尊々我無(とうとうがなし) | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

数多くある島国の宝物の中で

忘れてはいけないものがある

それは「ことば」

各地方で話される独自のことばは「方言」と言われ

その地方の歴史や文化から生まれたことばである

ヨロン語を話している与論島で

そんな島国の宝物を見つけた

 

鹿児島県最南端の島である与論島は

距離的には沖縄の方が近い

もちろん気候は沖縄の気候だ

文化と言えばチャンプルーである

そのチャンプルーが独自の伝統やことばを生み出し

島国の宝物になっていった

 

与論島は八世紀から十二世紀にかけては何処からも統治を受けていない島だった

十二世紀からは琉球王国が権威を奮い中央権力化により琉球の支配下となった

十六世紀に入り薩摩藩島津家が琉球侵攻したことによりこの島は薩摩藩となった

そして戦後1953年までは米軍の統治時代だった

多くの侵略を迎えた過去を持つこの島には

島人の権力に対する争いの記録は無い

この島は全てを受け入れた歴史を持つ島なのである

 

与論献棒(ヨロンケンポウ)

このことばは与論島の伝統的なお酒の飲み方を表し

客人をもてなす際に行われる

親と言われる人が自分の分量で杯に酒を注ぎ

まず初めに自分が飲み干す

そして杯をひっくり返す

この行為は酒に毒物を入れていないという証明みたいだ

飲み終わった親は子や客人に同じ分量の酒を次々に注いでいく

そして子はその酒を飲み干す

そして親は交替し、同じ飲み方を永遠に続けていく

つまり、永遠に続くお酌飲み大会だ

この与論献棒は昔から入れ替わる役人に対して行われ

情報収集に役立ったらしい

 

この島の売店で与論島のアーティストである

「かりゆしバンド」のCDを購入した時だった

「トウゥトウゥガナシ~」確かに店員さんはそう言った

店員さんが購入者に言う言葉

それは「ありがとうございました」だ

「尊尊我無」と書くこのことばは与論語であり

「自分が消えてなくなるほどの謙譲の気持ちで

相手に感謝するという最高のお礼の言葉」という意味だ

自分を謙遜し相手を尊ぶ

そんな美しいことばが日常で使われているのだ

この島で争いが起きなかったのは

このことばのお陰であると感じた

そして僕はこの与論島に

「ありがとう」のその後に

「尊尊我無」と感謝の意を綴った

☆ 

『島国からの贈物』

『尊々我無(とうとうがなし)』

 

2005415日 鹿児島県与論島にて

 

ありがとう ありがとう

心地好い春風に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

安眠できる波音に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

命の源の珊瑚に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

自然芸術の星砂に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

心はずむ海原に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

全てを忘れる夕焼けに 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

人懐っこい島人に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

島人に間違えてくれて 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

チャンプルーな文化に 尊々我無

 

ありがとう ありがとう

この島の宝に出会えて 尊々我無       

 

あもん詩集 『島国の宝物』より

 

 

明日からはいよいよ最終章

 

『沖縄編』

 

とりあえず、ノンフィクションポエムからいきますか

 

淡い恋の物語 『子猫と少女とこの島と僕』