前々回の投稿で、「鷲羽山(わしゅうざん)辺りから見る、夕焼けに染まる瀬戸内海」の穏やかさについて、少し、書かせていただいた。意図的に、「鷲羽山辺りから見る」と書きました。鷲羽山の山頂は、瀬戸大橋の東側にあり、そこから夕陽を拝もうとすれば、必然的に、瀬戸大橋越しに夕陽を見ることになる。
一例に過ぎないが、瀬戸大橋の西側にある鷲羽ハイランドホテルから、夕陽を眺めれば、瀬戸大橋は見えない。
私のような野暮で無粋な者が美醜を語ることは、笑いぐさであるが、私は、あの場所に、あんな鉄の塊りのような構造物があることは、美しいことではないと、感じている。瀬戸内の海に白波が立つことは、一年間を通して、あまりない。台風が通過するときぐらいである。
あの橋ができる前は、玉野市の宇野と高松市の間を、フェリーが頻繁に行き交っていた。不満を感じていた者は、そう多くなかったのではないか。むしろ、長距離運転をする車の運転者にしてみれば、フェリーに乗船している1時間は、大広間のような所で、横になってくつろいだり、甲板から瀬戸内の小さな島々を眺めたりして、ゆっくり過ごすことができる時間であったはずである。
瀬戸大橋は、数少ない、鉄道と道路が共存する橋のうちの一つであるが、その下をくぐり、下津井港まで伸びていた下津井電鉄線が、二十数年前、平成の世になって、そう時を経ずして、廃止されたことは、やはり、今でも、うら悲しい。驛舎跡、昭和は遠くなりにけり。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則