平成中村座 12月大歌舞伎 | 感傷的で、あまりに偏狭的な。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

ホンヨミストあもるの現在進行形の読書の記録。時々クラシック、時々演劇。

平成23年12月25日(日)、平成中村座12月大歌舞伎(in 浅草)を観に行く。

感傷的で、あまりに偏狭的な。

扇雀祭りだ、ほほいのほい!

大学時代、京都の南座で観た中村勘三郎(当時は勘九郎)さんが
私の永遠の憧れであるとするならば、
社会人になって観た中村扇雀さんは、私の心の恋人である。

心の恋人、扇雀さんが「芦屋道満大内鑑」で葛の葉を演ずるとな。
こりゃ行かねばならん、れっつらごー!

毎日毎日、質素倹約を心がけ、
セコセコ小銭を貯めてようやく手にしたチケットを握りしめ、
クリスマスにわざわざやってきました、浅草平成中村座12月大歌舞伎!!


感傷的で、あまりに偏狭的な。

スカイツリー!!
待ってて~、扇雀さん~~~~!!!

・・・2日前にも見たよな・・・。

$感傷的で、あまりに偏狭的な。

ああ、この日は、愛しいお方、佐渡ちゃんを見に行ったんだった。
 →参考記事『創立100周年 東京フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会

今年のクリスマス3連休はスカイツリー三昧。
クリスマスツリーではなくスカイツリーでメリークリスマス☆

ピロ~ン。

あ、後輩きのこからメールだ。

「メリ~クリ◎◎ス!」

おい!!おいおい!!!
そこ、伏せ字にするとおかしいやんけ!!!!!!!!
え?
ええ、ええ、クリスマスしかありませんよね!!!!!

そんなくだらないメールに大爆笑しながら、ようやく到着、中村座。


感傷的で、あまりに偏狭的な。

劇場正面の入口上に見える“櫓”。←紫のやつ。
江戸時代、櫓は公式に認定された劇場である証として、
江戸三座にのみ上げることが許されていた。中村座もそのうちのひとつ。らしい。


感傷的で、あまりに偏狭的な。

先月も来てるけど、記念記念。


感傷的で、あまりに偏狭的な。

中村座の注意事項を説明するスタッフ~。


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夜の蝶もおめかししてのご観覧。


感傷的で、あまりに偏狭的な。

昼の蝶あもるは、もしゃもしゃどらやき食って、腹ごしらえ。

前回、おしりのほっぺが痛くなった教訓を生かし、
今回は、厚手のストール持参。
そして気兼ねなく座り直せるように、ワンピースを着てきたんだ~。
あもちゃん、えら~い。

◆◇

扇雀祭りを楽しむため、今回は夜の部を観覧。

◆「芦屋道満大内鑑」 一幕 葛の葉
【第一場 阿倍野機屋の場】
 保名が葛の葉姫と阿倍野に住んで六年の歳月が経ったある日のこと。
家で葛の葉(中村扇雀)が機織りに勤しんでいるころ、蜻蛉釣りをした安倍童子(後の安倍晴明)が戻ってくる。葛の葉は、虫を殺して遊んでいる童子を諭しながら昼寝をさせると、再び機織りを始める。
 ここへやってきたのは、妻のシガラミ(中村歌女之丞)と娘の葛の葉姫(中村扇雀/二役)を伴った信田庄司(片岡亀蔵)。彼らは保名の行方を尋ねてきたのである。
 庄司の声に応じて、家の窓から顔を覗かせたのは、娘と瓜二つの女性。これを見て驚いた庄司は、娘と妻を傍らの納屋に忍ばせる。折からそこへ安倍保名(尾上松也)が戻ってくる。
 庄司の来訪を知った保名は、義父を家の中へ案内しようとする、すると、庄司が娘の葛の葉を引き合わせるので、保名は美しい着物に着替えた女房を見て驚く。そして、庄司の許しを得ずに葛の葉と夫婦となったうえ、子まで設けた事を詫びる。そのような保名に大して、庄司は家の中を見るようにという。保名は、不思議に思いながらも、庄司の言葉に従い、家の中を窺うと、そこには機を織るもう一人の葛の葉の姿があった。葛の葉が二人いることに驚く保名。変化の仕業か天狗の業かと疑う庄司に対して、保名は自らが深窓を改名すると約束する。庄司は、ひとまずここは保名に諸事を任せ、妻や娘と共に成り行きを見守ることにする。
 保名が平静を装いながら、家の中へ入って行くと、出迎える葛の葉。保名は、夕暮れに庄司夫婦が尋ねてくると葛の葉に話すと昼寝を始める。一方夫の話を聞いた葛の葉は、物思いに沈んだ様子で、奥の一間へと入って行く。そんな葛の葉の姿にいつもと変わらないように感じた保名は、合点が行かず、庄司夫婦を怪しむが、事の成り行きを見届けるため、女房の後を追って奥へと入っていくのであった。

(幕間 20分)

【第二場 阿倍野 奥座敷の場】
奥野一間では、寝ている童子を抱いた葛の葉が嘆き悲しんでいる。実は、この葛の葉は、6年前、保名に救われた白狐であったのだ。狐は保名に救われた恩に報いるため、葛の葉姫に姿を変え、保名の命を助け共に暮らしていたのであった。子にも恵まれ、今では夫と我が子を心の底から大事に思う狐の葛の葉。
 しかし庄司夫婦が来訪すれば、自分の正体を知られてしまう。思い悩む葛の葉は、不安と悲しみの内に狐の本性を顕してしまう。
 思案の末に、この家を去ることを決めた葛の葉は、せめての名残に夫へ一筆認めようと筆を取る。その後、目を覚ました童子をあやす葛の葉は、障子に「恋しくば 尋ねて来てみよ 和泉なる 信田の森の 恨み葛の葉」という和歌を書き記す。事の次第を知った保名は、葛の葉を引き留めようとするが・・・。


扇雀祭り、ここに極まれり。

ああ~ん、扇雀さん、やっぱり素敵だったわ~。
葛の葉姫だなんて娘役はちょっと年齢的に無理があるけどさ、←失礼。
女房葛の葉だなんてほんとぴったり。
早抜きで狐に化けたり、葛の葉姫から女房葛の葉への早変わり、などなど、
目も心も楽しませてくれた。
そして何より、障子に一筆書いた和歌の場面がすばらしかった。
本当に、筆で美しい文字で和歌をさらさらと書いていく。

「恋しくば 尋ねて来てみよ 和泉なる」までは普通の文字で書き、
途中で、かわいい安倍童子がかまってかまって、と来るので、
「信田の森の」をついつい、鏡文字で書き、
さらに童子が遊んで~遊んで~、と抱きついてくるので、
葛の葉扮する扇雀さんは、童子を両手で抱き、口に筆を加え、
「恨み葛の葉」と書く。

やんや、やんや、女役の見せ所!立派にやり遂げました!!!!
あもちゃん一人で、大拍手!!!!

女房葛の葉の正体は狐であったのだが、子供を思う気持ちは人も狐も同じ。
そして、保名は、結婚し、子まで設けていた相手が実は狐だった、と知って驚くが、
それでも愛おしく思い、狐の葛の葉を追って森へ入っていく。
人の心は複雑で、不思議だ。

ところでこの安倍童子を演じた子が、とーってもかわいかった。
しかも上手。
ハラハラしながらも、心の底から応援する。
そんな私は完全に母親目線。
葛の葉と二人で悪党と闘うところなんて、ほんとかわいかった~。
立派に演じきっただけで、うるうるしちゃいました。←おばちゃん。


◆「積恋雪関扉」常磐津連中

関守関兵衛実は大伴黒主 中村勘太郎
傾城墨染実は小町桜の精  尾上菊之助
小野小町姫 中村七之助
良峯少将宗貞 中村扇雀

舞踊劇である。
ストーリーより踊りや歌を楽しむ感じ。

あら?!あらあら?!尾上菊之助、意外とすてきだわ~~~~~。←失言。
以上、感想、終わり・・・。
だって~、ただただ、見て楽しんだだけなんだもん~。

勘太郎さんはね~、きっといい人なんだろうと思うんだけど、←演技には関係ないが。
あともう一歩なんだよね~。
三枚目がただの三枚目になっちゃうんだよね~。
お父さんの勘三郎さんは、その三枚目も面白いのだが、
間(ま)が絶妙でおもしろかっこいい、という不思議な空気を出している。
お父さんを見習って、もっと精進してくんさい。←お前が言うな、ですが。

勘太郎さんは、先月テレビでやっていた「勘三郎特集」の中で第一子が誕生していた。
奥さん(前田愛さん)が無事男児を産んだ、という第一報を母親から聞き、
「それで、愛は?愛は大丈夫なの?愛の様子は?愛は?愛は?」
何回、愛は?愛は?って言うんじゃ、と笑ってしまった。
跡取り息子の誕生より、妻の愛を気遣う勘太郎さんの姿がかわいらしかった。
きっといい人なのよ~。
でも、勘三郎さんにはまだまだ及ばず。しっかり頑張って~。

でもでも。
弟の七之助の方が私は好き。兄弟で全く違う役者だから比較をする気はないが。
七之助の女役は本当に絶妙で美しい。その所作のあまりの美しさに息をのむ。
が、今回の小野小町は調子でも悪かったのか、そうでもなかった。


◆秀山十種の内「松浦の太鼓」二幕三場
【序幕 両国橋の場】
 朝から降っていた雨が雪へと変わった元禄14年12月13日。雪景色となった両国橋のあたりにやってきたのは、俳人として名を知られた宝井其角(坂東彌十郎)。その其角が降りしきる雪を眺めていると、傍らを煤竹売りが通りかかる。実は、この煤竹売りは、元赤穂藩士の大高源吾(菊之助)。其角に俳句の指導を受ける間柄の源吾であったが、主君の浅野内匠頭が吉良上野介に江戸城内で刃傷におよび、内匠頭は切腹、家名断絶した後、浪人の身となり、其角とも疎遠になっていた。
 挨拶もそこそこに立ち去ろうとする源吾を呼び止めた其角に対して、源吾は近況を話すと、妹のお縫を平戸藩主の松浦鎮信の屋敷へ腰元奉公できるように推挙してもらった礼を述べる。源吾の状況に心を痛める其角だが、源吾は、改めて仕官するより、町人として暮らしている方がましだと語って、立ち去ろうとする。そんな源吾を哀れに思う其角は、励ましの言葉と共に、松浦侯から拝領した紋服を譲る。受け取った源吾が、煤竹を担いで立ち去ろうとするのを再び呼び止めた其角は、「年の瀬や 水の流れと人の身は」と詠み、源吾に付け句をするように言う。これに対して源吾は「明日待たるるその宝船」と詠んで立ち去る。その後ろ姿を見送りながら、源吾の詠んだ付け句の意味を考える其角なのであった。
(幕間 20分)

あら!?あらあら!?
初めて見たけど、坂東彌十郎さん、意外と素敵だわ~~~!! ←失言パート2。

は~。
いいわ~。
やっぱり日本人といったら、この季節は「忠臣蔵」よね~。
年末といったら第九、と並ぶ、12月14日といったら討ち入り、よね~~。

しかも、この両国橋で其角に大高源吾が歌を付けるシーン、
あもちゃんの中では、忠臣蔵でも1、2を争う名場面。

「明日待たるる」と「その宝船」の響きもいいし、
明るくさわやかな風を感じる付け句なのに、どこか謎めいている。

宝井其角、といえば、芭蕉の弟子で、蕉門十哲の第一の門弟と言われている。
私の好きな俳人で、中でも特に好きな歌が、
「越後屋に 布裂く音や 衣更(ころもがえ)」

いい!!! ←一人で感動中です。お静かに。。。。

現代風で、ちょっときらびやかで、イケてる。ナウい。
使われている音がさわやかでかっこいい!

そんな其角を坂東彌十郎が演じていたが、すばらしかった。
心の温かな、風流人のおじいちゃまの其角像が見ているだけで伝わってくる。
ちょっとお茶目で、ちょっと世話焼きで。
それだけでじ~んとした。

【第二幕 第一場 松浦邸の場】
 その翌日の14日の寄る。其角は松浦鎮信の屋敷に招かれた。広間では鎮信(中村勘三郎)が、家臣と共に句会を楽しんでいる。ところが、そこへ腰元のお縫(中村七之助)が姿を見せた途端、鎮信は不機嫌になり、お縫を退がらせようとする。
 この様子を見た其角は、お縫が鎮信の心に従わなかったのが不興の原因であろうと推量し、お縫を許してほしいととりなすのであった。鎮信は、苦笑しながらお縫を許し、機嫌を直す。ところが、其角が大高源吾と会った事を話しはじめると、再び不機嫌となり、さらには鎮信から拝領した紋服を与えた事を聞くと、700年の歴史を誇る松浦家の紋服を与えたのは家門の穢れであると怒り出す。
 実は、鎮信は兵学者の山鹿素行の門下で、赤穂藩家老の大石内蔵助が同門である事から、赤穂浪人に同情していた。それゆえ、彼らのうち、誰かが吉良邸に討ち入ることを期待していたのだ。ところが、大石は遊郭で放埒の限りを尽くしているとの噂を聞くわ、お縫の兄源吾も煤竹売りに落ちぶれて、討ち入りなど考えていない様子。義を尊ぶ鎮信の目には、そんな不忠者の縁に繋がるお縫を飯使うのは、家の面目を潰すと考えて怒っているのであった。
 其角は、大きく怒る鎮信になす術もなく、お縫を伴ってその場を立ち去ろうとする。その去り際、昨日、源吾に付け句を求めた話を鎮信に話す。これを聞いた鎮信は、源吾の「明日待たるるその宝船」という付け句の意味を思案する。
 折からそこへ、激しく打ち鳴らされる陣太鼓の音が聞こえてくる。これを聞いた鎮信は、指を折って太古の音を数え、それが山鹿流の陣太鼓であると気づく。そして、その太鼓の音から、大石内蔵助を筆頭とする赤穂浪士が、隣の吉良邸に討ち入ったことを悟る。さらに源吾の詠んだ付け句も、今宵の討ち入りを暗示したものと察すると、喜び勇み立ち、赤穂浪士の助太刀をしようと言って、身支度を始めるのであった。

いんや~、やっぱり中村勘三郎は、私の永遠の恋人であった。
すばらしかった!!!!!!!!!
泣いたわ~
笑ったわ~
泣いたわ~
大爆笑だわ~
私、笑ったり泣いたり忙しくて、顔の皺が倍に増えたかも。

一番笑ったのは、其角が源吾に会ったよ、という話を勘三郎演じる鎮信に報告する場面。

其角「その子葉(←大高源吾の俳名)と申せば、御前様、手前昨日子葉殿に逢いましてござりまする。」
鎮信「こりゃこりゃ左司馬(←家臣)、もう何時であろうの」
左司馬「ハァ、只今四ツを打ちましてござります。」
鎮信「未だ四ツか、アーア冬の夜は長いのう。」
左司馬「御意にござりまする。」
其角「御前様、手前、子葉殿に逢いましてござりまする。」
鎮信「そうじゃそうじゃ、今宵は隣屋敷の吉良家にて、茶の催しがあるとのこと、予も招きを受けたが予はとんと茶が厭になってのう。」
家臣たち「左様でござりますか。」
其角「イヤ何、御前様、手前昨日子葉殿に逢いましてござりまする。」
鎮信「エエ、しつこい!子葉に逢うたが如何が致した。一度申さば判っておるわい。ばか!ばかばか!!」

コント?みたいな軽妙なやりとりに、大爆笑。
鎮信の単純細胞っぷりに大いに笑った~。
こんな上司、いやだ~~~、とは思うものの、舞台の上では喜怒哀楽のはっきりした人物で、
いいものは楽しみ、厭なことはプンスカ怒る。
舞台でも、怒ったり笑ったり、人情味あふれた殿様の様子が演じられていた。
勘三郎、うまかったなあ。
先月の病み上がりの様子に心配してしまったが、今月のこの鎮信の演技。
もう、ただただ、感心。
やっぱり、勘三郎が好きだ~~~~~!!!!と叫んだ。心の中で。
浅草の中心で愛を叫ぶ。

「わしはのう、赤穂藩の藩士たちがいつ討ち入りに入るか、と楽しみにしていたのじゃ」

という台詞にも笑った。
楽しみって!!!!!

そして、陣太鼓が闇の中から聞こえてきた瞬間、小踊りする鎮信。
そして、
1、2、3、4、5、6!!
1、2、3、4、5、6!!
・・・と指折りしながら数を数え、やっぱり!!とさらに飛び上がる鎮信の姿に大爆笑。

どんだけ赤穂浪士の討ち入りを楽しみにしてたんだ?
あんた、全然関係ないやん!!!!みたいな。

赤穂浪士が討ち入ったことを確信した鎮信は、土下座してお縫や其角に謝る。
ごみ~ん、やっぱり赤穂浪士は忠義者だった!!!
と。
お殿様、喜怒哀楽、激しすぎ(笑)
もう、最初から最後まで笑い過ぎて泣いて、タオル必須。

(幕間 20分)

【第二幕 第二場 松浦邸玄関先の場】
 吉良邸へ向かおうとする鎮信を、玄関先で家臣たちが留めていると、子葉(大高源吾の俳名)と名乗る者が其角への面会を申し出ていると伝えられる。これを聞いた鎮信は、早速源吾を招き入れるように命じる。
 やがて、火事装束に身を固めた大高源吾が表れ、其角に昨日の礼を述べる。そして鎮信へ討ち入りの一部始終を語り、仇である上野介の首を討ち、見事に本懐を遂げたと報告する。これを聞いた其角は、他所ながら、今生の別れに源吾に辞世の句を求める。これに対して源吾は、携えていた短冊を渡す。そんな源吾の武士としての心がけに胸を打たれた鎮信は、彼の忠義心を心から褒め讃えるのであった。


幕が開いた途端、大爆笑。
戦の衣装に着替えた鎮心が、
馬(黒子二人で馬になっている)に乗って、
今にも吉良邸に助太刀に行こうとしているところから始まるからだ。
だ~か~ら!!!
お前、関係ないやん!!!!

家臣たちは、とのさま~、とのさま~、と騒ぎながら、全力で止めているところへ
源吾がやってくる。

源吾が不思議そうな顔をして、
「なにごとですかな?御前様のその格好は?」
という問いかけに対し、自分の助太刀は不要であると知った鎮信は
「いやいや・・・あはは。」
とごまかしながら、家来に
「もう助太刀は入らないんだってw」
と言うところなんて、最高に笑える。

そして源吾は色々と助けてくれた鎮信に、
雪がハラハラと降りしきる中、討ち入りの様子を話して聞かせる。
その源吾の話に、私は涙した。
やっぱり、年末は忠臣蔵だよね~。←そこ!?

そして、今生の別れである。
源吾は鎮信に別れを告げ、雪の中去って行くのだった。

どーーーーーーん!!!!!!

でました!!!
先月もやった、例のヤツ!!!!

芝居小屋の舞台の背景が全開になり、外の夜の闇が現れたのである。
ちょうど舞台は、師走の夜。
そして舞台の外も師走の夜。
舞台に舞落ちる雪が、浅草の夜の闇に映えて、それはそれは美しかった。
その日はスカイツリーがライトアップされていたはず。
お大尽席からは、江戸の舞台の向こうに、平成のスカイツリーが見えたはず。
そして、時の流れを目で感じたことであろう。

私、感動した!!!
拍手、拍手、大喝采!!!
それは私だけではなかった。
いつまでも鳴り止まぬ拍手喝采。
歌舞伎では初めてのことだ。←私は。
アンコールなんてするわけないよなあ。
と思いながら、私は拍手をやめられなかった。
どうしても、勘三郎さんを最後に見たかったからだった。

ず~~~~~っと鳴り続ける拍手。拍手。拍手。

すると!!幕が開き、そこには勘三郎さんが!!!
カツラをとって、着物も脱ぎ、白い長襦袢をはだけた姿の勘三郎さんの姿が(笑)!!!
まさか、舞台に再びあがるとは思ってなかったのであろう。
ずいぶんとくつろいだ格好であった(笑)。

勘三郎「なんか、こんな姿ですいません。」

と舞台の端っこから、遠慮がちに挨拶をして、丁寧にお礼を述べ、
舞台の袖に消えて行ったのであった。

ええもん、見られた~~~~。じ~~~ん。
家に帰るまで、いや、家に帰ってからも、いや、その翌日仕事をしていても、
ず~っと、「松浦の太鼓」の感動を忘れる事ができなかった。
それくらい私は、勘三郎の演技に心を揺さぶられたのであった。

そんな私と同じ想いをしている人がいる。
それは三島由紀夫である。

三島由紀夫は、この芝居を今日のような人気狂言にした初世中村吉右衛門の名演ぶりを
こう書いている。
「眼目の太鼓の件は、お芝居の面白さをこねて固めたやうな場面の緊張、クライマツクスの頂点を形作る恰好な主題、吉のセリフと仕草の粋をあつめたスキのない演技ー羽織を脱ぎ、家来を制し、座蒲団を滑りおち、耳を傾け、指でかぞへ、「赤穂、大石」でウムウムウムと会心の笑ひになり、花道の其角の前に手をついて詫びる迄、さすがに吉の十八番だけの値打ちはある」(「芝居日記」より)
そしてこう言う。
「かういふ狂言を愚劇よばはりする手合は、多くは退屈なアブクのやうな新作に喝采する連中である」

由紀夫、言うねえ。←由紀夫よばわり。

扇雀祭りの予定だったが、結局勘三郎祭りに。。
いやいや、もちろん心の恋人扇雀さんもそれはそれはすばらしかったのだが、
永遠の恋人勘三郎の笑顔とご機嫌な演技を見て、
今年を終える幸せを心から感じた私なのであった。