お、追いついた……。
花は肩で息をしている。
ふふ、なめないでよね……。こう見えても私、毎朝走ってるんだから……、体力には、自信があるんだからね……。
汗をぬぐい、呼吸を整えて平然を装う。
雨森花は奇跡的に駅に入る直前の二人の姿を目撃することに成功した。それは執念といえば執念であり、運命といえば運命と呼べる出来事だった。花はもちろん、それを運命だと捉えている。執念ではロマンチックではないからだ。
二人はそのまま電車に乗り、数駅ほど離れた駅で降りた。花はそのあとを追いかける。その駅はとても大きくて、利用客の数を半端ではないダンジョンのような駅だったので、花は二人の姿を見失わないように必死だった。
二人は駅の中で一度立ち止まった。何をしているかと思ったら、そのあとトイレに寄ったので、駅中の地図でトイレの位置を確認していたようだ。ここでトイレに寄るくらいなら水族館で行っとけ、と花は言いたい。
駅を出た二人は傘をさして雪の降る街の中を歩いていく。
それはまあいいのだけど、なぜかそこには今朝のように傘が二つ咲いていなかった。そこには青い傘がひとつあるだけ。
一昨日のデジャビュのように、二人は相合傘をしているのだ。
それは花にとって、もう一種のトラウマのような光景ではあったが、花は一昨日のように辛い気持ちに負けずに、二人のあとを追いかけた。
その途中で雪の降る勢いが弱くなっていることに花は気がついた。この様子だともうすぐ雪は止んでしまうだろう。夜には雨に変わるかもしれない。
あそこはなんだろう? 公園、かな?
二人は大きな公園、というか森のような場所に入っていった。
この街を歩くのは花は初めてだった。駅は利用したことがあったので少しは建物内の構造をイメージできたのだが、ここまでくるともう何もわからない。
その公園の入り口にはゲートのようなものがあり、お金を払う施設が存在した。どうやら有料の公園のようだ。
二人がゲートを通るのを見届けてから、花もお金を払いその中に入っていった。
「君の来たかった場所ってここだったんだね」
久しぶりにあざりが口を聞いた。
「うん。そうだよ」
真冬は答える。
「どうしてここなの?」
あざりが言う。
「こういう場所、好きなんだ」
「それは知っている。ぼくが聞きたいのはどうして今ここに来たのかってことだよ」
あざりは笑う。
雪の森という風景があざりの顔を笑顔にしてれたようだ。
「もともと来たいと思ってたし、雪が降ってる景色ってあんまりないから、見ておきたいなって、思ったんだ」
「ふーん。なるほどね」
あざりは言う。
「それだけなの?」
「それだけだよ」
真冬は言う。
二人は池の近くにある休憩所にたどり着いた。そこは結構混んでいた。
「もうちょっと歩こうか。できるだけ、人の少ない場所でお弁当が食べたい」
「……うん。わかった」
橋を渡り、さらに奥に進むと一回り小さい休憩所が見えてきた。その周辺に人の姿は見当たらない。なので二人はそこでお弁当を食べることにした。