「消費税率の引き上げは、財政再建に、僅かばかりでも寄与するはずだ」という考えを、民主党執行部と自民党執行部は、共有している。
より正確に言えば、前回の国政選挙、第22回参院選における自民党の公約のうちの一つである「消費税率は、当面10%とする」に、消費税に関する考えや方針が、なぜか財務官僚と同じである民主党執行部が乗っかり、充分な審議時間を確保せずに、消費税法改正法を成立させようとしている。
消費税率を引き上げて消費税の税収が増えても、法人税と所得税の税収が減り、景気の変動よりも遅れて変動する失業率が上がり続け、結果的には、1990(平成2)年の税収額をピークとする、一般会計税収の長期低下傾向から、脱け出せない。このことをご理解いただくために、税収のGDPに対する比率の推移を、見ていただきたい。
名目GDP(内閣府のウェブサイトより引用)の推移と一般会計税収の推移を一覧できる図表が見つからないので、1988年から2008年までの数字を、書き出します。
(因みに、1989年4月に消費税が導入され、1997年4月に消費税率引き上げが行われた。)
年度 /一般会計税収/名目GDP /税収の対GDP比
88年度/50.8兆円/387兆円/13.1%
90 /60.1 /451 /13.3
92 /54.4 /483 /11.3
94 /51.0 /489 /10.4
96 /52.1 /509 /10.2
98 /49.4 /503 / 9.8
00 /50.7 /504 /10.1
02 /43.8 /489 / 9.0
04 /45.6 /498 / 9.2
06 /49.1 /510 / 9.6
08 /44.3 /492 / 9.0
現行の税制は、フローに着目した法人税、所得税、消費税を、主な税目としている。何度も申し上げている通り、個人金融資産の偏在の度合いが高まれば、個人所得のうち、投資に回すお金の割合が上がり、消費に回すお金の割合が下がる。だから、デフレが続く。
闇雲に、消費税率を引き上げても、税収は増えず、失業率が上がるだけである。ストックに着目した個人金融資産税法の再導入を、早急に議論すべきである。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則