人権と民主主義のヒューマニズムを掲げる日米欧の自由民主主義諸国が、人間よりもマネー中心の社会になる原因を考える。
前回は
<リンク>現状の認識(真理)を歪ませる国際金融軍事権力によるマインドコントロール
にてマネーの管理者に支配される社会へと誘導される民主主義の説明をおこなった。
(下記の図②の項目)
今回は、下記の図の民主主義の目標を実現させるための「手段と方向性」についてお伝えする。
結論から先に言うと、
・手段は普通選挙で民主主義の目標に沿った政治を選び続けること。その制度を改善すること。
・方向性は、民主の原理(人間の尊厳という目標。現状の認識という真理。選挙に基づく民主制度から発生する諸権利)の結合から導かれる、真理、自由、平等、友愛のバランスをとり発展させること
まずは手段から解説する。
「誰もが支配されない社会の実現」という近代民主主義の目標が意識化されており、その目標に照らし合わせた「支配、被支配」の現状の認識を持っていても、必ずしもその目標に向けて改善されていくとは限らない。
わかりやすい例が20世紀において誕生した旧ソ連などの一党独裁型社会主義である。
1917年に発生したロシア革命は、誰もが支配されない社会、搾取のない社会の実現を目指した革命だった。
アメリカ独立革命やフランス革命のようなブルジョワ(富裕商人)革命で、封建制や君主制の身分制の打破は実現した。
誰もが支配されない社会を実現したかに見えたが、その後、大商人たちによる新たな支配が始まっていく。
資本主義の発達とともに大規模化した、雇う側の資本家・経営者と、雇われる側の労働者という支配、被支配関係である。
こうした資本主義の発展により発生した新たなる支配関係を打破するためにロシア革命は起こされた。(ロシアは巨大な農業国家だったが革命のスローガンが、全ての搾取的支配からの解放であった)。
つまり近代民主主義の目標も、現状の支配関係も革命家たちには認識されていたのである。
ところが、目標を実現させるための手段が、選挙制度の否定と、労働者独裁という名のソ連共産党による一党独裁体制だった。
西側の選挙など金持ちの資本力によっていくらでも操作できるペテン民主主義だと思っていたのである。(実際そのとおりなのが現在の民主主義の問題)
労働者政党であるソ連共産党の一党独裁体制で、誰もが搾取されない社会のを実現させようとしたが、その結果は以下の図のとおり。
選挙制度という国民主権を実現する手段をシステムに組み込まなかったので、単なる官僚独裁、党独裁になってしまった。
国民の声は政治に反映されにくくなり、政治は人権を抑圧する強権体質となった。
その結果、自由を求める市民の手で旧東側諸国の支配体制は終焉を迎える。
現在一党独裁体制型で残っているのは、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバなど数カ国のみ。
一方で、欧米日などの西側諸国は、普通選挙制度を発展させ、社会体制を現在も維持している。
国民主権を守るための手段として、選挙に基づく民主主義が必要であることは一党独裁社会主義の失敗や経験で明らかになった。
ところが、勝利したはずの自由民主主義諸国も現在、大きな曲がり角に陥っている。
その理由は以下のとおり。
それでは目標を意識化し、現状認識も理解し、選挙制度という手段を取り入れていれば、下記のように目標にまっすぐむかえるだろうか?
残念ながら現状は以下のようになるケースが続いている。
その原因の一つは、選挙制度の有効性の問題にある。
例え民主主義を取り入れていても小選挙区制度のように1人しか当選しないシステムでは、マスメディアや巨大利権に影響を与えられるスーパーパワーが圧倒的に有利になる。
そのような小選挙区制では、行き着く先は2大政党制である。
2大政党制は選択肢が2つしかないため、民主主義が機能不全に陥りやすくなる。
2党とも特定の勢力に支配されれば、国民は選択肢が無くなり、民主主義は機能しなくなってしまう。
現在の日米欧の国々で起こっているのは、選挙制度が国民の声を的確に反映せず、国際金融軍事権力のようなスーパーパワーの支援を受ける政治が勝ち続ける状況だ。
選挙制度を国民の声が的確に反映される制度に改善していかなくてはならない。
そうでなければ、国民は誰を選んでも同じと思うようになり、ますます政治に無関心になってしまう。(2月に行われた埼玉県川口市の投票率は13%と過去最低!)
小選挙区制度を止めて、完全比例代表制のような死票が極めて少ない制度に変更しなくてはならない。
1789年のフランス革命から150年間、人権宣言や幾多の革命があったにも関わらず、女性には参政権がなかった。
女性が参政権をフランスで得たのは1944年である。
国民主権の手段としての選挙制度の改善は、現在まで続く課題である。
手段としては、
・選挙で良い政治家を選び続ける。
・上記の事が実現しやすいように選挙制度を改善していく
この二つである。
【民主主義社会の方向性について】
選挙制度が目標とは違う方向に誘導される結果をもたらすもう一つの理由は民主主義の目指すべき方向性の問題である。
選挙制度で発生する諸権利は以下のとおり。
真理、自由、平等、友愛の諸権利は民主主義では必ず発生する。
それについて以下の記事を参考。
<参考リンク>国際金融権力によって、自由・平等・友愛の人権と民主主義を掲げる社会において人間と人民が消える理由
普通選挙がある以上この諸権利を無くすことはできないが、ある特定の権利を肥大化させ、他の権利を抑圧することはできる。
EU連合の父と呼ばれる哲学者クーデンホーフカレルギーは、
「友愛を伴わなければ、自由は無政府状態の混乱を招き、平等は暴政を招く。」
と述べた。
特定の権利の肥大化こそ、他の権利を抑圧する要因になる。
例えば自由を肥大化させれば、平等や友愛が抑圧される。
企業活動の自由を最大限推進する新自由主義は、貧富の格差、国家主権の侵害など、平等や友愛を抑圧している。平等を肥大化させれば、自由や友愛が抑圧される。
平等を実現させるために強権を用い、自由や友愛を抑圧した一党独裁型社会主義などはその典型である。
友愛が肥大化すれば、自由や平等が抑圧される。
民族主義や排外主義を強調したファシズムは、民族愛という友愛感情に基づいた社会運動である。
過剰な民族主義は他民族の自由や平等を抑圧した。
もう一つ民主主義で必然的に発生する権利である真理も肥大化すれば、自由や平等や友愛が抑圧される。
認識能力や知的能力を過剰に重視するエリート主義がその典型である。
そうなると、騙される人間や能力に劣る人間が悪い、という社会を作り出す。
また、4つの権利から発生する基本的人権などの諸権利は、個々でばらばらだと、権力や個人の都合の良いように解釈されてしまう。
例えば、所有権の絶対不可侵性や企業活動の自由を強調することで生じる貧富の格差などの問題はその典型である。
基本的人権が基本的人権を侵害することに恣意的に使われてしまう状況が起こりやすくなるのである。
枝葉末節になり方向性を間違えないようにするには、民主の原理に立ち返らなければならない。
・自由・平等・友愛の個々の権利ではなく、人間の尊厳(人は生まれながらに自由で平等である)の実現を意識化する。
誰もが支配されない社会という目標には、自由、平等、友愛の結合が反映されている。
・目標からみた、現状認識を意識化する。
目標を定義することで、現状認識という「真理」の範囲も限定することが可能になる。
真理とは「本当のこと」という意味であり、どのような種類の「本当のこと」が必要とされているのかが定義されなけれなばらならない。
芸能人のゴシップが必要とされているのではなく、誰もが支配されない社会という目標を実現するために必要な情報が民主の原理の真理となる。
・普通選挙制度という目標を実現するための手段の諸権利を意識化する
国民主権を担保する普通選挙制度から必然的に発生する、真理、自由、平等、友愛の権利を意識化する。
以上を総合すると、民主主義の目標、現状認識、選挙という手段の諸権利の結合から、真理、自由、平等、友愛の相互発展・相互規制のバランスと発展の方向性が導かれる。
以上が、目標・現状・手段を結合することで発生してくる基本的人権の拡大であり、民主の原理に基づいた発展の方向性である。
この概念は選挙制度に限定されたものではなく、日常の社会状態において活用される権利の発展形態となる。
例えば、インターネットの情報革命などはその典型である。
ネット以前はマスメディア以外から情報を得る手段は限定されていた。
ネットの情報革命以降は、マスメディア以外にも情報を得る手段は格段に増えた。
ネット文化の発展はマスメディアを支配することによって社会操作を思いのままにしてきた国際金融軍事権力の操作力を低減させている。
戦争を実行できた911同時多発テロやイラク戦争と、戦争ができなかったシリア問題の違いは、ネットの影響力の拡大により、マスメディアの扇動では世論操作がしにくくなったことの表れである。
市民の社会的な真理が発展したのだ。
以上のように選挙制度のみならず定常的な社会状態においても、真理・自由・平等・友愛の発展の方向性は、民主の目標の達成のために必要なことなのである。
民主主義に目標を設定し、そこから発生してくる原理を意識化することで、真の民主主義を実現する方向性を導きだすことが可能となる。
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