新必殺仕置人 裏切無用(五)「俺しかいねえよ」 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 裏切無用(五)「俺しかいねえよ」

『新必殺仕置人』「裏切無用」

テレビ映画 トーキー 54分 

カラー(一部白黒)

昭和五十二年(1977年)三月十一日

朝日放送系にて放映

 

 

  のさばる悪を  なんとする

   天の裁きは  待ってはおれぬ

  この世の正義も あてにはならぬ

   闇に裁いて  仕置する

  南無阿弥陀仏

  ☆☆☆
  演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。

 

 感想文ではドラマの核心・結末に言及します。

未見の方はご注意下さい。

 引用文の中に今日の表現では人権を傷つける

表現がありますが、そのまま引用します。


 松竹様・朝日放送(ABC)様におかれましては、

お許しと御理解を賜りますようお願い申し上げま

す。

 ☆☆☆

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 己代松は中村主水にかねみ庄次郎を殺るのかと問い

主水は頷く。町方として手代文吉殺しの下手人を捕まえ

ることが重要でかねみ屋がどうなろうが知ったことでは

ないと主水は述べる。正八は証人になることを承知した

訳ではないと述べるが、松に小型鉄砲を向けられ、鉄に

骨外しの仕種を示され、主水に睨まれ、おていに豆をぶ

つけられて嫌々ながら承知する。

 

  主水はこれで決まったと述べ、鉄に何故下手人を教

えてくれたのかと問う。鉄は友達思いだからだと答える。

主水は、本当かと問い、金見庄兵エは腕が立ち、俺が

召し捕れば、弟の庄次郎の始末は楽だろうからなと語

って奉行所に戻って行く。

 

 おていは、八丁堀が庄兵エと戦って怪我すんじゃない

のと案じる。

 

  鉄「そんな玉か!あれが!」

 

 奉行所で主水は同心石部に手代文吉殺しの下手人

が分かり証人を抑えましたと報告する。石部は主水が

手柄を譲ってくれると聞き感動する。その代わり、自分

が傾動の日に賄賂をかましたことを日誌から削除して

頂けませんかと主水が懇願する。石部は快諾し、「お前

本当に良い奴だな」と主水の気遣いを絶賛する。

 

 石部は主水と捕手を率いて金見屋を探索する。鉄・

松・正八・おていは待機したいた。主水・石部はかね

み屋を調べるが、かねみ兄弟と重六の姿は無かった。

だが畳が暖かいことに注目した石部は、天井から逃げ

た跡を見つけ屋根に注目し店外に出る。

  

 かねみ兄弟と重六は屋根の上に居た。石部は捕縛

の指示を出す。その時重六は火の玉鉄球を投げて、

石部の顔面にぶつけて殺害した。

 主水・鉄・松・正八・おていは、重六の残酷な殺害方

法に震える。その間隙を突いて かねみ兄弟と重六は

屋根伝いに歩み逃走する。死神が見ていた。

 

 与力は激怒し、主水を叱責し、かねみ兄弟を召し捕れ

なかったならば、牢屋同心降格どころか、奉行所から追

い出すと通告する。

 

 御堂の中でかねみ兄弟と重六は今後の逃走につい

て語り合う。庄次郎は金を掘り出して帰ると告げる。

 

   重六「国は何処だ?」

 

   庄兵エ「備後福山。良い所だ。」

 

 庄次郎は一緒に来ないかと誘う。

 

   重六「馬鹿野郎。てめえ気は確かか?定廻りを

       一人殺ったんだぜ、定廻りを。娑婆に出て

       見ろ、たちまち御用風に喰らうぜ。」

 

 庄次郎はこんな事も有るだろうと手は打ってあると

述べ、俺達の身に何かある時は十万石の大名が守

ってくれるのだと豪語する。重六はでっけえ事ぬかし

やがると信用しないが、庄次郎は大船に乗ったつも

りで任して欲しいと自信を持って話す。その時庄兵エ

は外で物音を聞き、外に誰かいる事を告げる。

 

   重六「来やがったな!」

 

 外には虎の人形があった。重六は走り虎を探し心

の中で「何処だ!何処にいやがる?」と問うた。

 

 虎と死神が現れた。バットを持った虎は、走って近付

いてくる。

 

  「来い」と挑発する重六は、火の玉鉄球を構え、獲

物虎が至近距離に来るのを見て、玉を投げた。

 

 虎はバットで鮮やかに玉を打ち返し、重六の顔面に

命中させて殺害する。

 

 松は大きな藁人形を作り鉄砲の実験をしていた。正八

とおていは懐疑的だ。松は重六の球は十五、六間の飛

距離なのでそれ以上飛べば負けないと分析する。巨大

竹筒の銃を発射するが藁人形に当たらなかった。

 

 死神が現れ、闇の重六は虎が仕置したこと、かねみ兄

弟は神目にいると知らせる。

 

 絵草子屋では鉄・主水・松・正八・おていが語り合う。

 

   鉄「そうか、虎が殺ったか!ハハハハ!」

 

   おてい「大した人だね。あの化け物みたいなの、どう

       やって殺ったのかしら?」

 

   松「かねみ屋の野郎!手古摺らせやがる。小梅なら

     一跨ぎだ。行こうぜ。」

 

  主水はかねみ屋が今奉行所のお尋ね者で捕縛しなか

たら、首が飛んでしまうと危機感を語る。二足の草鞋を履

いているのはお前の勝手で知ったことかと松が突き放す

と、主水は小梅で人殺しがあり、岡っ引きがウヨウヨして

るんだと警告する。

 

   主水「真昼間から行ってみろ!『捕まえておくんなさ

      い』と頼んでるようなもんだぞ!」

 

   おてい「どうすんのよ?」

 

   主水「俺に任せろ!」

 

 主水は巧い事を言って暮六つ迄に岡っ引きを引き上げ

させてそれから迎えに行くと約束して立ち去る。

 

  夕焼けが鉄の家の障子に映えた。主の鉄は寝ていた。

 

  松が怒って入室する。

 

   己代松「鉄。起きろよ。念仏。八丁堀が裏切りやがっ

        た!半月前に小梅に人殺しがあったなんて

        嘘っぱちだよ。あの野郎!あれからすぐ五十

        人捕方連れてかねみ屋兄弟召し捕りやがっ

        た。嘘だと思うんなら、南町覗いてみな。昼

        行燈が手柄立てたって言うんでその話で持ち

        切りだぜ。大した野郎だよ。どうもおかしいと

        思ったんだよな!」

  

  中村家では主水の手柄を妻りつ・姑せんが絶賛する。

 

  記録を書くせんは、主水から五十人の配下を率いて賊二

人を召し捕ったことを聞かされ、二人では面白くないので賊の

数は五十人にしましょうと水増しして書く。

 りつはお手柄で御手当があがるでしょうと期待し、せんが

注意するが、主水は奉行はケチですからと懐疑的に答える。

 せんは、りつが一両のへそくりをやっと貯めたのに、小遣

いの額の引き上げを要求するのはけしからんと叱り、りつは

母上が糠味噌の中に一両二分隠されていると指摘する。

 

   せん「一両三分でございます。」

 

 己代松の「ごめんください」の声が響く。りつは奉行所から

のお使いの方と知らせる。せんは正装するように主水に勧

める。

 主水が玄関に現れ一礼すると、松であった。

 

 

   己代松「用件は分かってるな。ちょいと面貸しな!」

 

 主水は無言で歩む松の後ろから語りかけ謝る。

 

   主水「おめえ達を騙したのは悪かった。だが悪気は無

       かったんだ。伝馬町の牢なら俺は鼠の穴迄知っ

      てるぜ。小梅みてえなだだっ広い所で殺るより、よ

      っぽど仕事は楽じゃねえのか?ええ?」

 

 
 念仏の鉄・おていが待つ場に、松は主水を案内する。

 

   主水「よ、松には事情話した。子供じゃあるめえし

       おめえ達何か勘違いしてんじゃねえのか?」

 

  鉄は素早く動いて主水の両腕を捕え羽交い絞めにする。

松は主水の刀を奪う。鉄は主水を殴り倒し、肩の骨を外す。

激痛で主水は苦しむ。松が主水を蹴る。

 

   鉄「教えて貰おうじゃねえか。十万石の大名の懐に

     逃げ込んだ奴はどうやって料理するんだ?」

   

   主水「知らねえ」

   

   松「すっとぼけんじゃねえや!」

 

   主水「待ってくれ。俺は訳の分からねえことでおめえ

       達に殺される訳にはいかねえんだ。おてい、か

       ねみ屋は伝馬町に居ねえのか?」

 

 主水は激痛を堪えて這いながら事情解説をおていに頼む。

 

   おてい「あいつがどれだけばら撒いたかしらないけど、

        備後福山十万石アベ備中守っていう大名が

        奉行所に掛け合って兄弟共引き取っていった

        よ。」

 

   主水「何時だ、そりゃ?」

   

   おてい「一時程前だよ。」

 

    松「大した千両役者だぜ。見ねえ。この面」

 

    鉄「頭の良いてめえの事だ。はなからこうなる事を承知

      で町奉行所に貸を作るつもりでやったんだろう?ど

       っこい世の中そう甘くはねえんだ。上の奴は弱み

       を握られるのを嫌うもんだし、俺達は裏切られるの

       が何より我慢ならねえんだ。死んで貰うぜ。」

tetu mondo

 

   鉄は主水の刀を抜く。

 

   松「おいおい、俺に殺らせろ!」

 

   鉄「こいつとは古い馴染みだ。殺るのは俺しかいねえよ。」

 

  倒れた主水の前におていが立つ。

 

   鉄「どけ!牝!」

 

   おてい「二人共いい年しやがって。銭にもならない殺しや

        たって、しょうがないだろ?もしかしたら、本当に

        しらなかったのかもしれないよ。」

 

  正八が来て、かねみ兄弟が福山藩の腕利き侍五人の警

固を受けて福山に旅立つことを知らせる。

 

   主水「俺も行くぜ。これは仕事だ。」

 

 鉄・松・おてい・正八が歩み出し、捨てられた主水は這い

ながら後を追う。

 

  追い付き立ち上がり何とか歩む力を取り戻した主水は

鉄に語る。

 

    主水「覚えてやがれ。てめえ必ず獄門台にかけて

        やる。」

 

 鉄が主水の肩を叩き、主水は激痛にうめく。主水の肩を

鉄が治す。

 

   鉄「痛かったろ、ごめんよ。大体てめえが役所勤め

     なんかしてるからいけねえんだ。これを機会に

     辞めろ!」

 

   主水「そうはいかねえや。俺はてめえ達と違って

       一番安全な所で仕事してんだ。俺はヨレヨ

       レになっても奉行所は辞めねえぞ!」

 

  福山藩下屋敷。

 

 警固の侍に守られ移動するかねみ兄弟に、塀の上

から巨大竹鉄砲を持った松が威嚇する。

 

    松「そこで止まって貰おうか!動くんじゃねえや」

 

  庄次郎が恐れ、庄兵エはこけおどしと竹鉄砲を評価

する。

 

    松「じゃ試してみるか?」

   

 松は三つ数えたらぶっ放すと宣言する。

 

    「一つ!二つ!三つ!」

 

 竹鉄砲が発射する。弾丸はそれ、松の姿は見えない。

侍達は塀の外に落ちた松を追い、門内に入るが、正八

が仕掛けた落とし穴に陥る。松・正八は逃げる。

 

 庄兵エは背後に控える主水の殺気に気付き、斬りか

かるが、逆襲に遭い、斬られる。

 

  震える庄次郎のもとに女装した鉄が現れる。

 

   鉄「かねみ屋さん。美人丹のおかげで身体は

     ガタガタ。手足は痺れるし髪の毛は抜ける

     し。」

 

 逃げる庄次郎を捕え、鉄は骨外しで仕置きし、庄

次郎の死体のカッと見開いた目を閉じる。

 

  ナレーター「そして又傾動の日がやってきた。」

 

  鉄はおしまと遊ぶ。おしまは傾動の日なら来るが

 ふだんはちっとも来ないと叱る。「忙しくてな」と語る

鉄は、おしまは別の女郎との浮気を指摘され怖がる。

 

 おしまは「良い物見せてあげよ」と櫛を取りだす。

 

   おしま「死んだ妹の。髪は女の命って言うけど、

        妹のは黒くて本当に綺麗だった。けど

        死んだ時はカサカサに抜けてしまって

        さ。美人丹なんか飲まなけりゃ良かった

        んだ!」

 

   鉄「美人丹?」

 

   おしま「知ってんのかい?」

 

   鉄「いや」

 

   おしま「血の道に効くからって言うから妹は飲んだ

        んだ。十七の頃にこれから花も実も咲こう

       って時だってのに。妹は首をくくって死んだん

       だ。」

 

  おしまは最愛の妹を亡くした悲しみを語るが、仇は

取ったと喜ぶ。鉄は「なんて言った」と問う。

 

   おしま「仇は取ってやったと言ったのさ。仕置人に

        頼んでね。亥年生まれの女は執念深いか

        ら。もしあたしを捨てたりしたら・・・・・・」

 

   鉄「仕置人か!」

 

   おしま「そうとも、すぐに頼んじゃうから、覚悟

        しときなよ!」

 

 

 念仏の鉄は、恐れおののき、震え怖がる。

 

  ☆☆☆馴染みの仕置人☆☆☆

 

 『新必殺仕置人』「裏切無用」は、テレビ「必殺シリー

ズ」全史の中の一大傑作の一本である。日本テレビド

ラマの全歴史の中においても、永遠傑作の一本であ

ると自分は思う。

 

 野上龍雄の脚本は完璧である。傾動の日の女郎

達の休息。その日に鮮やかに逢引をする鉄とおしま

の仲の良さ。だが鉄は偶然かねみ庄兵エの文吉殺し

を目撃し、これがドラマ全体の基盤となって行く。

 主水は賄賂を石部に怒られる。かねみ兄弟が美人

丹と称する贋薬で儲け、飲んだ客たちは薬害で苦しみ

命を絶った人も居た。

 

 寅の会では標的の闇の重六に潜入され、虎の命

が狙われる。重六・かねみ兄弟を追う主水は手柄を

譲って石部に賄賂を許してもらおうとして快諾しても

らう。

 

 真面目な石部が手柄を立てようとして、重六の

鉄球に殺されるシーンは衝撃的である。

 

 名和宏・五味龍太郎・伊達三郎の三大悪役の凄み

が光っている。亀石征一郎の善人役も貴重だ。

 

 酒井哲の与力に怒鳴られ平伏謝罪する主水。

 

 高坂光幸監督は蝋燭の炎を映し、主水の不安と

対応させる。

 

 虎と重六がバットと鉄球で激突合戦をするという

ドラマに驚嘆した。名和宏が投げる球を藤村富美男

が打つ。まさに夢の対決である。虎が玉を打ち返し

て重六を殺害するが、このシーンの藤村の打撃の

演技は迫力豊かである。虎の元締めの貫録を感じ

た。

 

  中村家ではせんとりつが主水の手柄を喜ぶが

せんが記録を脚色するところに、鋭さがある。

 菅井きんの存在感・白木万里の粘りが強烈である。

 

 松の視線は厳しく怖い。この回の中村嘉葎雄のい

じめの演技は本当に怖い。

 

 念仏の鉄が中村主水を殴り倒し骨を外し、裏切りを

糾弾し刀を奪って殺害しようとする。

 

 『必殺仕置人』『新必殺仕置人』全史における鉄と

主水の物語のクライマックスである。かねみ兄弟を

捕え手柄を立て奉行所での保身を図る主水。鉄・

松・正八・おていは、アベ備中守に保護されたかね

み兄弟を仕置するのは無理になり、死神に命を狙

われる窮地に立った。

 

 裏切った主水を鉄は許す訳にはいかなくなる。

 

  鉄「頭の良いてめえの事だ。はなからこうなる事

    を承知で町奉行所に貸を作るつもりでやった

    んだろう?どっこい世の中そう甘くはねえんだ。

    上の奴は弱みを握られるのを嫌うもんだし、俺

    達は裏切られるのが何より我慢ならねえんだ。

死んで貰うぜ。」

 

  この言葉には、念仏の鉄の生き方の根本がある。

頭の良い仲間中村主水の生き方への洞察があるが、

同時に裏切りは殺し屋仲間にとって絶対に許されな

い事柄であると断固として示すという姿勢である。

 

 このシーンで鉄は主水を殴るが、山崎努は藤田まこ

とを本気で殴り出血させたものと思われる。藤田まこ

との鼻には血痕がある。

 

 演技を越えた演技と言うよりも、演技・芸に山崎努・

藤田まことを命の全てを挙げて取り組み、命の情熱

を燃やし、鉄・主水の命を生きている。

 

 松の「俺に殺らせろ」という言葉を否定し、鉄は自身

のいのちの道を語る。

 

   「こいつとは古い馴染みだ。

   殺るのは俺しかいねえよ。」

 

 念仏の鉄の言葉は、古い馴染み中村主水への感情が

燃えている。昔馴染みであるから、殺害するのは自分し

かいないという確認である。

 

 「こいつに惚れこんでいる」とか「男惚れに惚れぬいて

いて好きだ」と一言も言わない。

 

 念仏の鉄にとって、中村主水がかけがえのない友であり

唯一無二の友であることを、「殺るのは俺しかいねえよ」とい

う自己確認で明らかにする。

 

 おていの諌止に、「どけ、牝」という表現で激怒する鉄。

だがおていは鉄と松を宥め、主水の立場を思いやる。

 

 知らなかったこともあり、仕事に参加し裏切り謝罪を

する機会を貰う主水。傷ついた体で鉄に姿勢を語る。

 

   主水「覚えてやがれ。てめえ必ず獄門台にかけて

      やる。」

 

 主水にとっても、念仏の鉄がいかに大事な友であるか

ということは、「必ず獄門台にかけてやる。」という処刑

宣言で表明されるのである。二人の絆と友情と男どうし

の義は、互いに、「殺る」という表現で確かめ合われる。

 

 これが男と男の物語なのだ。

 

 松は実験を重ねた巨大竹鉄砲で侍達を脅すが、中

村嘉葎雄は、「ひとつ、ふたつ、みっつ」の台詞を凄ま

じい力で聞かせる。

 

 伊藤大輔監督作品で活躍した伊達三郎が壮絶な

迫力を殺陣で見せるが、手負いの主水に斬られるシ

ーンの哀感も素敵だ。藤田まことが傷ついた主水の

剣を重厚に見せてくれる。

 

 鉄がかねみ庄次郎の前に女装して現れ、薬害で

傷ついた女達の怨念を伝えて仕置きする。

 カネミ油症事件に対する野上龍雄の悲しみが窺

える。

   

 ラストでおしまが亡き妹の恨みをこめてかねみ

庄次郎の仕置を依頼したことを語り、鉄が震える。

 殺し屋が馴染みの女郎が頼み人と知り吃驚する

ドラマは鋭い。ここにも野上龍雄脚本の完璧な構成

を見る。

 

 森みつるの凄みは圧巻である。

 

 最終回「解散無用」で森みつるは、鉄の恋人の

女郎として出演する。辰蔵との死闘の後、傷を負

った鉄は馴染みの女郎と遊びそこに男の生き甲斐

を感じる。

 

  この女郎とおしまは同一人物であると自分は

思う。

   

 念仏の鉄は、おしまに「捨てたら仕置人に頼んで

仕置して殺すよ」と釘を刺された。それほど愛し抜い

てくれたおしまを恐れ愛し裏切らず感謝したのだ。

 

 鉄の義は、殺し屋馴染み主水・情婦おしまに対

して、「殺る」「仕置人に頼んじゃうから」という脅し

脅されることで燃え盛り、命を賭けるものとなった

のである。

 

 キャスト

                   

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(己代松)


 

 火野正平(正八)

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 河原崎建三(死神)

 

 名和宏(闇の重六)

 

 伊達三郎(金見庄兵エ)

 五味龍太郎(かねみ庄次郎)

 森みつる(おしま)

 

 藤村富美男(元締虎)

 

 北村光生(吉蔵)

 酒井哲(与力)

 日高久(宇平)
 

 黛康太郎(侍)

 吉田聖一(侍)

 東悦史(侍)

 岡田恵子(丘場所の女)

 

 瀬下和久(闇の俳諧師)

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 

 亀石征一郎(石部)

 

 菅井きん(中村せん)

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 


 スタッフ

 

 

 制作 山内久司(朝日放送)

    仲川利久(朝日放送)

    桜井洋三(松竹)

 

 

 脚本          野上龍雄
 

 音楽          平尾昌晃

 編曲          竜崎孝路

 

 撮影          石原興

 製作主任       渡辺寿男

 

 美術          川村鬼世志

 照明          中島利男

 録音          木村清次郎

 調音          本田文人 

 編集          園井弘一

 

 助監督        松永彦一 

 装飾         玉井憲一

 記録         杉山栄理子

 進行         黒田満重

 特技         宍戸大全

 

 装置          新映美術工芸

 床山結髪       八木かつら

 衣装          松竹衣裳

 小道具         高津商会

 現像          東洋現像所

 

 制作補         佐生哲雄

 振付           藤間勘眞次

 殺陣           美山晋八

               布目真爾

 題字           糸見渓南

 

 ナレーター       芥川隆行

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 予告編ナレーター   野島一郎

 

 主題歌          あかね雲

 作曲           平尾昌晃

 編曲           竜崎孝路

 唄             川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 監督           高坂光幸


 

 制作協力        京都映画株式会社

 

 制作            朝日放送

                松竹株式会社

 

 

 ☆☆

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 

 中村嘉葎雄=中村賀津雄

 

 

 二瓶康一→火野正平

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 名和宏=名和広

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 

 山崎努=山﨑努

 

 

 ☆☆

 早坂暁・野島一郎はノークレジット

 本編内傾動についてのナレーションは、酒井哲

 の声と思われる。

 ☆☆

 「己代松」の表記は本編字幕に依った

 ☆☆

 

 (画像・台詞出典

  『新必殺仕置人』DVD vol.2)

 

 

                              南無阿弥陀仏