テオ・アンゲロプロス監督作品 鑑賞の歩み | 俺の命はウルトラ・アイ

テオ・アンゲロプロス監督作品 鑑賞の歩み

 

 テオ・アンゲロプロス

 テオドロス・アンゲロプロス

 Θόδωρος Αγγελόπουλος

テオ・アンゲロプロス先生

 映画監督・脚本家

 1935年4月27日ギリシアアテネに誕生。

 2012年1月24日映画撮影中にトンネル内

においてオートバイに跳ねられ、頭部を強打

し、搬送先の病院において死去。76歳。

 

 テオ・アンゲロプロス監督の映画は歴史の

深さをワンシーンワンカットの長回し技法で

語ります。

 

 1985年6月22日京都教育文化センターに

おいて、映画Ο Θίασος  日本語題名『旅芸

人の記録』を鑑賞しました。

 

 旅芸人一座が1939年から1952年にかけて

ギリシアを歩みます。一座の中心の役者二人

はエレクトラとオレステスの姉弟です。役名

に窺われるように、エウリピデスの戯曲『エ

レクトラ』を基盤にして、姉弟の受難と痛み

と悲しみを尋ね、ギリシア現代の歴史を見つ

めます。

 

 エレクトラをエヴァ・コタマニドゥ、オ

レステスをペドロス・ザルカディスが勤め

ました。

 

 アンゲロプロス監督はワンシーンワンショ

ットの長回しの演出で、旅芸人の歩みと共に

時代が変遷していく道を重厚に描きます。

 

 姉弟が引き裂かれていく様を静かに語りま

す。苦悩と悲痛の源を突き詰めていく演出の

厳粛さは強烈です。

 

 戦争や圧政の恐ろしさを思いました。

 

 上映時間は四時間でした。

 

 当時自分は十七歳だったのですが、ギ

リシアの巨匠テオ・アンゲロプロス監督

に学びたいと感じました。

 

 監督の大傑作映画を映画館で鑑賞した縁

に感謝します。

 池澤夏樹字幕に会えたことも尊い縁でした。

アンゲロプス監督と池澤夏樹は親友です。
テオの歩み
  『狩人』 Οι Κυνηγοί

  2006年1月15日 第七藝術劇場

 

 『アレクサンダー大王』Μεγαλέξανδρος

  1984年4月20日 祇園会館にて初鑑賞

  2006年1月16日 第七藝術劇場にて

  二回目鑑賞

アレクサンダー大王 テオ・アンゲロプロス監督作品

 『シテール島への船出』

Ταξίδι στα Κύθηρα

     1986年4月6日か13日のいずれか三越劇場

 1987年11月23日祇園会館

シテ―ル島への船出

 『霧の中の風景』 

 Τοπίο στην ομίχλη 

 1990年7月25日 コマゴールド 

 

 『蜂の旅人』

  Ο Μελισσοκομοσ

  2005年7月27日 神戸アートビレッジセンター

 

 『こうのとり、たちすさんで』

 Το Μετέωρο βήμα του πελαργού

 2005年7月29日 神戸アートビレッジセンター

  

 

 『ユリシーズの瞳』

 Το Βλέμμα του Οδυσσέα

 1996年10月 京都みなみ会館

 

 『永遠と一日』

 Μια αιωνιότητα και μια μέρα

 1999年6月6日 弥生座2

 

 『エレニの旅』

 Τριλογία 1: Το Λιβάδι που δακρύζει

  2005年6月12日 京都シネマ

 

 『エレニの帰郷』

 The Dust of Time
 Η σκόνη του χρόνο

 2014年2月7日 梅田ブルク7

エレニの帰郷

 監督作品十六本のうち十一本を銀幕で見聞・鑑賞

しました。


 

 テオ・アンゲロプロス監督の映画に初めて出遇った
時は昭和五十九年(1984年)四月二十日の祇園会館

の『アレクサンダー大王』の鑑賞でした。

 テオ

 アンゲロプロス監督は1992年に来日し読売新

聞の取材に対して次のように語りました。

 

  「ジャン・ルノワールは『大いなる幻影』の中で、

  『忘れちゃいけない、国境というものは人間が

  でっちあげたものだ』とジャン・ギャバンに言わ

  せているが、私もギリシアという国境を受け入

  れることを拒否したい。国境とは外的に存在す

  るものではなく、むしろ自分の内部に存在する

  ものではないのか」

 

  (1992年8月15日 読売新聞夕刊)

 

 

ジャン マルセル

 ジャン・ルノワール監督が恒久の平和を願って撮っ

た永遠の傑作『大いなる幻影』 La Grande Illusion 

(1937年)の主人公マレシャル(ジャン・ギャバン)

の言葉を、テオ・アンゲロプロス監督が大切にされて

いたことに感動しました。

ジャン・ルノワール

 戦いの元になり、人と人とを分断していく「境」は自

己の内面にあるのではないのかという師の問いかけ

に学びます。


 高野悦子先生

 日本にテオ・アンゲロプロス監督作品を

紹介上映してくれた映画館は岩波ホールで

す。

 

 高野悦子の情熱が映画ファンに歴史物語

を教えてくれました。

 

 その岩波ホールは閉館しました。

 

 悦子氏・かしこ氏

エキプ・ド・シネマ

 『惑星ソラリス』

 『木靴の樹』

 『緑色の部屋』

 『ファニーとアレクサンデル』

 

 生命の尊さを教えてくれる映画を岩波ホールは上

映してくれた。

 


 昭和六十一年(1986年)四月三越劇場で『シテ

ール島への船出』が公開された時は一日三回鑑賞

したことも大きな出来事でした。

 翌六十二年(1987年)十一月二十三日祇園会館

で四度目の鑑賞を為しました。

 アンゲロプロス監督作品では最も多く銀幕鑑賞を

している映画です。
夫婦

 

 日本公開時予告篇ナレーターは佐藤慶であった

と確信しています。

 

 字幕は表示されなかったけれども、あの声は

佐藤慶であると実感しました。

 

 佐藤慶はテオ・アンゲロプス映画を讃えた

映画人・演劇人でもあらせられます。

 

 蓮實重彦元東大総長によると『ユリシーズの瞳』

がカンヌ国際映画祭グランプリを取れなかったこと

を、アンゲロプロスは悲しんだそうです。

 『ユリシーズの瞳』は命の一回性を尋ねた大傑作

です。賞を取ろうが取るまいがその無限の深さは変

わらない。

 戦いや争いへの哀しみを尋ねた名画を深重の演出

で撮ったテオ監督が悩み名利への希望を見せたこと

に学びたい。

 

 師匠として尊敬していた溝口健二は『西鶴一代女』

がヴェネツィア国際映画祭で国際賞候補になった時

に祈りに祈った。このことを迷妄として叩く評論家

もいるが人間臭さは素晴らしいことだ。

 

 名匠が名利の有無を越えた永遠名画を撮っても心

の名利は無くなる訳じゃない。これは大事やね。 

 『ユリシーズの瞳』の主演俳優ハーベイ・カイテル

はギリシア語を修得して撮影に臨みました。

 

 永遠不滅の大傑作です。
 

 テオ・アンゲロプロス監督

 

 八十九歳お誕生日

 

 おめでとうございます
                     
            文中一部敬称略



                 合掌



            南無阿弥陀仏



               セブン

エレニの帰郷3