時々、遠慮がちにラインが届く。どうやら返信が欲しいのらしいが、何と送って良いのか分からなくて、適当なスタンプを送ったりする場合が多い。

 

 現在は高齢者の殆どがスマホを持っているが、案外使いこなせてはいない。みんな、ペイペイで支払ったり、ラインを送り合うことに憧れてはいるが、なかなか難しいようである。特にラインはアプリを入れて始めるまでは行けるが、その後に問題がある。ラインを送りあう相手がいないのである。

 で、知り合いになると「時々ラインを送ってほしい」と頼まれるが、送るほどの用件は無いので、放っておくと、先方から遠慮がちのラインがやって来るという次第である。

 

 私は介護の仕事をしていたが、属する事務所では連絡はラインでしていて、周りの若い人たちが実に多彩なスタンプを駆使するので、ついついスタンプをこちらも沢山使うようになった。おまけにライン経由で買い物をすると、ラインポイントが貯まるので、そのポイントで新たにスタンプを仕入れるので、段々スタンプが増えて行った。又、知人の台湾人が中国語バージョンのスタンプを送って来るので、こちらも中国語バージョンのスタンプを買って送っているし、他に韓国語バージョンと英語バージョンも持っていて、いつの間にか沢山のスタンプを所有してしまった。

 

 それを私の悪い癖で、さも物知り風に送るものだから、私のラインを珍しがる人は何人かいて、ラインでの返事を欲しがってくれるのである。自分の撒いた種ではあるが、そうかと言って返信にはさすがに気苦労を伴なう。

 

 いかにも覚えたてみたいに、写真を送ってくれたり動画を送ってくれたりと、何だか努力の跡が見えるようなラインを見ていると、ほっこりはするが、通り一遍の返事とスタンプを送るだけである。

 

 介護の仕事柄大勢の高齢者と触れ合ったが、皆寂しい、のである。施設にいても自宅にいても、たとえ家族がいても寂しいのだ。

 現役を退いて、子供たちは巣立ち、友は一人欠け二人欠け、身体は痛みがちである。人生の先は短く、心弾む出来事は日ごとに少なくなって来る。その割には、思い悩むことは多い。

 

 昨夜届いたライン動画の返事を今朝ようやく送ったが、何だか気持ちを絞りきった感がある。その動画は花火の景色で、にぎやかな花火だが、何だか夜空に寂しく感じて、送ってくれた人の孤独を感じたからだった。