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「わかりました。実は嵐の時代を生き残った8人の管理者に魂の実を食べてもらいました」

「8人。そうですか、あの後、生き残れたのは8人だけだったんですね」

「8人もですよ、照子。あなたがいなくなった後の街は地獄でした。魔法使いたちも最後まで抵抗しましたしね。住民も殆どの人が亡くなってしまいました」

「私が死んだ後も、戦争は終わらなかったんですね」

「神を殺された管理者と住民たちの怒りは相当なものでした。魔法使いたちを皆殺しにするまで、その虐殺は止むことはありませんでしたよ」

照子はあらゆる意味でリミッターだった。魔法使いにしても、街の住民にしても、双方の犠牲をなるべく減らそうと考えていたのは照子だけだっただろう。最初から街を蹂躙し、住民を皆殺しにするつもりだった魔法使い。魔法使いに襲われ、恐怖と怒りに心を支配されていた住民たち。

私に照子のかわりはできなかった。神がいなくなって、街は暗闇に飲まれ、人が獣になり、何もかもが輝きを失っていった。私は力一杯叫び続けた。だけど、私の声は誰にも届かなかった。

私の声は、嵐によってかき消されてしまったのだ。

私はただ、嵐の中で泣き叫ぶことしか出来なかった。悲しい思い出だ。

「私とアスタルテと魚は3人で話し合って、街の復興させるための計画を立てました。楽園に集まっていろんな案を出しましたが、結果的に分かったことは、私たちだけでは街の復興どころか維持することも出来ないという厳しい現実だけでした」

「それで管理者に魂の実を与えることにしたんですね?」

「そうです。決定したのは私です。責任は全て私にあります」

真剣に照子の顔を見つめる私に、照子は難しい顔をして答える。

「アスタルテと魚も、その案に賛成したんですか?」

「アスタルテはずっと負傷者の手当と、亡くなった住民の亡骸を埋葬する事に没頭していました。そうすることであの子はあの地獄を乗り切ることができたんだと思います。何もかも忘れて、あの子は泥を掘り返していました」

「あの子は優しい子ですからね」

「照子、あなたが見た沢山の棺。あの棺は全てアスタルテが運んだものなんです。私は街の復興には役に立たないからって言って、あの子が自ら言い出したことなんです」

「あの棺の中に入っているのは、死者の魂なんですよね」

「そうです」

「それを、あの子一人で?」

「ええ、あの子にしか、死者の魂を見ることは出来ませんでしたから、、」

「私のいなくなった後でも、あの子には魂を見ることができたんですね」

「私にも、魚にも出来ないことでした。あの子には本当に感謝しています」

崩壊した街の中を一人で歩き回るアスタルテの姿を私は一生忘れることはないだろう。私はあの子に何もしてやれなかった。それは今も同じ。

私はいつだって無力だった。

「私はあの子が棺に納めている魂を最初から見捨てるつもりでした。生き残った人々の命を最優先していました。でも、あの子は違った。あの子はずっと街を歩き回っていました。死者の遺体と、さまよえる魂が消滅してしまうその最後の瞬間まで、アスタルテは街を歩き続け、魂を回収し続けました」

「でも、、あの棺の中の魂は、全て死んでいますね」

「ええ。そのことはアスタルテも知っています。結局、棺に納めた魂たちは何年か後に死んでしまいました。棺の力を持ってしても、魂を保存することはできなかったのです。あの子はずっと泣いていました。でも、街の住民はあの子にとても感謝していましたよ」

確かにアスタルテの行動は生き残った彼らの心を癒したのかもしれない。人々に笑顔が戻っていく様子は、私も見ていてとても感動した。だけど、その街の住民たちも、今はもう誰もいなくなってしまった。新しい命となってこの街で暮らしている魂たちは、この記憶を全て失ってしまっている。当時の事を覚えているのは私たちだけなのだ。

アスタルテは今も、街の住民を笑顔にする為に笑顔で毎日頑張っている。

そんな妹を見て、私は嬉しくもあり、悲しくもあった。

あの子の笑顔が偽物だったからだ。

あの子はあの時からずっと、無理に笑顔を作るようになってしまった。本当は私と同じように泣きたかったはずなんだ。私が先に泣いてしまったから、あの子は泣くことができなくなってしまったのだ。

ごめん。

ごめんね、アスタルテ。