きさらぎ駅
◾ストーリー
民俗学を専攻している大学生・堤春奈は、卒業論文のテーマを「神隠し」にし、実際に神隠しにあったという女性・葉山純子の元を訪ね、当時の状況を聞き取る。
葉山はその日、仕事帰りの電車で別の世界に飛ばされたという。その場所には『きさらぎ駅』と書かれていた──
はい。前回あれだけ懲りたにも関わらず、またしてもJホラーです。
しかも内容はタイトル通り『きさらぎ駅』からして地雷臭プンプン。
ご存知の方は多いかと思いますが、このきさらぎ駅というのは当時インターネット掲示板に書き込まれた話が元ネタです。
都市伝説を題材にすることは海外の映画にもありますが、真偽不明かつ訳の分からないものを主題にするというのは、話の膨らみが自由な反面、脚本や演出によってはとんでもない駄作にもなりかねない、諸刃の剣でもあります。
さて、本作はどんな感じなのか……期待しないで視聴しました。
率直に述べるなら、本作は「設定の粗、演出の雑さはあるものの、ストーリーには意外性があって思いのほか面白かった」です。
……そう、面白かったのです。
正直なところ、前回の記事で紹介した「忌怪島」「牛首村」よりも面白かった。
登場人物含む全体的なチープ感、色んな演出が雑と、諸手を上げて称賛するレベルではないのは確かです。怖くもありません。
ストーリーも「きさらぎ駅の体験談+α」で非常にシンプル。
ですがそのシンプルさのお陰で、話を無駄に広げることなくすっきりと仕上げています。
それに、私の好む「意外性」があったのが一番です。
レベルは段違いですが、海外ホラー『OLD※』に近い意外性ですね。
※OLD
バカンスでとあるビーチを訪れた人々が、そのビーチの“時間が恐ろしく早く進む”異常性に襲われるホラー映画。
別記事でこの作品の考察書きたいくらいには気に入りました。
とはいえ、繰り返すようですが全体的にはチープ&雑。
ツッコミどころも満載です。
それでも許せる方のみ、オススメします。
終わらない週末
◾ストーリー
忙しない日常から離れ、別荘を借りてノンビリ休暇を楽しむ事にした一家。借りた別荘は豪勢であり、最高の時間を味わえると家族は心を踊らせた。
だがビーチで遊んでいる最中、タンカーがビーチ目掛けて座礁する現場を目撃。
それを皮切りにインターネットの不通、テレビに流れる謎のニュース、別荘の庭に姿を見せる鹿の群れと、不穏な空気が漂い始める。
そして「別荘の持ち主」だと主張する男女が来訪し、事態は更に混迷の一途を辿る──
ネットフリックス映画です。不穏な予告編に惹かれて視聴しました。
しかも出演俳優は“ジュリア・ロバーツ”、“イーサン・ホーク”、“ケビン・ベーコン”と実力派が揃い踏み。期待させてくれます。
良かった点は不安の煽り方が絶妙なところ。
通信機器の不調やタンカーの座礁に始まり、登場人物は誰も直接的な危害を加えられてない当初から、不穏な空気と不安な気分を与えてくるのは見事です。
そもそも本作を見ようと思ったのは、予告で「タンカーの座礁」シーンが流れていたからというのもあります。あれだけで「何が起きるの?」「どんな内容なの?」と、めちゃくちゃそそられました。
様々な皮肉がたっぷり込められているのも面白い。
“何か”が起きていて逼迫した状況でも、どこか呑気にしている登場人物たち、危機的状況に陥っても心の底からは拭うことが出来ない人種差別意識、普段は馬鹿にしていた人を困ったときだけ頼る姿勢、現実よりも空想の結末が気になる心理等、随所に皮肉が込められています。
特にインターネットが不通になった途端、何も出来なくなって不安に苛むのが現代的。私も何も出来ないだろうなぁ(遠い目)
ただ、色んな要素を詰め込み過ぎており、消化不良に終わってしまった感じは否めません。
劇中では謎の現象が多発しますが、どれもやるだけやってポイッ。
「あとは君たちの想像力次第だっ!」という打ち切りエンド風味をすごく感じました。
現象の幾つかは暗喩の類いだったりするのですが、あまりに馴染みの薄いことばかりであるため、「ふーん……」くらいにしか思えません。
考察するのは好きな方ですが、本作は殆どの演出が視聴者の考察頼みなのも残念なところですね。
あと、どの登場人物にも感情移入出来ないのが痛い。
どの人物も個性的でキャラ立ちはしているものの、あまりに極端過ぎて誰にもシンパシーを感じることが出来ませんでした。
考察系が好きな方にはオススメですね。
土竜の唄
◾ストーリー
正義感は強いが言動に難のある警察の問題児・菊川玲二は、ある日上司からクビを言い渡される。
しかしそれは広域暴力団数寄矢会の会長・轟周宝を逮捕するべく、菊川を潜入捜査官(モグラ)として潜入させるための作戦であった。
様々な試練を乗り越えて正式にモグラに任命された菊川は、数寄矢会に入り込むべく行動を開始する──
漫画実写化映画です。
……実写化と言うだけで嫌な予感がしますね。
原作は見ておらず、コメディということだけは把握してましたが、この清々しいまでのバカなノリに着いていけるか否かで、当作品の評価が分かれると思います。
原作を知らぬが故に比較しようがないのですが、ただのコメディ映画として見ても私には合いませんでした。
駆け足過ぎる展開に雑な演出、露骨なコメディ描写……。原作からこんなんなんですかい?実写版進撃の巨人と良い勝負でした。
この映画好きな人ごめんなさい。
反面、役者は芸能界に疎い私でも見知った大物揃いであるため、演技に関しては文句ありません。
特にヤクザ関連の描写はとても迫力がありました。皆顔怖い。
「話題になったカルト映画!」というクソ映画が合わないのは最初に言いましたが、まさかそれ以外にも合わない映画があるとは……。
新たな発見です。
本作については以上であり、映画……それもコメディの設定に突っ込むのは野暮だとは重々承知の上ですが、どうしても言いたいことが一つ。
正義感の強い奴は女子高生のパンツを見ようとはしねぇ。
まとめ
というわけで、本日の3本の紹介は終了です。
あまり期待していなかった映画が面白いと、かなり儲けた気分になりますね。今回で言えば“きさらぎ駅”がそれでした。
あと、コメディの中でも合わないものがあるんだという発見もありました。“タッカーとデイル”とか“ホーム・アローン”とかは大丈夫だったのに。不思議。
それでは本日はこのへんで。
おしまい。