前回のエントリで触れたように、アーカンソーの水田への水の供給は基本的に地下水である。
地下水を水源にしていることで困るのは田んぼへの栄養塩の補給だ。
川から水を引いていれば、川が色々な栄養塩を運んで来てくれるので土地が痩せにくい。
しかし田を作りやすいアーカンソーの広大なデルタ地帯の平坦さが逆に災いし、川から水を引いてくるには高低差が足りないのだ。もし川から水を引こうとするなら、かなり大掛かりな灌漑をしないといけない。
そこで、土地が痩せることを防ぐ手段ために、此処では米と大豆を一年ごとに交代で育てているそうだ。
マメ科の植物の根には、空気中の窒素を植物が利用可能な形することが出来る根粒細菌が共生するので、日本でも早春に入水する前の田でマメ科の植物のレンゲを育て土に鋤き込んで窒素分の補給をしているところもある。
稲作博物館への道、アーカンソーのデルタ地帯を車で走っているとき、何やらマメ科の植物を植えている畑が水田と交互に出てくるので何かと思っていたのだ。「ピーナツ、、、、じゃないよな、葉が大きすぎるし」等と考えながら停まって調べることもせずに博物館までドライブしてきたわけだが、大豆だったというわけだ。
昔、博物館の学芸員さんのご両親が米作りをしていた頃は、アーカンソーでは大豆を日本の水田におけるレンゲのように使っていたという。つまり、畑を水田にする前に豆ごと土に鋤きこんでいた。たとえ大豆を収穫してもせいぜい家畜の餌にする程度だったらしい。
ところが、大豆が実は様々な利用価値のあるスーパー作物であるということが分って、それ以来、大豆も米と同様にアーカンソーの重要な換金農作物となったということであった。博物館にも大豆が如何にスーパー農作物であるかということを紹介する展示コーナーがあった。
こうして見ると、大豆ってほんとスーパー作物だね。食品のみならず、プラスチックや薬品まで。
そういえば、車中から見た大豆畑の脇に、「なんやらプラスチック」というどう見てもプラスチック製造会社の名前の看板が立っていた。単に看板を立てる土地を借りているだけかと思っていたが、そうではなくまさに「ここの大豆畑はウチのプラスチックの原材料だよ」ってことだったのだね。
というわけで、日本の水田風景では畦豆と言って水田の端に植えられる大豆が、ここでは稲と共に主役級で広大な畑を織り成している。
しかしながら、ここら辺の農家の人は、若い大豆をサヤごと煮て枝豆として食べると言うことはしていないようだった。枝豆は「エダマ~ミィ」とか言って、日本料理屋では定番なんだけどな。もしかしたら同じものだと気づいていなかったりして・・・
ついでにアーカンソーの稲作農業地帯の他の作物についても学芸員さんに訊いてみた。此処での稲作は基本的には二毛作で、普通は8月から9月にかけてコメを収穫したあとには小麦を植えるらしい。しかし、近年の健康食ブームで小麦以外の穀類が高く売れるようになったので、いろいろな品種のオーツを植える人も出てきているという。
また、最近ではリニューアルエナジーのエタノール原料として補助金稼ぎに使えるからか、コメの代わりにトウモロコシを植える農家も増えてきているとも言っていた。実際、稲田や大豆畑に混じってとうもろこし畑がちらほらと見られた。
ちなみに稲作で大量に出る稲の藁を電力生産に役立てるための努力もしていると言っていた。