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<リンク>民主主義の目標を無意識化させることの重大な弊害。手段(選挙)の目的化と、国際金融軍事権力の操作
では、民主主義の目標を無意識化させることで、国際金融軍事権力の社会操作が容易になることについてお伝えした。
今回は、上図②の社会「現状認識」を行う真理の意識化の必要性と、その歪みをもたらしている国際金融権力のマインドコントロールについて解説する。
人権に基づく民主主義の目標は、人間の尊厳の実現であり、フランス国家のスローガンにもなっている自由、平等、友愛の理念の実現である。
【全ての国民は(友愛)生まれながらにして「自由」で「平等」である。】
誰もが支配されない社会の実現を意識化することは、自由、平等、友愛を意識化することになる。
目標を意識化することで「縦軸の目標」と「現状の認識」が発生する。
「現状の認識」が社会の状況を理解することであるなら、必要になる概念は「真理」となる。
マネーの権力者の同調者である体制内与党や新自由主義勢力が、「誰もが支配されない社会」という民主主義の目標を無意識化するのは当然のことだ。
それでは世の中の搾取構造を批判する左派はどうなのか?
一部の左派には目標は明確に意識化されている。
しかし目標を意識化しても現状認識が誤っていれば、目標の実現に対して適切な対策を取りにくくなる。
その典型が、従来の左翼理論にみてとれる。
従来のマルクス主義などに基づく左翼理論には、通貨発行権の独占とその社会操作についてはほとんど問題視せず、経営者と労働者の対立を重視していた。
不況になる原因を資本主義の構造的な景気循環と考え、通貨発行権を独占する国際金融軍事権力の意図的な景気操作と考えることは殆どなかった。
資本主義の好不況、バブルや世界恐慌を、資本主義のシステムに宿命的な自然現象として捉えるのである。
経済変動を自然現象として解釈するという点では、対立している古典派経済学と同じである。むしろ、フリードマンなどの自由主義に立脚する経済学者の方が、世界恐慌の責任はFRBの通貨政策の人為的問題であったと、指摘していたくらいだ。
景気を人為的に操作する能力を持つ国際銀行家にとって、マルクスの共産主義理論に基づく野党は、野党でいるあいだは都合のよい存在であった。
いくらマルクス主義の野党が日常的に活動をし啓蒙しても、通貨発行権の問題に触れることは殆どない。
与党も野党も触れない問題は、その社会から無意識化される。
無意識化された対象は分析することが出来なくなり、空気と同じように存在はするが見えないものとなる。
もちろん自由民主主義では、国際金融財閥の支配権力を脅かす本当の左翼(旧社会党のようにエセ左翼ではない)には、与党になり権力を取られては困るので、万年野党でいてもらう。
(ダメな場合はチリのアジェンデ政権のようにクーデターなどで転覆するケースも)
自由民主主義を操作する銀行家にとって左派が野党でいる間は、保守派や自由主義の暴走を抑える社会のバランスを取る役割を果たしてくれる。
同時に通貨発行権の問題を無意識化させてくれる「都合の良い野党」だった。
当然、自由民主主義の与党たる保守派や自由主義者の信望する経済政治理論(ケインズ経済学、古典派、新古典派、リバータリアン、通貨問題を扱わない社会民主主義など)のほとんどは、国際金融軍事権力の都合の良い理論として利用されてきた。
保守派・自由主義派と左派、与党と野党が、国際金融軍事権力の社会操作から無意識化されている状態が、日米欧の先進国で長期間にわたって続いてきた。
以下の図は、民主政治を操作する方法と、無意識化させる項目である。
上記の図で描かれている操作と無意識化のコントロールが可能なのは、通貨発行権を持つ銀行家集団によって、社会がマインドコントロールをかけられてきたからだ。
その最大の武器がマネーを無意識化させる経済学を作り出してきたことにある。
景気変動を自らが起こせるならば、自由市場と私有財産に基づく資本主義経済で負けることはない。株式市場や投機的取引を中心に、自由競争の名のもとで富を独占していくことができる。
資本主義経済の操作方法については下記の図を参照。
経済学をもちいてマネーを無意識化させることで、経済変動の原因をわかりにくくさせてきた。
その証拠は、自由民主主義の国民の殆どがマネーがどのようにして作られ、無くなるか知らないという事実であり、FRBの株主が非公開であり、政府が通貨を作らずに借金をすることを当然とする社会システムである。
操作される資本主義経済の図の説明はここでは省略する。
詳しく知りたい方は
リチャード・ヴェルナー「謎解き平成大不況 PHP出版」か、
以下の動画を参考。
<参考動画リンク>
⑭ー⑤ サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 天野統康 「政府が借金する理由」 2013年2月3日
⑭ー⑥ サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 天野統康 「資本主義経済の発展の説明」 2013年2月3日
⑭ー⑦ サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 天野統康 「操作される資本主義経済の構造」2013年2月3日
以下のようにアカデミニズムとマスコミ支配を通じて、通貨発行権やマネーに対する知識を無意識化させることで、操作される自由民主主義が形成されてきたのである。
本当の権力に右派も左派も目を塞がれてきた以上、「現状の認識」におおきな歪みが生じるのは必然となる。
主流の政治経済学では、アメリカの支配的影響力は認識できても、その上に君臨するFRBの株主たちについては、分析がされることは殆ど無かった。
真理が無意識化されていく「現状認識の歪み」は、ほうっておくと以下のような害悪を社会にもたらすことになる。
民主政治の名のもとで、偽りの原因により他国と戦争を行うようになるのである。
これはアメリカの例だが、日本で言えば、この20年の構造改革は外国資本に日本の国富を売り渡すための売国的政策の連続だった。
今もTPPや国家戦略特区などの新自由主義的構造改革を支持し続けている世論がある。
まさに「現状の認識」の歪みがもたらした惨状である。
その結果、社会は以下のようになる。
以上のように、例え人間の尊厳の実現という目標を意識化していたとしても、「現状の認識」が歪み、真理が無意識化されていれば、目標の実現から遠のいてしまう。
歴史的にもっとも民主の目標を意識化しているフランスや米国のような元祖民主主義の諸国家が、ECBやFRBに代表される金融権力の支配を自発的に受け入れている背景には、この「現状認識の大きな歪み」が存在するのである。
この状況を改善するには、「真理」を意識化することである。
社会は本当にどのような状況なのか?
権威ではなく、真理に価値をおき、常に現実に合わせて修正をしていく習慣をつけることである。
しかし、目標と現状が意識化されたとしても、その目標を実現させるための「手段と方向性」の問題が残る。
手段としての選挙制度を否定したファシズムや一党独裁型社会主義で、人類
は悲惨な状況を味わった。
また宗教原理主義や伝統原理主義に回帰するのも非現実的である。
民主の目標を実現するための「手段と方向性」については次回解説する。
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<リンク 政治経済思想理論>国際金融権力によって、自由・平等・友愛の人権と民主主義を掲げる社会において人間と人民が消える理由