もう、ほとんど忘れかけた出来事だけれど、大昔、止むに止まれぬ事情があり、日本国外務省への出頭を、余儀なくされたことがあった。出頭と言っても、何か悪さをした訳ではない。出頭とは、代理人ではなく本人が、官公署に出向くことである。
要は、「行政書士ではなく、あなたが、束ねれば小冊子が出来上がるくらいの提出書類を持って、外務省に来て、その提出書類を、手交、つまり、手渡ししてください」ということである。
この世には、他人に輸送をお願いすることができる書類と、できない書類がある。
民間企業においても、重要案件交渉中の相手の会社に、極秘文書を届けるときは、自社の従業員の中から信用できる者を選び、運ばせるはずである。重要案件交渉中の相手の会社から、現段階において極秘にしなければならない文書が、書留郵便で届いたら、その交渉は、即終了、破談である。
日本が、今般の親書返送騒動の当事国のうちの一つでないのなら、「親書を書留郵便で送り返す何とかがいて、それを受け取る何とかがいる」と、書いてしまいたいぐらいだ。「何とか」の部分が何かは、お察しいただきたい。
日本が手交した機密書類を、一旦、受け取りながら、後になって、第三者(郵便事業株式会社)に預けて、日本国外務省に輸送させるということは、機密の不保持であり、国交断絶に値する。民間企業なら、交渉、即終了である。
残念ながら、どうやら、書留郵便の受け取りを拒絶せず、受け取ってしまっている模様。嗚呼、情けない。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則