子猫と少女とこの島と僕 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

旅人は恋をする

旅先で恋をする

ひとり旅が気楽だなんて強がってみても

基本的には寂しいのがひとり旅であり

男女問わず旅先での出会いが一生の思い出になる

ラブワゴンがフィクションかノンフィクションかとは

討論する余地もなく 

ノンフィクションであると思う

苦楽を共にすると人は誰でも

独占欲を超えた情が発生し

恋人以上に好きになってしまうものだと思う

 

そんなあもんも出会いは大事にしている

素敵な地で出会った人や

素敵な時間を共に過ごした人は

あもんにとっては素敵な人であり

たとえもう会うことが出来なくても

素敵な思い出として想うことができる

カップル旅では可能性が低い想いである

成田離婚というのが一時期流行したが

旅先で見る人間性がまさしくその人であると思うし

日常の人間性は仮面舞踏会で踊っているみたいだと時々錯覚する

 

伊江島の旅の目的は体験ダイビングだった

しかし僕は台風といっしょにこの島に上陸した

「帰りの船が出るのがいつになるか分かりませんよ」と言われたが

北の漁師を演じれそうな荒波の中フェリーに乗った

もちろんこの島では潜れなかったが‥‥

沖縄の宝物()と言われている台風を堪能することができた

だけど正直言って 恐かった

体験したことの無い風と

見たことの無い波に恐怖を感じた

それでも島人にとっては

今回の台風は優しいほうだったみたいだ

島人の強さに憧れた瞬間だった

 

風が少し和らぎ

貧弱な本土人でも大丈夫と感じたので

散歩に出た

あても無く集落をブラブラしていたら

思いがけない出会いがあった

この時の淡い気持ちは

今でも鮮明に覚えている

☆ 

『島国からの贈物』

『小猫と少女とこの島と僕』

 

2004622日 沖縄県伊江島 コンビニにて

 

歩いたらついてくる小猫との距離が遠くなるにつれて

か弱い鳴き声がやたら気になった

しゃがんでやると急いで走ってきて

身体を寄せてきてあまえてきた

猫より犬派の僕が三十歩毎ぐらいにしゃがりこみ 

小猫に話しかけていた

 

そこに遊び帰りの少女が寄ってきて  

なでたり だっこしたり 

またあまえられたり

僕の顔を見て 

首をかしげ 指を指した  

僕は『うんん ついてきたんよ』と言った

少女は微笑みもせず照れながらうなずいた

一時歩道の上の二人は小猫を見つめ  

『どうしてひとりになったの』と無口に話しかけていた

やがて少女は僕を一瞬見つめ走り去っていった

小猫は少女ににはついていかず 

か弱い声で僕に話し続けた

そうだお腹がへっているんだ

 

コンビニに入りソーセージとウーロン茶を買い

2人で一服しようとコンビニを出た

そこではあの少女が小猫をなでていた  

少女にもこのか弱い話声が聞こえ続けていたのだろう

僕は少女にソーセージを差しだし

『あげんさい』と言った

少女は少し驚いた顔で無口にうなずいた

少女に飛びつき始めた小猫のそばで

少女は不器用にソーセージをちぎり

手を噛まれながらも

『まぁいいか』とつぶやきながら

夢中になっていた

そんな二人を僕は見続けていた

やがて小猫は落ち着き 

僕と少女は少し距離をおいて

無口にしゃがんだ

時折小雨が降っている

 

小猫は僕と少女に交互に身体を寄せて

あまえ始めた

僕と少女は無口に小猫をかわいがった

そろそろバイバイだねと

僕は2人に無口に話し掛け立ち上がると

小猫は毛づくろいを始めた

もう少しいようと小猫が無口に話し掛ける  

あわい時間が過ぎていった  

僕たちは無口におしゃべりしていった

 

 

 

やがて少女は意を決したか 

すっと立ち上がり去っていった  

僕もそれにつられてすっと立ち去った

そして小猫はついてこなかった

少女はそこの角を曲がり 

僕はまっすぐ歩き続けた

最後に振り返ると小猫は  

か弱い声で一言だけ『ニャー』と言った

 

その夜 

まだあのか弱い話し声が聞こえ続けている気がして  

またコンビニの前に座った

もちろん2人はいなかった

小猫はまた飼い主に会いに歩き出し  

少女はいつかこの島を出て行くだろう

僕もまた別の島に旅立って行くだろう  

そして二度と会うことはないだろう

 

小猫と少女とこの島と僕の

あわい恋物語は終わった

 

詩集 『島国の宝物』より

 

 

南の国にだって

 

悲しみの雨は降っていたんだ

 

だけどこの島には優しい風が流れていた

 

 

 

次回更新 『ミナミのクニのカゼ』