ罹患の話なんぞはまた後日。)

何が都合がいいって、あんたたちはエスパーかなんかですか?ってくらい、上司の隠れた意図(政治的な駆け引きとか)を部下が汲んで、上司の代わりに色々と動いていくとこ。それも一度や二度ではない。

もうこれはエスパー以外の何者でもないですわ。

それともデキル官僚とかってそんな感じなんやろか!?ニブチンなのはあもちゃんだけ!?

上記2点について、選考委員から苦言が呈されそうな気がします。

でもいい描写もあった。

暴力団の倉庫に刑事たちが聴取しに来ているタイミングで、別の勢力が急襲するシーンはまるでハリウッド映画のトム・クルーズとキャメロン・ディアスの「ナイト&デイ」みたいだった。

(二人が倉庫みたいなとこにいて、黒づくめの大集団が窓の外から吊り下げられながら登場するとことか!)

 

↓この倉庫のシーン!

 

ドンドンパンパンを楽しむなら、この映画くらい馬鹿馬鹿しくても(超褒め言葉!この映画、私大好き)よかったと思うが、今の中国と香港の政治的な事件を絡めてちょっと深刻ぶるから、こちらとしてもなんだか心持ち的にややこしいことになった。

真面目と不真面目のバランスが悪かったのだと思う。

 

月村さんのこの作品はおそらく「今後、お見知り置きを」枠での選出だったと思うのだが、同じ枠ならできれば別の作家さんの作品が読みたかったな・・。しかしこういうことがないと月村さんの作品は一生読まなさそうなのでよかった気もする。

 

それ以外に特に言うこともないので、続きまして〜

 

◇◆

 

 

2段組の小さい文字が私の老眼を、そしてその分厚さと重さが私の顔を直撃!

←寝ながら読んで顔に落とす。

 

前半(意味深w)面白かったなあ!!!

私たちのイメージする武士や侍って戦国時代や江戸時代のものなんだよな〜と改めて感じる作品でもあった。

鎌倉時代や室町時代の武士って、まだ統制も取れてないし、武士道のような規律?めいたものもないし(多少はあるのかもしれんけど)、ものすごく野生的で粗くて意識も戦国時代の武士とはまるで違う。だから私たち読者の根底には無意識に「武士像」があるため、戦国時代以降を描いた時代小説って読みやすいのだと思う。

まだまだ混乱しまくっていた、世界も人も明瞭でない鎌倉時代から室町時代という時代の移り変わりとその時代に変化に翻弄される武士たち(足利尊氏と足利直義(尊氏の弟)、高師直、そして楠木正成ら敵方)を描いた、大変面白い作品であった。

 

前半はもう完璧!

序盤の、海にたゆたう小枝を幼き頃の尊氏・直義兄弟が見ながら、波の動きを見ながら枝の行き先を当てる尊氏・・という描写に、あ~またこのパターンか~、と一瞬思った私。

垣根さん、「信長の原理」でもそういうシーン(働きアリの法則)を書いていた。

 

 

今回もたびたびこの「波にたゆたう小枝」「方円の器に従う」というキーワードが出てくるのだが、そのキーワードにふさわしい尊氏の描写となっていた。

足利直義(尊氏の弟)と高師直(尊氏の側近)の視点から尊氏中心に起こる事象を交互に描く。

自分のことだけではなく、他人にも関心がない。だから保身に走ることなく、ただみんないい感じに収まってくれればいい。

という尊氏のな~んも考えてない(ように見える)フワフワとした感じと、ただ弟は自分より大事!という性格がよく描けていた。

 

弟・直義の大ピーンチ!!!!

しかし足利家の威信にかけて弟を助けにいってはいけない場面。

で、尊氏は足利家の威信なんかどうでもええわ、自分の命より大事な弟・直義を助けねばー!

と必死に引き留める部下を振り切って、猛ダッシュで弟の死闘の場に駆けつける。

やってきた兄の姿に直義は激怒する(足利家の威信が~)も、尊氏は

「エヘヘ。来ちゃった(テヘペロ)」

てな具合。

そんなゆる~い尊氏に力が抜けた直義、命の危機を救われたこともあり、泣き笑いするのであった。

このシーンでわたしゃ腹抱えて爆笑しました。

 

ただこういうシーンはマレで、尊氏は部下の言うことに耳を傾け、基本的にはそれに従う。

担ぐ神輿は軽くてパーがいい

という言葉があるが、まさにいい意味でも悪い意味でも尊氏を「軽い神輿」として描いていた。

政治的なことは全く分からないが、みんなに優しいおおらかな尊氏を足利家、ひいては日本の武士社会の頂点として、有能な弟・直義と側近である高師直が脇を固めて導いていく。

 

・・・導いていくものらが常に正しければそれでいいのだが・・・

・・・導いていくものらが常に仲が良く、同意見であればいいのだが・・・

 

中盤からは流れてくるその不穏な雰囲気もよく描けていた。

ではあるのだが、途中から急に作者のナレーションが入ってくる。

え?突然!?

と私は戸惑った。

中盤以降、わりと頻繁に作者の声が登場。そして超絶駆け足!!タッタカター。

最後まで直義と高師直の視点からじっくり描いていってもよかったのではなかろうか。

とは思うものの、室町幕府を誕生させたあとも、あちこちで揉めまくってて「直義と高師直の視点」だけで描くのも限界ではあったのだろう。

 

時代小説の難しいところは、事実が点として存在しているところ。

そのまばらに散らばる点をいかに物語としてつなげていくかが作家さんの腕の見せ所。

でも事実は小説よりも奇なりという言葉があるように、なんでそういう行動をとったのか、というのが本人に聞いてみなけりゃわからないようなことも多く(例えば本能寺の変などは数え切れないほど説がある)、主人公の性格や考え方を詳細に描けば描くほど事実から離れていくことも多々ある。そうなるとその事実の点まで強引に理由付けをして持っていくしかなく、直義と高師直の視点からだけでは語れない色々もあったのだと思う。

この作品でもそういう部分がちらほら見られた。

時代小説の難しいところだよなあ・・・

 

尊氏は「軽い神輿」で自分や他人についてしがらみ無く、部下や弟の言うことに従う、という人物像ではあったが、自分の意思や保身で動くことも多く、それでも周りの尊氏の人物評は一貫して「軽い神輿」であることへの違和感。

作品全部を読んだとき、尊氏って結局自分のことが一番大事だったのではないかな、と思った。

それならそれでいいし、結果としてわりと一貫してそういう感じで描いたのだから、だれかがそのことに触れてもよかった気がするのだ。

 

とまあここまで散々文句を言ってきたが、面白かったのは間違いない!

特に褒め称えたいのは敵方・新田義貞、楠木正成らの描写。

いずれもよかったわ~。

あと私のお気に入り、赤松円心。おじいちゃんス・テ・キ!!

(ナウシカのミト爺みたいなイメージ。どうでもいいけどミト爺って40歳だそう。まさかの年下!)

あとはねえ~武闘派皇族たち。彼らについてはあまり詳細には書かれていなかったものの、どいつもこいつも(あ、皇族の皆様に失礼><)好戦的でそういう時代だったということがよくわかる。

そういう時代だったというのがよくわかる、というのは他にもあって、とにかく皆が節操なく寝返る。戦国時代に入るともう少しマナー?秩序?みたいなのがあって動きがわかりやすくなるのだが、この時代はまだ混乱しまくっていて、さっきまで足利側にいたよね?という人がもう敵方にいるし(佐々木道誉とか。婆娑羅~)!やりたい放題の混乱の極み!

室町幕府の畿内って血なまぐさかったんだなあ・・・と全く見知らぬ土地ではあるが畿内という地に思いを馳せるのであった。

 

そんな魅力的な敵方に対し、主人公周辺のキャラがムムム。

ホニャララとした尊氏はともかく、弟の直義が途中まではステキ石頭だったのだが、すごくデキル人描写なわりに結構トンマ笑。しかも戦下手・・でもなぜかデキル風。ちょっといい動きしたら高師直が大絶賛・・さっきさんざんけなしてたのに><

高師直も似たような感じ。直義に比べるとわかりやすくて、ちょい悪でよかったけど。

ただ幕府誕生後の直義と高師直の対立の描写はよかった。

どちらにも言い分がある、という。私もどちらにも味方しちゃいたい気分であった。

それは現代でも同じことが言えるよね。

簡単に白黒つけられる問題ばかりならどんなにいいか・・。

 

てなわけで次回、ダークホース登場!・・続く。急げ~!