星組公演 BIG FISH | 続アメマのおとしもの

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2024年5月30日~6月16日 東急シアターオーブ・星組公演

●ミュージカル「BIG FISH」 潤色・演出/稲葉太地

 

ダニエル・ウォレスの小説をもとに、2003年にジョン・オーガスト脚本、ティム・バートン監督により映画化、2013年にはブロードウェイでミュージカル化された「BIG FISH」を、礼真琴を中心とした星組がお届け致します。心躍る音楽で綴られたファンタジックなミュージカル作品。

 

6月5日11時公演、3階1列目で観劇。

※ネタバレ注意。

おとぎ話のように昔話を何度も語る父と、成長して現実的になっていく息子との距離、そして妻との物語を軸に、とある街を救うお話し。

チケットが発売と共に即完売。その後に歌劇団は配信や映像化などは一切ないと発表し、ネット上を騒がせました。そんなこと前もって分かってるのに、なんで後になって言うかね?ただでさえトップの別箱公演はチケ難になること必至なのに。

なので生観劇が大変貴重なモノとなった訳ですが、よく考えたら昔はほとんどがそうでしたよね?今は何でも配信や円盤化、スカステでの放送が当たり前になってるので、生での観劇の有難味が薄れている気がします。でもチケットが取りにくい事実もあるのですよね。

私が宝塚を観始めた頃は、関西テレビが大劇場公演を中継、NHKが不定期に中継。バウホールはトップや二番手クラスがCD化されるだけで、それ以外の若手公演なんて生で観るしかなかったですからね。まして新人公演なんて。長くなりましたが、そんな話は置いといて今回の公演のことを書きます。

 

物語自体はさほど大事件がある訳でなく、親子愛をメインにしたもので、過去と現在とを交えながら進んでいきます。その度に礼真琴は若くなったり老けたりと大忙し。ラストは感動に向かうのですが、私個人的にはそこまで面白いとは思えず、歌は流石に良かったですが、物語自体に魅力を感じませんでした。

前述したように過去と現在を交えて進むのがややこしくて、お話しに集中できず散漫になってしまいました。礼以外の主な役が若い時と現在のそれぞれの生徒が演じている訳ですから、一幕を若い頃にして二幕を現在で進めて時系列的にした方が、分かりやすいかなと思いました。そうすると二幕は礼はずっと爺さん役になってしまいますがね・・・。

それとダム建設で水没する街を救う件が、簡単すぎるようにも思いました。そしてかつて自分を愛してくれていた女性に家を持たせていることも、なんだか腑に落ちなかったです。オリジナルの話でなく、元があるので変えようがないので仕方ないですが、イマイチ日本人の感覚では納得できない部分が多い話だなと。ポスターにもある黄色い水仙の花もあまり生かされてなかったようにも感じました。フィナーレもなしで、休憩込みの3時間はかなり長かったです。

 

主演の礼真琴は、おとぎ話のように人生を語り周囲を魅了する男のエドワード・ブルーム。

カッコイイ青年ですが、どこか夢と現実の狭間で生きてます。私的には年老いてからの礼の芝居が面白く、息子との関係に苦悩しながらも、妻や息子の嫁には理解されている姿になんだかホッとした気持ちがありました。これがみんなから変人扱いされてしまうと、観てて辛いですからね。歌が多くて、これは礼真琴のための礼真琴のミュージカルだなと思います。

 

その息子のウィル・ブルームを極美慎

子供の頃は夢見がちの父親を面白く思ってましたが、段々とそれが受け入れられなくなっていきます。壮一帆に似た風貌が、ちょっと神経質そうな感じが出ていて良かったです。最後には父親の思いを理解し、残した功績に尊敬できるので、ウィルも優しい人なんでしょうね。歌はかなり良くなってますよね。

 

エドワードのサンドラ・ブルーム妻を小桜ほのか

優しさの塊のような女性で、エドワードの全てを理解しています。ミュージカル女優ほのかなので、礼との相性もピッタリです。ラスト近くでエドワードを膝枕して歌うところは絶品。役としては舞空瞳でないのは納得かな。これが娘1だと違うかな。

サンドラの若かりし頃を詩ちづる

とにかくキュート。サーカスでの踊りなんて、アイドル的でした。歌えるし、可愛いし、言うことなし。

ウィルの妻ジョセフィン・ブルームを星咲希

可愛い妊婦さんを好演。岐阜のおとぎ話を楽しそうに聞いているのが印象的でした。

 

それ以外の脇の役がドラマシティに比べてちょっと薄いかなぁ。

特に男役陣にそれを感じたので、芝居を締める脇がいなかったのも、私がこの作品が感動に至らなかったのかなと思うし、主演のキャラクターや軸となる「親子愛」がやはり映画なんですね。舞台向きの話ではなかったように思いました。

ただこの主要4役は良かったと思うし、礼真琴や小桜ほのかの歌の素晴らしさは生で観劇出来てこそでしたね。