消費税は、消費税法5条1項で明示されている通り、物品やサービスを売った事業者(=供給者、supplyer)に課される税目です。消費税法の全ての条文の、どこをどう読んでも、物品やサービスを買った者(=利用者、user)に課される税目であることを示唆する箇所は、ございません。なのに、なぜ、売上税と呼ばれず、消費税という、お門違いの名称が付けられているのでしょうか。
お若い方は、ご存じないかと存じますが、お若くはない方は、1989年4月1日に消費税が導入される前、いや、消費税法の法案が国会で審議される前に、「日本の税制は、直接税の比率が高い。大型間接税である売上税を導入して、税の直間比率を、他の先進国並みにしなければならない」などという主張、意見を、一度は見聞きされたことが、お有りだと思います。
当時、紅顔ならぬ、蒼顔、老け顔の少年だった僕は、「なぜ、税の直間比率というものを引っ張り出してきて、その値を他の先進国のそれと比較して、ああだこうだ言うのだろう」と、いぶかしく思ったものです。
今にして思えば、「是が非でも売上税を導入したい財務官僚の、口車だったのでは」などと、勘繰りたくもなります。なにせ、シャウプ勧告なる言葉まで、引っ張り出されて、売上税導入の必要性が喧伝されていましたので。
当時、僕は少年だったので、
「売上税導入に対し、企業、特に、中小企業の反発が大きいので、内容は一切変えず、名称だけ、消費税に変更しよう。そして、この税は、企業のみなさまにご負担していただく税ではなく、消費者のみなさんにご負担していただく税なので、どうぞ、ご安心ください、という説明で、何とか丸め込もう。いやいや、乗り切ろう」
という思惑や動きが、あったのかどうかは、残念ながら、存じ上げません。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則