じゅんと私は
彼の元彼女であるレンのいた街を歩いた。
いつになく彼は多弁だった。
普段はあの子のことなんて話さないのに
話題は彼女のことばかり。
もう、この土地には足を入れることはない。
数年前、私とであった頃からそんな誓いを立てていた
・・・って話から
風景が変わったな、
とか
懐かしいとか。
彼とは高校からずっといた友だから
その彼女のことも知っているし
別れたときの前後や本気で泣いていた日も
私はそこにいたから知っている。
自転車で30分
毎日あきもせずに彼女を送り届けていたっけ。
私にも懐かしい。
そんな姿を私は
うらやましいと感じていたし
ほほえましく思っていた。
そんな2人が好きだったのかもしれない。
街の話をする彼は少し寂しげでどこか遠くを向いている。
話を聞いているだけで
彼が大好きだった彼女のことを思い出し・・・少しつらくなった。
「元彼女の家の近くを歩いてどう思う?」
藪から棒にそんなことを聞く私はセクハラサラリーマンよりひどい。
そんなこと聞きたかったわけじゃない。
ただ、他に言葉がなかった。
彼は
「不思議な感じだ・・・」
と一言。
そこには寂しさとは違う哀愁が漂っている。
おそらく昔感じた感情とは違い、好きだった人が意外と大切に思えなくなっている
今の気持ちに戸惑いにも似た感覚を覚えているのだろう。
私はそれ以上は聞かなかった。
けど、彼は語る。
「俺・・・あの子のこと好きだったんだなぁ・・・」
ただ沈黙が続いた。
(うん。。。知ってるよ・・・)
「ここさ、昔はお菓子屋だったんだぜ?今は道になってるけど」
「毎日レンを送ったよなぁ~」
(知ってる。あの子から散々聞いたもの)
彼が彼女と別れて6年、街は少しづつ変化する。
時代は思い出と共に流れゆくようだ。
レンは高校卒業後、
他に男をつくって彼の元を去った。
それなのに彼の中では淡い思い出だけが残る。
聞いていてつらい。
「好きだったんだ・・・好きだった」
そう語る彼の言葉に重みを感じた。
卒業したくないと思っていたけど
彼がレンを卒業したのだと言っているようにも聞こえる。
彼は彼女を卒業し、新しい彼女を大切にしている。
私にだってそれは感じる。
でも、思い出の中の彼女を大切に思っているのも事実。
私は、付き合いたい、付きって欲しい
そう想い、願い言葉にできない言葉をただ、抱えるだけで
私の高校生活は終わった。
彼とは違う
はじまりの場に立ったばかり。
多少変化はあるものの
今もその思いは変わらない。
私にも求められているものは卒業・・・なのかもしれない。
二人で
町をとぼとぼ歩く
片方は懐かしさと切なさ
片方は耳をふさぎたくなる想いを携えて。
私は後悔しないのだろうか?
枯れた想いにすがりつくようでなんだか嫌だ。
本当はあの子らがうまくいって欲しかった。
そんな矛盾を抱えときどきひどく癇癪を引き起こす私に優しい彼。
そんな姿が嫌いだ。
決断・・・か。
好きな人の住む街に
いつかもう二度と足を踏み入れたくないなんていう日が来るのだろうか?
今はまだ行ける。
でも彼の顔を見ている今はいけない。
今踏み込めば
泣いてしまいそうだから。。。
私はいけない。
いつか・・・
じゅんのように思い出になるのだろうか?
そんなこともあったねと
思い出に代わるその日まで耐えられるのだろうか?
彼女との思い出の地に足を踏み入れる・・・
それもまた勇気なのだろう。
彼はよくやった。
じゅんは
レンと別れてからよく言う言葉がある。
「別れるときはフラれてやる」
そのほうが悲しくないだろ?
と言う。
フル方にも勇気と決断する
悲しさがあるってことを
言いたかったけど・・・
彼の場合は
好きの絶頂だったのにフラれるというかたちだったから
私には何も言えない。
飽きるまで付き合うらしい。
こういうのは男同士の中では
カッコイイと思うのかもしれない。
フルよりもフラれる方がつらいと思っている
フル方が自分の気持ちは楽だと思っている
フラれるのはきつい
彼はそうレンから教わったと言う。
その役目を買って出ようという。
だけど彼は
「レン以外の人にはあまり心を動かされない・・・」
という面を持っていることも私は知っている。
知っている?
決断をする方も辛いの。