私が幼少のころは、大国である米国とソ連が対立し、多くの国は、西側諸国か東側諸国に、分類されていた。ソ連の国民の生活水準が低いことや、ソ連の国民は、自由に政治的発言をすることが許されていないことなどは、テレビや新聞などを通じ、日本では広く知られていた。
ソ連のアフガニスタン侵攻、西側諸国のモスクワ五輪不参加、ブレジネフ書記長の死去などの報道に接し、子供ながら、「ソ連という国は、おどろおどろしい国だな」と思った。
国際政治における主導権や決定権は、軍事力によってのみ、決まってしまうものなのだろうか。
後年、ソ連は解体され、国民の生活水準の向上よりも軍事力の向上を優先させる大国は、一時的には無くなった。中国共産党が、ソ連の解体から何も教訓を得ようとしなかったということは、ないだろう。現在、中国は、毎年、膨大な金額を軍事費(国防費)に充てる軍事大国である(ストックホルム国際平和研究所のデータベースへ)。
日本人には、兵庫県から神奈川県に移住する自由がある(憲法22条1項)が、中国人には、雲南省から上海市に移住する自由は、ない。だから、家族の中で、成年の男性のみが、沿岸部の大都市に、出稼ぎという形で出てくる。そして、中国における法定最低賃金は、そういう出稼ぎ労働者(いわゆる民工)の賃金を抑えるために、極端に低く設定されている。
沿岸部の大都市に、工場を世界中から誘致する。同じく、沿岸部の大都市に、低賃金労働者を内陸部から集める。これが、中国沿岸部の経済成長のカラクリであり、沿岸部の大都市生まれの者のみが、経済成長の恩恵を受ける。
そうやって、経済力を増強することによって、軍事力を増強する。中国共産党は、軍事力のみを重視して経済力を軽視したソ連の失敗を研究した上で、そうしていると、私は考えている。軍事力も経済力も必要なものだけれど、銃と札束だけでは、世界中の人々から支持を得ることはできない。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則