令和6年2月歌舞伎座昼の部 籠釣瓶花街酔醒
籠釣瓶花街酔醒 カゴツルベサトノエイザメ
当ブログの過去記事から
平成28年2月歌舞伎座夜の部 籠釣瓶花街酔醒
籠釣瓶花街酔醒 カゴツルベサトノエイザメ
明治二十一年五月一日東京千歳座(後の明治座)初演。三世河竹新七作。この新七は黙阿弥(二世新七)の弟子である。明治二十一年はまだ黙阿弥在世である。初演時配役は
初世市川左團次(佐野次郎左衛門)、四世中村福助(後の五世歌右衛門)、五世市川小團次(下男治六)ら。
黙阿弥作の八幡祭小望月賑(縮屋新助)の焼き直しであることは両方見ればすぐわかる。本作は享保年間に佐野次郎左衛門という男が江戸吉原の八つ橋という遊女を嫉妬の末殺したという実説にもとづいている。それ故、舞台が吉原となり縮屋新助の深川より派手になった。初世吉右衛門が当たりを取ったということもあるが、本作が今日ほぼ二年に一回の頻度で上演される人気作品となったのもその派手さゆえもあるのではないだろうか。現行では吉原仲ノ町見染めから立花屋二階までの上演がほとんどであるが、もともと全八幕の長編で次郎左衛門の先代の次郎兵衛の代からの因縁話が語られる。また名題に入っている籠釣瓶は無銘の村正で、ひょんな事で次郎左衛門の居候となった都筑という石田三成旧臣から形見として譲り受けたものである。この辺は戦後一回だけ平成二十三年五月新橋演舞場で現吉右衛門が取り上げた。
今回配役は
中村吉右衛門(佐野次郎左衛門)、尾上菊之助(八つ橋)、中村又五郎(下男治六)、中村梅枝(九重)、坂東新悟(七越)、中村米吉(初菊)、坂東彌十郎(釣鐘権八)、中村歌六(立花屋長兵衛)、中村魁春(立花屋女房おきつ)、尾上菊五郎(繁山栄之丞)ら。
仲ノ町。八ツ橋の出の下座は「闇の夜」。八橋につく若い衆の浴衣は斧琴菊。提灯は杏葉菊。九重は横兵庫だが、八つ橋は多分普通に島田。返し幕の間、砂切。
「その手で深みへ」(吉原雀)で幕開いて立花屋店先。同じ吉原雀の「素見ぞめきは椋鳥の」で舞台回り、
大音寺前浪宅。菊五郎二十四年ぶりの繁山栄之丞。返し幕。
「夜桜」で幕開き兵庫屋遣手部屋。舞台回り
兵庫屋廻し部屋。舞台回り
縁切り。九重、七越は横兵庫、初菊は島田。治六の出は「吉原騒ぎ」。八つ橋の打ち掛けは火焔太鼓。八ツ橋の愛想尽かしの間「ひなぶり合方」。返し幕の間、砂切。
立花屋二階。大詰め、次郎左衛門の「籠釣瓶は、よく切れるなァ」は、八世幸四郎譲りの「つるーべは」と「る」を上げて延ばすアクセント。これは初世吉右衛門もこうだったのかもしれない。
令和二年四月の公演がコロナで中止になってしまったので、二年に一度くらいのペースで上演されてきた本作の上演が久しぶりになってしまった。平成三十年四月名古屋御園座でやった幸四郎が次郎左衛門のニンではないのかもしれない。そんならそろそろ勘九郎にやらせようということなのであろう。
今回配役は
中村勘九郎(佐野次郎左衛門)、中村七之助(八ツ橋)、片岡仁左衛門(繁山栄之丞)ら。
勘九郎は幕切れの「かごつるべは」の「る」を上げてのばした。