平成20年2月29日に衆議院で可決され、その後60日以内に参議院が議決せず、平成20年4月30日に衆議院で再可決され、同日の平成20年4月30日に公布された法律で、「平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律」という名称の法律がある。
その法律の附則には、たしかに、「この法律は、平成20年4月1日から施行する」と、書かれている。平成23年度本予算が、衆議院を通過した日である3月1日にも、ご紹介させていただいた件である。繰り返しになるが、私の誤記ではない。
「あいつ、今のところ、違法なことはしてへんけど、気に食わんな。さっき、あいつがやったあの行為を、犯罪と規定する条文を盛り込んだ法律を作って、その条文を、遡ってあいつに適用し、捕まえてまおか」、もちろん、してはならない行為である。刑罰法規において、遡ること(遡及効)は、禁止されている(憲法39条)。
では、法律の施行日を遡らせることは、どうか。時は、不可逆である。法律の施行日を遡らせることは、この世の真理に反し実現不可能な行為である。寡聞にして、この世の真理に反し実現不可能な行為を、わざわざ、禁止するような憲法や法令があるのかどうか、正確なことは知らないが、法令の中の、真理に反する部分は、その部分のみ無効ではないのか。
平成20年4月30日の再可決の時点で、衆議院議員(実質的には、財務官僚)は、法附則に「この法律は、公布の日から施行する」と書けば、財政法4条1項に違反すると、認識していたのではないか。だからこそ、法附則を、「この法律は、平成20年4月1日から施行する」のまま、意図的に、変更しなかったのではないか。
いずれにせよ、4月30日に制定公布された法律を、4月1日から施行させることは、衆議院議員であろうと、財務官僚であろうと、できない。時を逆行するタイムマシンは、空想の産物である。
私は、実を重んじる者(プラグマティスト)である。上品な方法で申し上げて、理解を得られないときは、法律の範囲内の、上品ではない方法で申し上げることに、やぶさかではない。
神奈川県にて
佐藤 政則