書店に立ち寄る回数が減ったせいで、新しい作家の登場をうっかり見逃したまま……そんなことが、この数年で増えた気がする。上田岳弘もその一人だった。先日、ふと手に取った「ブルータス 文芸誌バージョン」。何篇かつまみ読みするつもりでページをめくっていたら、『昨日だった気がする』に出会った。気づけば、目が止まらない。流れるように読み進め、勢いのままKindleで芥川賞受賞作『ニムロッド』(第160回)を購入していた。2019年に、こんな作品が世に出ていたとは。自分とほぼ同世代、作中に登場する作家や音楽への距離感も近い。それを差し引いても、この人は放っておけない──そんな確信に近いものが芽生えた。なんでこれまで誰も、上田岳弘のことを教えてくれなかったんだろう。




