オール・ノット ~ しがみ続け ~ 性加害行為 | 愛唱会ジャーナル

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柚木麻子/著「オール・ノット」(講談社 2023.4)を読んだ。版元の内容紹介は次の通り:

 

苦学生の真央がスーパーマーケットの試食販売で出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残りで、なんでも売れる噓つきのおばさんだった。彼女が託した宝石箱が、真央の人生を変えていき…。

 

読みにくい本だった。少なからぬ人物が入れ替わり立ち代り登場し、それぞれが一人称で述べられていくので読み手の頭の切り替えが追い付かない。途中から惰性で読み続けた。放り出さなかったのは、主たる役者の行く末を確かめたい気持ちがあったからだ。

 

読みにくさと表裏の関係にあるが、表題の「オール・ノット」に始まり、耳慣れない“片仮名語”が多かった: ギンガムチェック、シリアル・バー、アフタヌーンティー、ドールハウス、スノードーム、ガレット・デ・ロワ、ファージョン、サムネイル、プロデュース、ギャルソン、リノベーション、、、。

 

ローマ字略語も苦手だ: GU、SNS,AR、、、。

 

現代社会人の常識なのかな。勉強になると前向きに受け止めよう。

 

読みにくさには、著者独特の言い回しが与っているかも知れない。

 

例えば、 “会社にしがみ続けた”( p.234)とあるところ、さらっと読み過ぎそうになって、つんのめるように停止した。解ったようで解らないような記述に、暫し頭をひねる。

 

“しがむ”という動詞を検索すると、西日本の方で“よく咀嚼する”ことを意味するとのことだ。しかし、これでは文意が通らない。

 

常識的に、“会社にしがみ付き続けた”が正解だろうと思う。“つ”の音がつづくところで入力の指先が走ったものだろうか。

 

揚げ足取りになったようだが、印象強いため記録に留める。

 

内容的に印象に残ったことの一つは、二十年以上前の画家による少女モデルへの性加害行為(訴訟では加害者側の勝利、後年見直しの声と複数被害者の名乗り出)が緊張感を盛り上げていることである。

 

言うまでも無く、近時社会的に関心を呼んでいる芸能プロダクションでの数十年に亘った性的虐待事件を連想させる。

 

事件がマスコミを騒がせる前の著作であるとすれば、その絶妙なタイミングに著者の特別な才能を想像する。