ユーロのあの国やその国、ドルの米国、円の日本、それぞれの国の政府の財政赤字が、近年、膨れ上がっている。いかなる政府も、収入の範囲内で、つまり、税収の範囲内で、支出を行うべきである。本年度に発行した国債は、将来の税収によって償還(=返済)される。支出の時期と税収の時期がずれているだけである。全体を見れば、やはり、政府は、税収の範囲内で、支出を行うべきである。
政府が税収の範囲を超えて支出を行うことを、阻止する方策として、日本の財政法の4条1項(*)は、とても有効な条文だと、私は考えている。4条1項の但し書きの中にある「出資金及び貸付金」を削除すれば、なお好ましいと、考えている。政府が借金をしなければ実現できないような、政府出資や政府貸付けは、行っても、政策の効果が期待できない。
「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」が、原則であり、その例外は、「公共事業費、出資金及び貸付金」だけである。赤字国債発行による収入を以て、「公共事業費、出資金及び貸付金」以外の支出項目の財源とすることは、不可である。
「赤字国債発行による収入」を予算に盛り込んだが、実際には、赤字国債はまだ発行していないので、違法ではないとおっしゃる方が、実に多い。けれど、赤字国債を実際に発行することだけでなく、赤字国債を予算に盛り込むことも、違法である。
もし、赤字国債の発行のみを禁止するのならば、財政法4条1項は、
『国は、公債を発行し、又は借入金をなしてはならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。』
と、なるはずである。法令の条文は、詩ではない。文の構造は類型化されているし、語の選択は、いい加減ではない。明確な理由があって、4条1項で、財源とするという言葉が、使用されている。少なくとも、弁護士でもあられる国会議員の先生方には、当然、ご理解していただけると、私は思っています。
神奈川県にて
佐藤 政則
(*)財政法4条1項
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。