じっと 見つめられる
普通、人は会話をする際には、相手の顔をそうそう、じっと見つめたりはしない。が、私はじっと見つめられる時が多いのである。 かつてイギリス人女性に英会話を習っていた時に、と言っても行政の催しで廉価で多人数で習っていたのだけど、その彼女が日本で嫌な経験はと問われて、じろじろ見られることだと言っていた事を思い出す。彼女は白人なので、白い肌に目はブルーで、失礼ながら初対面の時には、私も思わず見入ってしまったものだったが。 私の場合は、見た目には日本人とそんなに違いは無いと思うのだが、私は出生地に近い所に住んでいるので、周囲の人たちは、私を韓国人だと知っているので、どこか違うと思うのだろうか、やたら私の顔を眺めるのである。 今は韓流がブームなので、若い人たちは、韓国人をどのように受け止めているのかよくは分からないが、かつては韓国人はえらの張った四角い顔の様に思われていて、女性の場合は肌が白い、というのがステレオタイプな見方だった。 今朝もあまり親しくない近所の女性に出会って挨拶をしたが、彼女はまじまじと私の顔を眺めるのだった。何も悪気は無いようで、自然にどこか自分たち日本人との違いがあるのかいな、という風だった。 考えてみると、物心ついた小学低学年の頃から、私は他人からしょっちゅう見つめられて来たのだなと実感する。 高校生一年生の時の話だが、同級生の女の子と二人で喫茶店に入ったことが有ったが、先頭だった私は何も考えずに店の隅っこの席に腰を下ろしたが、テーブルを挟んで座った彼女が、ニコッとしながら優し気に、私にこう言ったのである。「○○さん、心配いらないわよ、大体の日本人は隅っこの席が好きなので、ここを選んだあなたは、日本人に見えるわよ」 私は、あんぐりと口を開いて二の句が告げなかったものである。私が韓国人だと彼女は知っていたし、そして韓国人だということは隠すべき事実だと思っていたのでもあるのだ。 どこをどう回って噂が広まって行くのかは分からないが、小中学校の同級生は私の出自を知ってはいたが、もう早々と、高校の新入生の中では、私が韓国人だと知れ渡っているのだった。こんな噂の早いことには本当に驚いてしまう。 在日一世たちは、明らかに日本人には見えなかったが、最近つくづく思うのだが、やはり私も日本人とは少し異なった風貌をしているかも知れないということである。段々亡き母に似て来るのだが、やはり韓国人の顔かたちが、くっきり出て来ているようにも思えるのだ。まあ、血統的には純粋の韓国人だから当たり前の話ではあるが。 見つめる人に「目は二つに鼻と口は一つずつですが、何か不審な点はありますか?」って、心の中では返しているけれどね。