旅と呼べるほどの情緒はないが、普段の生活圏から飛び出してみると、「近代国家における領土とは、何だろうか」と、ふと思う。今年の2月に、とある国会議員の秘書の方と、30分ほど会話をさせていただく機会があった。そのとき、たまたま、話題が、領土問題に及んだ。
その会話の中で、「北方領土、北方領土と言って、千島列島の南端辺りにあるごく一部の島々だけを採り上げて、議論がなされているけれど、千島列島全体の領有権について議論すべきである」、そういう主旨のことを、私は申し上げ、賛意を得た。普段は、なかなか、公言しづらい事柄である。
1952年発効のサンフランシスコ条約によって、千島列島は、日本の領土ではなくなった。つまり、それまでは、日本の領土だった。そして、日本は、放棄したのであって、特定の国に対し割譲したのではない。ソ連は、1945年の夏に、日ソ中立条約を破棄したと、勝手に言って、千島列島に、勝手に入り込んだだけである。
もし、近代国家日本が、嫌がる千島列島の住民を、武器を使って脅し、千島列島を、無理矢理、日本の領土にしていたのなら、原状に戻すべきである。が、近代国家日本は、そういうことをして、千島列島を、日本の領土にした訳ではない。また、近代国家日本が、千島列島を日本の領土とする前は、千島列島は、どの近代国家にも帰属していない。そして、1952年から現在まで、千島列島は、国際法と呼ばれる世界においては、どの国にも帰属していない。
「昔、戦争に負けて、千島列島の領有権を放棄した。しかし、その後の59年間を見れば、日本が、自由で民主的な先進国であることは、明らかなので、放棄した、千島列島の領有権の回復を、認めていただきたい」と、サンフランシスコ条約に署名した国々に、胸を張って言えるだろうか。
怪しげな財政運営を、だらだらと続けていて、果たして、そう主張できるだろうか。
兵庫県姫路市にて
佐藤 政則