「本当にいいの?」
「いいよ、照子、あなた王子様を探しに行きたいんでしょ?」
「それは、そうだけど、、」
真っ白な家の中、私は照子を向き合って話をしている。雨森希には少しだけ席を外してもらってた。悪いとは思ったけど、私は照子に話しておかないといけないことがあったのでしょうがない。別にいいよ、と軽い口調で承諾してくれた希は、今は楽園の中を楽しそうに散策しているようだ。もっとも、何かしら理由をつけて希には楽園を見学してもらうつもりだったので私としては手間がはぶけてちょうどよかった。
楽園の景色や技術を雨森希に見せることは、この場所に希を連れてきた理由の一つだったからだ。
雨森希はこの後、そんな奇跡を起こすのだろうか?楽園の風景を地上に再現することが彼女にできるだろうか?魂の実や生命の実、そして泥といった神の発明品を見て、人間の彼女は何を考えるのだろうか?
神の模倣だろうか?悪魔に魂を売り渡すのか?
天才の回答はなんなのか?今から楽しみでしょうがなかった。
出来れば私の想像の上をいく答えであってほしい。
私は雨森希という天才に、それくらいの期待を持っていた。
「アウター、あなた、とっても悪い顔していますよ」
照子が私の顔を見ながら言った。多少、注意というか、不満というか、そんな感情の籠った声に聞こえた。
「そうですか?そんなことないですよ」
「もう、アウター。あなたいつからそんな悪い子になっちゃったんですか?昔はもっと可愛かったのに」
「あら、照子。それはあなたが私たちを100年も放っておくのがいけないんですよ。100年放置されたら、私だって悪い子になったりしますよ」
「悪いって自覚はあるんですね」
照子の様子も落ち着くてきたようだ。私はともかくとして、照子は昔と全く変わっていないように見える。それが私にはとても嬉しかった。欲をいえば王子様を見つけたいとか言い出すような、そんな空想的な所は治っていて欲しかったけど、それは贅沢というものだろう。
「アウター、私に話しておきたいことってなんですか?」
「照子の眠っていた100年の間に、私がこの街で行って来たことの報告ですよ」
「私たちではなくて、私がですか、、。アウター、あなた、一人で責任を抱え込んでいませんか?そんなことじゃ体が持ちませんよ」
「それはご心配なく。幸い見事に魂まで粉々になった人を知っていますので。私はそんな無茶はいたしません」
私は照子に微笑んで見せた。照子はムッとした表情を作る。相変わらず照子は子供っぽい。
「話したい事とは、管理者たちのことですよね」
表情には出さなかったが驚いた。照子はどのようにして管理者たちの事を知ったのだろう?私には照子が眠っている状態で、外部の情報を手に入れる方法が思いつかなかった。
「その通りです。よくわかりましたね、照子。あなた眠っている間も街の状況が見えていたんですか?」
「夢の中で王子様に教えてもらいました」
「まあ、なんて便利な王子様なんでしょう。私も是非、王子様が一人欲しいですわ」
「私の王子様は、あげませんよ」
「あら、それは残念です。では、私も自分の王子様を探さないといけませんね」
「アウター、ふざけてないで話を続けてください」
照子の顔は少し赤く染まっていた。怒っているというよりは照れているという印象を受ける。なぜ照子は照れているのだろう?何か後ろめたいことでもあるのだろうか?