まぼろしヘア。 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

2年前、髪を伸ばしはじめた。

目的は特になかったが、伸ばし出した頃、妹の結婚が決まり、
妹の結婚式で着物を着るのに、髪を結える長さまで伸ばそう、と思い至った。

そして妹の結婚式も終わり、切るタイミングになったのだが、
強く反対する輩がいた。しかも身近に。

夫「長い髪でいなよ~。切るのはいつでもできるでしょ~。モッタイナイ~。」

長くなった私の髪をクルクルしながら、モッタイナイモッタイナイ、と呪詛を唱える夫。
モッタイナイと言われれば、確かにもったいない気がしてくるから不思議なものである。
吝嗇家のあもちゃんのケチ心をくすぐる言葉、それが「モッタイナイ」。

髪の毛を切ろうと思い立っては繰り出される、モッタイナイ、の言葉。
マータイさんも裸足で逃げ出すほどの、夫のしつこい呪詛。

しかし、なんの力か、先週突然、吝嗇家あもちゃんにその呪詛が効かなくなった。

あっという間にバッサリ切ってやったわ。
フハハハ。蝋人形にしてやろうか。

美容院にて。

美容師さんが
「本当に切っちゃう?」
と念押ししてくる。

私は、
「バッサリ、いっちゃってください!」
と元気よく答える。

バッサバッサ、刈られてゆく私の髪。
あっという間にパッツパツの短髪に。
鏡の中には短髪あもちゃん。
あらあら、お久しブリーフ、短髪あもちゃん。

椅子の下には、切られた髪がてんこ盛り。

私「今迄、ありがとう~。さよなら、私の髪。」

と椅子の下に落ちている髪の山に向かって、一人でくだらない寸劇をしていると
向こうに座っていた女性客が
「なに?なになに?どうしたの?」
と彼女の担当美容師に問うている。

問われた美容師は
「あちらのお客様が長かった髪をバッサリ切ったんですよ。すごい量ですよ。
 あんな量、なかなか見られないですよ。」
と答えると、その客は
「見たい、見たい~」
とケープをかぶったまま、私の髪の毛を見にきたではないか。

美容師と客数名、全員が私の髪を見ている。
変な光景。

そこで美容師が言う。

「そういえば、以前、ものすご~く長い髪の高校生がカットしに来たとき、
 髪の毛を寄付するから、って、
 根元をゴムでしばってジョキンと切って、髪の束を持って帰ったことがありましたよ。」

髪の毛を寄付!?
なに、その気持ち悪い寄付は。

と思ったら、
病気や薬の副作用などで髪の毛が抜けた人のためのカツラを作成しているところに、
切った髪の毛を提供する、ということだった。

ちょっと!!!!
そんなものがあるなら、切る前に言わんかい。
私の捨てるだけの髪がお役に立てるならいくらでも寄付するわよ。

私の髪、スーパーサラツヤストレート。
自慢じゃないが、昔から髪の美しさだけが自慢だったんだから。←結局、自慢。

しかし私が髪の毛なんて寄付したら、ちょっとした事件になってしまうかも。
その美しさに魅かれて世界中からどっと人が押し寄せて来るだろう。
また、日本全国のあもマニア4~5人にとっては、あもヘアなんて垂涎ものだ。

以上、楽しい妄想終了。

てなわけで、寄付することもできないまま、私の髪はゴミ箱にポイされたのであった。
それこそ、モッタイナイ、だよ。

※後日、調査したところ、寄付するためには31cm以上の長さが必要らしく、
 計ってはいないが、あもちゃんの切った髪、おそらく31cmはなかったと思う。
 結局、ゴミ箱行きは免れず。


夫に文句の一つくらい言われるかしらん、と思いながら帰宅したものの、
その夜、帰宅しなかった夫。
翌朝起きると、夫が寝室で寝ていたので(私は別室で寝てた)、

「おはよ~ごじゃります~!!!」

と夫に飛び乗ると、ぐえ、と言いながら

「うーん、おあよ・・・」

ともにゃもにゃ答える夫。
そして寝ぼけながら私の頭をナデナデ・・・

「え!?あもちゃん!!!!髪の毛どうしたの!?!?」

と飛び起きる夫。

おほほ~!切っちゃいました~!

と答えると・・・

感傷的で、あまりに偏狭的な。

こんな顔してた。 →出典:「あさきゆめみし」3巻


感傷的で、あまりに偏狭的な。

夫  「なんで切っちゃったの~~~~。
    髪の毛クルクルできないじゃないか~~~~~。」

光源氏「あの夜、手に巻いた黒髪を 
    私の思いとともに切り捨ててしまわれるのか」

お前は、光源氏か。

私「短くてもかわいいでしょうがよ。」
夫「短い髪もかわいいけどさ~~~~~」→全日本妻褒め選手権9連覇中。


久々、短髪になってわかったこと。

首が寒い。
そして、長髪時代特有のクセが抜けない。
 →とっくりセーターを着た後やマフラーを巻いた後、
  セーターやマフラーの中に入った髪の毛を手で出すクセ、とか。
  短いくせに、首に手を入れて、髪の毛がない、ことにいちいち驚く。

幻肢痛ならぬ幻髪癖から、しばらく逃れられない模様。