☆第43話 星の存在《1.悠一のお気に入り》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

1.悠一のお気に入り

 

職場体験では予期せぬ問題がいろいろと起こったが、何とか2日間を乗り切ることができた。星の場合、2日目は初の入院患者体験となってしまったが・・・。バタバタしていたせいで、病院の先生にチェックしてもらう書類を渡しそびれてしまった。星は翌日の放課後、市立病院に電話を入れた。

 

「今から行ってもいいですか?」

と聞くと悠一が、

「夜、自宅に寄ってくれれば対応するぞ。」

と言ってくれた。

 

 

pm7:00悠一が帰宅して夜ごはんの支度をしていると、玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると、星が不安そうな顔をして立っていた。菓子折りを手渡して、

「昨日はお世話になりました。これ、ママからです。」

「悪いな、気を遣わせてしまって。」

 

悠一は星をリビングに招き入れた。

「熱は下がったか?」

「はい。もう大丈夫です。」

「もう一回、座薬入れとくか?」

悠一がからかうように言うと、星は慌てて首を振ってもう一度キッパリと、

「もう大丈夫です!」

と答えた。

 

星はカバンの中から書類を取り出すと、

「お願いします。」

とペコッと頭を下げて悠一に手渡した。落ち着かない様子でキョロキョロまわりを気にしているのは、空や海の存在を確認しているのだろう。

「書けるまでそこに座ってて。」

ソファを指さし、温かいココアを持って来てくれた。

 

そこに、チャイムの音を聞いて空と海が2階から下りて来た。

「えっ?星、どうした?」

空は驚いて尋ね、

「何でいるの?」

海はあからさまに不機嫌そうな態度でつぶやいた。

 

「オレが呼んだんだ。なあ星?」

「うん。」

ニコニコとうなずく星、その反応を嬉しそうに見ている悠一に対して、

“いつの間に、こんなに仲良くなったの?”

知らないうちに2人が親密な関係になっていて、ムカついた海は無言で自分の部屋に引き返した。

 

問題集を適当にカバンに放り込むと、再びドタバタと階段を駆け下りて来て、

「勉強してくる。」

と言って出て行こうとするのを、

「どこ行くんだ?」

と悠一に聞かれて、

「恒先生のとこ。」

悠一の返事を待たずに、海はバタンッとリビングのドアを閉めて飛び出して行った。

「まったく、あいつは・・・。」

 

もうすぐ高校受験を控えていて、塾に行っていない空と海は、

「いつでも勉強教えてやるからな。」

という恒の言葉に甘えて、夜や週末に恒の家にお邪魔することがあった。今の海の場合は、どう見ても勉強に行くのではなく、逃げ場を求めてという感じだが・・・。

 

 

悠一は海の気持ちはすべてお見通しだったが、わがままな海のことは無視して、星から渡された書類に目を通した。書き終わるのに10分ほど時間を要したが、その間、空と星は仲の良い兄弟のようにペチャクチャとおしゃべりをしていた。普段、家ではあまりしゃべらない空が、楽しそうに年下の星とじゃれ合っている様子を見て、悠一は微笑ましさを感じた。

 

悠一の耳に入ってきたのは、陸上部の話だった。ところどころに『舞衣』という名前が聞こえてきて、空はどうやら、部活での彼女の情報を星から聞き出しているようだった。部活を引退してからも練習には時々顔を出しているのだが、可愛らしい舞衣のことが心配でたまらないのだろう。

 

“最近彼女とうまくいっているのかどうか?”

空は自分からそんな話はしてこないし、悠一がいくら聞いたところではぐらかされるのは目に見えていたので、気になりつつも一切干渉していなかった。星と話しているニヤけた顔を見る限りでは、いい関係を保っているようだ。

 

もちろん『健全なおつき合い』でなければいけないのだが、その辺は過去に問題を起こしているので本人も自覚しているだろうし、悠一としては空を信じるしかない。

 

「空、おまえ受験生なんだから、あまりうつつを抜かすなよ。」

悠一が口を挟むと、

「分かってるよ。」

空は嫌そうに返事をすると、部活の話は中断し別の話題に切り替えた。

 

 

書類が完成し、悠一は星に

「夜ごはん、一緒に食べてくか?」

と聞くと、

「ママが用意してるから。」

と答えるのを聞いて、

 

「そうだ星。ずっと言おうと思ってたんだが、そのパパ、ママっていうのは、中学生なんだし、そろそろ卒業した方がいいんじゃないか?」

悠一にしては珍しく、星を傷つけないようにやんわりと言った。

 

「あっ・・・。」

星もいくらか気にはしていたようで、口に手を当てて、

「芳崎さんにも言われたんだった。」

「芳崎さん?」

空が聞き返すと、

「この間、学校の講習会に来た人だよ。」

「ああ。終わったあと、たかやんと仲良さそうに話してた人?」

「そっちじゃなくて、もう1人の方。えっと、元不良っぽい方。」

「ああ、あの人か。」

それで通じてしまうのか・・・。もっと別の表現、背が高い方とか若い方とか言いようがありそうだが。

 

「講習会って、12月にやってたヒップハートのか?」

悠一に聞かれて、

「はい。」

と星が答えると、

「星、ヒップハートと関係があるのか?」

「僕、あそこに通ってトレーニングと勉強を教えてもらってて。」

「そうだったのか。」

 

悠一は眞木野とは面識がなかったが、たかやんや恒から噂は聞いていた。

「空も海も、そういう場所で根性鍛え直してもらった方がいいのかもな。」

“高校生になったら・・・。”

と悠一はずっと考えていた。

 

「じゃあ星は、オレにケツ叩かれたのが初めてじゃなかったんだな?」

星は恥ずかしそうに小さい声で、

「うん。」

と答えた。

 

“眞木野さんは半端なく厳しいんじゃないか?トレーニングに関してもストイックだろうし、相当しぼられてそうだな。こんな星があそこで通用するのか?それともオレがまだ知らない芯の強さが、どこかに隠れているのか?”

悠一はますます星に興味を抱いた。そして今度、見学を兼ねてヒップハートを訪れてみようと思った。

 

「おまえ、兄ちゃんにケツ叩かれたのか?職場体験中に何やってんだよ?」

空に突っつかれて、

「ちょっとおばあちゃん追いかけてて・・・。」

「は?」

空は意味が分からず首を傾げると、

「星は人がいいからな。」

悠一は嬉しそうに星の頭をなでた。

 

空ならそんな風にされたら、必ずといっていいほど、照れくさくて悠一の手をサッと振り払うだろう。しかし星はニコニコとして、まるでワンコが飼い主さんになでられて尻尾を振っているような愛くるしさがあった。

 

空は悠一と星がこんなにも仲がいいのを見て、職場体験でおととい出会ったばかりなのに、しかもあの突拍子もない『果たし状』事件で印象的には最悪のはずなのに、

“何で兄ちゃん、こんなに星のことかわいがってるんだ?”

不思議でたまらなかった。

 

空から見てもいくらかやきもちを焼いてしまうような2人の関係を、海が知ったらどう思うか?

“きっと大騒ぎするに違いない。”

板挟み状態の空にとって、心配の種が増えてしまった。

 

 

空は星を途中まで送って行くと言うので、

「帰りに恒のところに寄って、海を連れて来てくれ。」

と悠一に頼まれた。星の家はここから学校を通り越して反対側にあるので、中間地点の正門まで送って行くことにした。星は悠一にお礼を言って、蓮ケ谷家をあとにした。

 

歩きながら空は、

「兄ちゃん、手加減しなかっただろ?」

実習中にお尻を叩かれてしまったという星に同情して尋ねると、

「うん。すごく痛かった。けど、ヒップハートの眞木野さんにはもっと厳しくされてるから、蓮ケ谷先生のは我慢できたよ。」

 

「眞木野さんて、そんなに強烈なのか?優しそうな感じの人だったけど。」

空は講習会中の眞木野の顔を思い浮かべた。何でも気軽に相談に乗ってくれそうな、穏やかな雰囲気を漂わせていた気がするが。

 

「あの人、見た目と本性がまるっきり違うんだ。心の中まで全部読みとられちゃうし、もし逆らったら二度と同じことを繰り返さないって思うくらい、とんでもないことになる。」

星が真顔で言うのを聞いて、

“世の中には、兄ちゃん、恒先生、たかやん、よわし以外にも、そんなに恐ろしいお尻を叩く人間が存在するのか・・・。”

背筋がゾクッとするのを感じた。

 

それと同時に、

“星って偉いよな。そんな厳しい人に立ち向かっているんだから。そんなヤバイところ、オレだったら1日で逃げ出していると思う。”

自分を頼ってくれるかわいい後輩に、見かけとはかけ離れた力強さを感じた。

 

それから学校に着くまで、星が今までにヒップハートで受けたおしおきの数々を披露した。多少大袈裟に話したせいか、その理不尽さに空は言葉を失った。

“ひょっとして眞木野っていう人は、オレが知ってる怖い人の中で最強かもしれない・・・。”

 

 

一方星は、大嫌いなはずの眞木野に対して、

“ちょっとひどく言い過ぎたかな・・・。でも眞木野さん、僕のこといじめるから。”

 

用事があって先週行けなかっただけなのに、ずいぶん長く会っていないような気がした。悪口めいたことをペラペラ並べ立てていたにも関わらず、あの空間にいる自分を誇らしく思い、次の予約日を待ち遠しく感じた。今、ほんの少しでも、

“眞木野さんに会いたいな。”

と思ってしまった自分を、次回のトレーニングで大いに悔やむことになるのだが・・・。

 

 

つづく

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