違和感だらけに決まっとるがやー‼北野武監督『首 KUBI』(2023年 131分)を観る | 日本と芸能事が大好きな Ameyuje のブログ

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米合衆国領土グアム島と仏領ポリネシアのタヒチ島とボラボラ島しか訪れた他国無し。比較対象が少ないのに「僕に一番合うのは日本」と思う。反日国に侮辱されても毅然とした態度をとらない現在の母国には「いやんなっちゃうな~」と立腹するけど、やっぱり日本が大好き。

本作品の原作脚本も手掛けられている北野武監督は記者会見で 「大河ドラマなんかだと格好のいい綺麗ごとばかり描かれるけど、戦国時代ってのは衆道とか男色の風が武将にもあったし、もっと男同士のドロドロとしたものや、策略が入り混じって本能寺の変が起こるだとか、ああなったと思うので、そういうものを描いた」 と語られたそうです。

映画の歌い文句も「誰も観たことのないスケールで描く」となっていたので、映画館で予告編を見るたびに楽しみにしておりました。

 

物語の始まりとしては、

『天下統一を目指す織田右大臣信長(加瀬亮)の家臣の1人、荒木摂津守村重(遠藤憲一)がある日謀反を起こし、長い戦いの末に敗北するや、行方をくらましてしまいます。

村重の居場所を探すために信長は、自分の跡目相続を餌にして家臣たちに村重捜索を命令します。

このようにして、羽柴筑前守秀吉(ビートたけし)、明智日向守光秀(西島秀俊)ら武将をはじめ、百姓、芸人といった様々な者の野心が渦巻く跡目争いが始まるのでした。

 

宝石赤宝石緑宝石ブルー宝石紫

 

で、現在本業が多忙な私ですが、運よく金曜日だけ担当から外して貰っているので有給休暇を申請して4連休の獲得に成功。 

その初日の今日、23日(木曜日)が 公開初日である「首」を いつものTOHOシネマズ西宮OSの、通常設備のスクリーン1で 9:00から開始の回で鑑賞して来ました。 お客様は8割ほどの入りでした。

 


いやぁ~ 良くも悪くも「KITANO WORLD」が全開の映画でしたね。

登場人物たちは 殆ど現代言葉でしゃべるし、史実の検証は無視しているような姿勢を感じた2時間11分でしたが、たったこれだけの時間の中に 荒木摂津守村重が謀反を起こした時期から始めて、秀吉と光秀の山崎の合戦で敗れた光秀が、小栗栖で武者狩りによって殺害されるまでの物語を よくもまあ上手に詰め込んだものだ!と、その点は北野監督に喝采を送りたい私です。

 

 


STAFF

 

監督・脚本 Directed and written by
 … 北野武 Takeshi Kitano

原作 Original Novel
  … 北野武 Takeshi Kitano

制作 Produced by
  … 北野武 Takeshi Kitano

音楽 Music by 
  … 岩代太郎 Tarô Iwashiro

撮影 Cinematography by 
  … 浜田毅 Takeshi Hamada

編集 Editing by
  … 北野武 Takeshi Kitano
  … 太田義則 Yoshinori Ohta 

 


CAST

 

羽柴筑前守秀吉 … ビートたけし

:日本人なら誰でも知ってる(?)、百姓の倅から一国一城の主となった男。 主人の織田右大臣と明智日向守と荒木摂津守の愛憎関係を薄々感じながら 織田右大臣の跡を継ぐべく村重を探し出そうと、同輩でもある織田家家臣の武将たちに対しても策略を練る 食えない男。 漢字の手紙が読めないので、実弟の羽柴小一郎秀長に読ませたりしている。

 

明智惟任日向守光秀 … 西島秀俊

:司馬遼太郎の「国盗り物語」の「明智十兵衛光秀」の記憶を抱いている人には多分受け入れられない衆道(男色)関係を 織田右大臣信長や荒木摂津守村重と持っていた。

その村重が織田右大臣のサディスティックな異常愛に耐えられずに謀反を起こし、のちに織田軍との戦いに敗れて出奔した村重と出会うや 彼を匿い、身体の関係を再び持つことになる。

織田右大臣が言った「お前ら家臣の中で村重を捉えた者、そいつに俺の事業の跡を継がせる」という言葉を心に停めながらも 自分の忠心を足蹴にして翻弄するようなことを繰り返す主君に反旗を翻すことになり…。

 


織田右大臣信長 … 加瀬亮
:精神病理医学の研究対象者のような「サディスティック性愛者」。この男にとっては敵を滅ぼすことと、そのために家臣たちを酷使することとが 同じ性的嗜好の発露であるように描かれている。

SMの女王様が「あたしの靴を嘗めるんだよ!」と裸の中年男を鞭打つように、主人として寵愛してやったと思っている自分に対して謀反を起こした荒木摂津守村重に対しては、囚らえたその一族郎党を『みな殺しに決まっとるがやー!』と家臣団に命じて殺害させる。

 

★ここで いつもの脱線★

史実として有名なのは、最初に有岡城(現 伊丹城)で1年戦ったあと、援軍として頼む中国の覇者毛利(実働部隊は村上水軍)との連絡のために有岡を脱出して 息子の新五郎村次が守る尼崎城(大物城 :当時、此処は海城だったので毛利の水軍と連絡が取れると村重は考えました)に入ってここで半年戦いました。

ちなみに村次の妻は明智日向守光秀の娘でしたが、彼は父親が謀反を起こすと直ぐに妻を離縁して光秀に送り返しています(妻を愛していたのでしょうね)。この互いの子供たちを夫婦にしていた縁から考えても、今回の映画で光秀と村重が衆道関係だったという設定がとても引っかかるのですが、考え方が逆ですかね?左矢印誰に訊いてんねんドクロ

 

そうするうちに、霜月11月の下旬に織田右大臣から有岡城を守る村重の重臣たちへ「有岡城に加えて、尼崎城と花隈城(現 神戸市)を織田方に明け渡すならば、有岡城に残るお前たち諸将の妻子の命だけは助けよう」という提案があり、彼らは自分たちの妻子を織田右大臣への人質として有岡城に残したまま、村重を説得するために尼崎城へ入ります。

 

しかし海港を持つ尼崎城で毛利の援軍を待つ村重はその説得を跳ねのけます。ここで窮した重臣たちがどうしたかというと、 なんと妻子を棄てて出奔したのですね。

その事の顛末・振舞を知った織田右大臣信長は不義を最も嫌う性格でもあったので激怒し、「目にモノを見せてくれる」とばかりに、師走12月の中旬にまず有岡城の人質である村重重臣たちの女房衆122人を、わざわざ尼崎城の前を村重に見えるように引き立てながら七つ松(現 尼崎市七松町)まで連れてきた後、鉄砲・長刀を使って処刑しました。

 

そして その3日後には村重の一族と重臣の家族の36人を京都に護送し、大八車に縛り付けて京都市中を見世物として引き回した後に、六条河原にて斬首します。

映画「首」で描かれた処刑シーンは、この京都六条河原の方での斬首シーンでした。

上記 三っの城の所在地は全て私の生活圏内にあるので、学生時代から司馬遼太郎さんの小説やエッセイでこの村重と重臣一族の物語を見つけるたびに興味深く読んでいました。北野監督は現代の技術をうまく使って、村重一族の生々しい斬首シーンを描いているのがイイと思いました。

★閑話休題★

 


難波茂助 … 中村獅童
:百姓の倅から侍大将になった羽柴筑前守秀吉にあこがれる百姓。映画の中で人間の弱さや欲深さといった、その醜い本性を体現して見せる男


曽呂利新左衛門 … 木村祐一
:筑前守秀吉に御伽衆として仕えたとされる人物で、もとは堺で刀の鞘を作っていた杉本新左衛門と名乗る鞘師だったとか。歴史本などでは落語家の始祖とも言われるように、ユーモラスな頓知で人を笑わせる数々の逸話を残したとされ、作った鞘には刀がそろりと合うのでこの名がついたという。

映画では「抜け忍」の過去を持つ人物として描かれ、弓矢の上手で戦闘力も随所で見せる。



荒木摂津守村重 … 遠藤憲一
:天正6年(1578年)10月に三木合戦で羽柴秀吉軍に加わっていたが、有岡城(伊丹城)で突如、信長に対する謀反を起こす人物。歴史本では中川瀬兵衛清秀や黒田官兵衛孝高とは既知の仲とされ、謀反した当初に一度は糾問の使者として明智日向守光秀を迎えた史実が残っているが、本作品では光秀と相愛で肉体関係も持つ人物として描かれる。また、この映画では 有岡城(伊丹城)から脱出し、さらにその後入った尼崎城からも脱出した後に、光秀の屋敷で匿われる設定になっている。

 


斎藤内蔵助利三 … 勝村政信
:明智光秀の家臣。配下の忍びの者たちと共に 織田右大臣信長、徳川次郎三郎家康、羽柴筑前守秀吉らから放たれる異能力集団と闘う。史実では後世の三代将軍徳川家光を育てた春日局の父にあたる人物。


般若の佐兵衛 … 寺島進
:正義や義理では動かず、恩賞・利益の有無で命を懸ける武装団の統領。

 


服部半蔵正種 … 桐谷健太
:生国である伊賀を出て三河で松平清康・松平広忠に仕えた人物。 以降、服部家は徳川家(松平家)の譜代家臣となる。本能寺の変が起きた際には、5月に安土、6月に堺見物から京洛の織田右大臣に顔を見せようと上洛しかけた家康が僅かな供回りを控えさせただのところを、河内から家康を伊賀越えで駿府岡崎まで逃がすことで貢献する。


黒田官兵衛孝高 … 浅野忠信
:播磨国の姫路生まれで戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・軍師。キリシタン大名でもあり、洗礼名はドン・シメオン。戦国の三英傑の時代を生き残り、筑前国福岡藩祖となる。

映画では冒頭で起きる荒木摂津守村重の謀反時に有岡城で捕らえられ、長い間の最悪環境下の牢獄暮らしによって片足が不自由な体になった。

 

羽柴小一郎秀長 … 大森南朋
:秀吉が信頼する実の弟。歴史本では心の大きな人物で、のちには大和大納言として尊敬される。 この男が生きていれば豊臣家の滅亡は無かったかもしれないという高評価を受けている男だが、映画の中では露骨な策略家でもあり、兄をからかったりもするような、軽めの人物として描かれている。

 


安国寺瑶甫恵瓊 … 六平直政
:中国の覇者 毛利氏に仕える外交僧として羽柴秀吉との交渉窓口となった人物。

豊臣政権においては秀吉からも知行を貰って大名に取り立てられた男として歴史本には記されてれているが、映画の中では文字通りの「ナマ臭坊主」として 備中高松城明け渡し時の清水宗治をダシに使う様子が描かれる。

★司馬遼太郎作品では彼が登場するたびに必ず 天正元年(1573年)、織田上総介信長が従五位下に叙され弾正忠を名乗った頃に、足利将軍家(毛利に身を寄せていた義昭)の扱いを織田氏と交渉するために上洛した安国寺恵瓊が主君毛利輝元の家臣に送った報告書の事が紹介されていますね。

それは、
「信長之代、五年、三年は持たるべく候。明年辺は公家などに成らるべく候かと見及び申候。左候て後、高ころびにあおのけにころばれ候ずると見え申候。 藤吉郎(秀吉)、さりとはの者(信長に代わるもの)にて候」

という内容で、この報告書によって9年後に起こる「本能寺の変」を予見していた人物として評価されていますね★

 

徳川家康 … 小林薫

:映画の中では 自分の影武者を大勢用意しており、刺客が放たれるたびに殺されていく影武者を観ながら生き残りの道を突き進む男。いつも自分を影のように守ってくれている服部半蔵正種には目をかけている。

 

 


千利休 … 岸部一徳

:信長のことは「お仕えするには命がいくつあっても足りないお方」との評価を口にしている。実務的なことは弟子の間宮無聊に任せているが、映画の中では有岡城を脱出し、出奔していた荒木摂津守村重を発見し、明智光秀に預けた男として描かれます。

 

弥助 … 副島淳

 

間宮無聊 … 大竹まこと
為三 … 津田寛治
清水宗治 … 荒川良々
森蘭丸 … 寛一郎
 

などなど…

 

 


 

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この映画について一番反発したい観点

 

それは 戦国武将の衆道(男色)の風についてですが、織田右大臣信長は青少年の頃に犬千代と呼ばれていた前田又左衞門利家を寵愛した(肉体愛です)ようなことは小説などで書かれたりもしていますが、 光秀や村重相手に衆道というのは、 ちょっと北野監督のやりすぎ、膨らませ過ぎという気がいたします。 特に二人の男色の道について書かれた文章も見当たらないようですし…ぶー

 

日本は西洋と違ってキリスト教に縛られていないから、昔から衆道・男色というものが存在していた。 「日本は同性同士のセックス面でも おおらかで縛りの少ない国だったのだ」ということを世界に知ってもらえるのはメリットがあるとは思うのですが、

 

今回の 信長の男性とのセックスの描写や、光秀と村重との肉体関係などが史実のように外国の人たちに思われてしまうと、ちょっとまずいですよね。

 

映画に出てきた黒人の弥助(信長の小姓・従者)についても司馬さんのエッセイなどで紹介されている有名なアフリカ人(西洋人の奴隷として日本に来た)ですが、ちゃんとイエズス会日本年報にその名と信長の家来になったことも記録されていますから 織田右大臣の側に登場するのは良いのですが、蘭丸とのセックスを終えた信長が弥助の肉体をも弄ぶという描写は 右大臣信長の価値も貶めますので、アレはまずいよよなぁ~、なんて思いました。

 


この映画について二番目に反発したい観点

 

やっぱり織田右大臣信長の描き方が、完全に精神異常者レベルだったことが気になります。

荒木摂津守村重の謀反のきっかけの一つとして知られていることとして、天正元年(1573年)に、村重が信長を近江国瀬田で出迎えた際に、信長が刀の先に餅を突き刺して村重に咥えさせたという説が『絵本太閤記』にかかれています。

映画でもそのシーンが出てくるのですが、加瀬亮さんの演じる信長は 餅ごと口に押し込んだ刀をぐねぐねと村重の口中でねじる演出がされていました。

で、血を噴出した村重の口に織田右大臣信長が興奮して唇を重ねるという演出だったのですが、これもやりすぎやなぁ~と感じました。

 

 

翻って、戦闘のシーンは いずれも迫力がありました。とても良かったです。

下矢印この「備中高松城水攻め」の中での戦闘シーンは 黒澤明監督の「七人の侍」を思い出すような泥田の中での殺し合いが描かれていました。

 

 

宝石赤宝石緑宝石ブルー宝石紫

 

カンヌ映画祭 記事写真より

 

 

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