二人はベンチに腰を下ろす。
「あざり、お弁当出してよ」と真冬が言った。
あざりは布に包まれたお弁当を二つ、リュックの中から取り出した。
「……はい」
「ありがとう」
お弁当を受け取った真冬は包んであった布をとってお弁当箱の蓋を開けてみる。
するとあざりのお弁当には主食におにぎりが入っていて、おかずはウインナーと卵焼き、それに唐揚げという真冬の好物ばかりが詰まっていた。
野菜が一切入っていないのは真冬が野菜嫌いだからだ。普段はうるさく野菜を食べろと言ってくるあざりだが、今日は特別だぞ、ということなのだろう。
「おいしそうだね。早速食べてもいい?」
「好きにすれば」
ぷいっと顔を背けるあざり。なんだか小学生時代に戻ったみたいな気がして真冬はあざりに気づかれないように小さく笑った。
真冬はおにぎりを食べた。
「……どう? おいしい?」
あざりが聞く。
「うん。お腹が減ってたし、結構歩いて疲れてたからおいしい」
真冬は言う。
「そこは普通においしいだけで良くないかな? 君は普段あんまり喋らないくせに、しゃべるときは本当にいつも一言多いよね。ひねくれ者だ。そんなんだから友達ができないんだよ」
あざりの口数が多い。いいことだ、と真冬は思う。
「飲み物はないの?」
「あるよ」
あざりはリュックの中から水筒とコップを取り出した。あざりが飲み物をコップに注いでくれる。その中に入っていたのはコーヒーだった。
コーヒーを飲みながら、お弁当を食べ、もぐもぐと口を動かす真冬。そんな真冬を見ているあざり。
「ぼくも食べよっと」
しばらくすると、あざりもお弁当を食べ始める。
静かな時間が流れた。
お弁当は本当においしかった。相変わらずあざりは料理がうまい。
あざりは昔から両親の手伝いをして家事をこなしていたし、真冬なんかよりも実はずっとしっかりとしているのだ。
真冬の食べたおにぎりの中身は鮭だった。
真冬はそれを食べきると、すぐに次のおにぎりに手を伸ばす。
黙々とお弁当を食べる真冬をあざりはじーっと眺めながら、懸命に小さな口を動かしていた。
「ちょっといいですか?」
誰かが二人にそんな声をかけた。
二人は同じタイミングでそちらを向く。
するとそこにはにっこりと素敵な笑顔で微笑む雨森花が立っていた。
