ある町の真ん中に

古びた町工場が一軒建っていた。

 

そこは小さな小さな工場で、

車を4台くらいしか置けない駐車場と

50坪くらいしかない土地の上に平屋建ての建物ひとつしかない。

駐車場はちょうど、表通りと裏通りの間にあって、反対側がよく見える。

工場周囲は朝晩は特に車通りが激しい。

 

朝から晩まで、

鋼を削っているらしく、

火花が散っているような音を鳴らしていた。

 

地域住民にしたらうるさくて仕方がないものの

最初からあったものだからなかなか文句も言えなかった。

 

最近この地は住宅事情で高等化する事が分かっていて

実際に住宅がドンドン増えていた。

工場をいやな目で見るモノも多い。

 

もともと、この工場住宅が並んでいたのだけど最近さらに密集してきている。

そのためか、この辺を通り抜ける車の数や人が半端じゃない。

 

工場周囲は車通りが激しい上、ひどく見通しが悪い。

ミラーがあるにはあるのだけど、もう20年以上も前のもので役所も管理しているのかどうか怪しい。

それなのに事故の数がないというのだから不思議である。

 

 

ある日、この町工場が閉じた。

住民の反対も前々からあり、

経営していたおじいちゃんが手を引いたのだ。

 

チャンスと言わんばかりに

この町工場のあった場所には

住宅が建った。

 

もともと、家、1、2軒分の土地しかないものだから

建った家もその程度。

 

だけど、

ここに家が建ったとたん、事故の数が急に増えた。

 

いつも、役所の方にはこのことの苦情が寄せられる。

 

「アノ町工場があった頃には・・・」

「あんなところに家を建てるから・・・」

 

だそう。

 

散々文句を言っていた町工場が神聖化されている。

 

事故がなかった原因

 

それは、

町工場の駐車場を通り抜けの道として利用していたから。

 

暗黙の了解で

歩きや自転車の人々は安全にその駐車場を通り抜けの道にしていたのだ。

夏休みが終わる頃、ミナトのカブトムシが死んだ。

ここ最近、動かなくなっていたのだが、終に動かなくなった。

 

「ねぇ、お母さん、カブトムシのお墓つくっていい?」

 

母に聞きき、玄関脇にある庭土にカブトムシを埋めた。

 

学校が始まり、数週間。

ある日、ミナトが学校から帰ってくると

そこには紫色をした小さな花が咲いていた。

 

「ねぇ、ねぇ、お母さん見て!見て!」

 

そういい、ミナトはうれしそうに母を連れ出し、花がを見せた。

きっとこれはカブトムシの生まれ変わりだ!彼はそう思いたかったのだろう。

 

「まぁ、良かったわね。きっとこれはカブトムシの花ね」

 

母は、ミナトの気持ちを汲んだのかそう答えた。

ミナトはうれしそうにこの花に水をやっている。

 

・・・・

 

一年の時が流れ、

また、その時期に同じ紫色の花が咲く。

決まった時期にカブトムシが帰り咲く庭。

 

ミナトは紫の花に水をやった。

あの日に、一緒にいたカブトムシを思い出して。

 

今日は母親が仕事の日。

ちょうど、ミナトが水をやっているとき母が帰ってた。

水をやるミナトに言った。

 

「ただいま。ミナト。そこ、雑草しかないのに何で水やってるの?」

雪がシンシンと降り積もるに積もった翌日。彼は生まれた。

 

「ごろごろごろ」

 

「ごろごろごろごろ」

 

まだ、あどけない少女と、父親の合作。雪だるまのタロウさん。

この地方は冬の時期が長く、なかなか雪だるまが消えない。

 

毎日毎日、少女はタロウさんのメイクアップに大忙し。

 

「目を作らなきゃ」

 

そういい、彼女はタロウさんの目を掘った。

鼻も掘るし、口も掘る。

 

雪だるまのタロウさんは人間の顔とは凹凸の位置が逆。

目も口も耳も鼻も凹んでいる。

 

いつの間にか、頭とどうだけだったタオルさんには手が付き耳が付き

ドンドン変化していった。

 

タロウさんは玄関に置かれ

冬の時期は彼女らを見守る番人になった。

 

でも、そんな彼との別れもいつかはやってくる。

その日、彼女はタロウさんを冷蔵庫の中に入れようとした。

でも、重たくて、どうしようもなくて。

手をこまねいて数日。

 

タロウさんは溶けて消えた。

 

少女は、タロウさんの跡地をぼんやりと眺めている。

父親はそんな少女を優しく、抱きかかえタロウさんの跡地を見て言った。

 

「ほら、芽が出てきているよ。春はもう来ているんだね」

 

と。