なぜ、「court」ではなく「tribunal」と呼ぶのか | 佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

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 ある書類が提出された後、巣鴨で囚われの身になっていた日本人が市ヶ谷に集められて、その書類が読み上げられ、「裁判の如き取り調べ及び質疑応答」が開始されてから、間もなく、70年の歳月が経ちます。書類が提出されたのが4月29日、「裁判の如き取り調べ及び質疑応答」が開始されたのが5月3日です。
申し上げるまでもないことですが、4月29日は、昭和天皇のお誕生日の月日の部分であり、5月3日は、明治節の日である11月3日の半年前、半年後の日です。明治節は、四大節のうちの一つで、明治天皇の御遺徳を偲ぶ日です。明治節の日が11月3日であるのは、明治天皇のお誕生日の月日の部分が11月3日だからです。

 先ほど書きました「ある書類」とは、先の大戦における連合国側が「起訴状」だと主張して止まない書類のことなのですが、僕が、「ある書類」と書いた理由は、その「裁判の如き取り調べ及び質疑応答」を指し示す言葉の中に、「court」という単語が入っていないからです。因みに、その「裁判の如き取り調べ及び質疑応答」は、英語では、「International Military Tribunal for the Far East」と、呼ばれています。同一の軍の中における裁きであれば、「軍法会議、court-martial」と、呼ばれるでしょう。寡聞にして、僕は、「tribunal」という単語が、他のところで使われているのを、見聞きしたことがありません。

 極東国際軍事裁判所条例5条に掲げられている(イ)、(ロ)、(ハ)の項、その英文では、a項、b項、c項に記載されている行為のうちのいずれかを行ったとして、1,000人前後の日本人を殺害することを決定した場を、なぜ、「court」と呼ばずに「tribunal」と呼んだのでしょうか。
「court」は、英語圏では誰もが見聞きし、そして、使う言葉です。もし、「ある行為が行われた後に、ルールを急いで決めて、その行為を行った者を殺害する」ことを決定する場を「court」と呼べば、必ずや、「いやいや、それを『court』と呼ぶのは、いくらなんでも、おかしいよ」という疑問の声が出るでしょう。

 これを 私刑、リンチ(lynch)と呼ばなかったら、何を、私刑、リンチと呼ぶのでしょう。僕は、そう思っております。


神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則