↑気になる方は最初からお楽しみください♡
♣8
「……ごめんっっ……!!!」
それだけ叫んで、身を翻して走り出した。
なんでだろ。
なんでこんなことになってんだろ。
走りながら、ぐい、と唇を手の甲で拭う。
キスなんて、数え切れないくらいしてきたのに。
男どうしのキスだって、別にどうってことないって思うのに。
ましてやメンバーとのキスなんて、嫌なもんじゃないはずなのに。
だけど、違うって思ったんだ。
触れた唇の感触に、これは違うって思ったんだ。
俺が、触れたいのは違うって……
そう思ったのと同時に、何故か思い浮かんだのは相葉ちゃんの笑顔。
……わかんねぇ。
何が何だか、全然わかんねぇ。
なんでこんなことになってんのか。
松潤の気持ちも、俺の気持ちも。
自分が今、どこに向かおうとしているのかも。
「……なんなんだよ、もう……!!!」
走りながら叫んで、なんでこんなに必死で走っているんだろうって可笑しくなる。
可笑しいって思うのに、走り続ける。
「くそっ……」
見えてきた 見たことのある風景に、自分がどこへ向かおうとしているのか、やっとわかった。
わかったけど、それがなんでなのかはやっぱりわからないままで……
目的地の手前でようやく、足が止まる。
膝に手をついて、肩で息をした。
「……吐きそ……」
こんなに思いっきり走ったのは、どのくらいぶりだろうって、もう歳だよなぁって呟いてから近くの壁に寄りかかって空を見上げた。
見上げた空に太陽は見えなかったけれど、俺がいま会いたいのは、太陽のようなあったかくて優しい人。
もう一度深く深呼吸をしてから、マンションのエントランスに向かう。
ぐるりと辺りを見渡して、誰もいないのを確認するのは、もう癖みたいなもんで……
メンバーの家に行くくらいどうってことないのに、なにか後ろめたい気がするのは、俺の気持ちがふらついているから?
素早く自動ドアをすり抜けて、オートロックの機械の前に立ってぎゅっと手を握った。
翔君なら、いまの俺の状況を説明できるんだろうか。
ニノなら、俺が何を欲しがってるのか、先回りして教えてくれるんだろうか。
松潤なら、しっかりしてよって笑いながら、順序だてて説明してくれるんだろうか。
相葉ちゃんなら……ふわんって笑って『それでいいんじゃない?』って、言ってくれるんだろうか。
自分がどうしたいのか、自分がわからないなんて、どうしようもない。
ゆっくりと手を動かして、相葉ちゃんの部屋インターホンを鳴らした。
チャイムの音が響いて、何故か俺の心臓もバクバク音を立てる。
「……あれ……」
もう一度インターホンを鳴らして、オートロックの機械から1歩離れた。
チャイムが鳴り終わるまではほんの数秒のはずなのに、今日はやけに長く感じる。
「いねぇのかな……」
もう一度チャイムを鳴らそうとした指を引っ込めてポケットに突っ込んだ。
手汗、すげぇなってぼそりと呟いてから、回れ右をして相葉ちゃんのマンションのエントランスから外へ出る。
ほんとに、何がしたかったんだろう、俺は。
さっさと自分の家に帰ればよかったのに……
足元に落ちていた小さな石をつま先で蹴飛ばして、小さくため息をつく。
「うわ」
その瞬間に、急に震えだしたスマホを慌ててポケットから取り出した。
表示された名前に、どくんと鼓動が跳ねる。
「もっ……もしもし……?」
『あ、おおちゃん?……あのさ……今、ちょっといい?』
いつになく真面目な相葉ちゃんの声に、また鼓動がどくんと大きく跳ねて、ひやりと背中を汗が伝った。
