猫の細道から尾道水道へ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

広島県尾道市

この地を語る文化人は多い

国道以外の道は基本的に狭く

南にすぐ海、北にすぐ山という地形により

平地が少なく必然的に坂の途中に家が並ぶ

足元が1階の窓の上という趣のある光景に出会える

海向かいにある向島との間に狭い海峡があり

狭いが故に「尾道水道」と呼ばれる

海沿いには漁港や渡船場、商店街が並ぶ

この古い商店街はどこかひっそり感があるが

その中に穴場的なお店が点在している

坂を上るといくつかの寺や博物館がある

そこから眺める尾道水道、造船所、向島に架かる二つの橋 そして連絡船

現在・過去・未来を随所に見られる町だ

狭く続く坂道では行き先は決めないほうがいい

どうせ迷ってしまうのだから

迷うのを楽しめばいいんだ

もっと楽しみたいのなら

野良猫に案内してもらったほうがいい

彼らはこの坂の観光大使だからだ

でもきっと彼らには僕たちの通ってはいけない道があるのだろう

一見一思

訪れるとまた訪れたくなる尾道では

こうやって楽しんだほうがいい

お家に帰って思い出すのではなく

ひとつ見てはひとつ思う

それが出来るぐらいの宝物が

この坂にはある

☆ 

『島国からの贈物』

『猫の細道から尾道水道へ』

2006日 157広島県尾道市にて

この坂から始まる猫の細道をバイクで滑走するおじさん

彼にはおいしい夕食が並んだちゃぶ台があるのだろう

 

この坂の曲がり角にある茅葺屋根の門

ここには何人の笑顔が訪れたのだろう

 

この坂の木塀に掲げられている猫の絵

この坂で心を洗われた人の猫への恩返しなのだろう

 

この坂の頂にある緑のツタに囲まれたカフェ

この坂にたたずんでいたい人の場所なのであろう

 

この坂で振り向くと眺められる海と島と坂

海の風がこの坂を登ってきて僕を振り向かせてくれたのだろう

 

この坂の貯水槽を眺め続けているおじいさん

変わらない昔を変わらないように願っているのだろう

 

この坂を駆け下りる真っ黒な少女

この坂が在り続ける意味をもう知っているのだろう

 

この坂で寝そべって先を見つめる野良猫

ここの心地好さを一番よく知っているのだろう

 

この坂が終わった先に座っているおじさん

尾道水道から始まる未来へ心躍らせているのだろう