ほんだながわり -9ページ目

ほんだながわり

「読んだり、観たり、行ったり」だけは、何だかやりっぱなしじゃいけないような気がしたもので…。

小学館がこの時代に満を持して創刊した文芸誌「GOAT」に掲載されていた小川哲さんの小説をオーディブルで聴く。ちなみに本誌はKindleで購入した。紙の文芸誌というこだわりへの冒涜のようにも感じられて、自分でもこの愉しみ方は合ってるのかどうか不安だけれど、とりあえず作品はとても面白かった。小学館、いい仕事しますね。

 

 

アルゼンチン出身の編集者アルベルト・マンゲルによるエッセイ集。マンゲルは高校生の頃、母国の偉大な作家で盲目でもあったボルヘスの読書係を務めていたこともあるそうだ。詩的な文体で綴られたこの本には、図書館にまつわる深い思索が詰まっていて、タイトルの通り、まるで“夜の図書館”で静かに時を過ごしているような、発見に満ちた読書体験が味わえた。

 

 

熊楠が主人公の歴史小説を読む。数か国語を操る、語学の天才。粘菌の研究で知られる、稀代の博物学者。天皇への進講を頼まれた際、標本を進献するのにキャラメル箱で渡したという逸話も有名だ。ただ、この小説に出てくる熊楠は、ずっと何かに苛まれているようだ。幼少の頃から頭の中でやかましく喚く声といい、世界と自分との間に、うまく接点を持てないまま、孤独と情熱のはざまで生きている。水木しげるによる「猫楠」では豪胆な感じで描かれていたエピソードも、見方によっては繊細の裏返しに感じられるし、これは相当にしんどかったに違いない。