ある町の真ん中に

古びた町工場が一軒建っていた。

 

そこは小さな小さな工場で、

車を4台くらいしか置けない駐車場と

50坪くらいしかない土地の上に平屋建ての建物ひとつしかない。

駐車場はちょうど、表通りと裏通りの間にあって、反対側がよく見える。

工場周囲は朝晩は特に車通りが激しい。

 

朝から晩まで、

鋼を削っているらしく、

火花が散っているような音を鳴らしていた。

 

地域住民にしたらうるさくて仕方がないものの

最初からあったものだからなかなか文句も言えなかった。

 

最近この地は住宅事情で高等化する事が分かっていて

実際に住宅がドンドン増えていた。

工場をいやな目で見るモノも多い。

 

もともと、この工場住宅が並んでいたのだけど最近さらに密集してきている。

そのためか、この辺を通り抜ける車の数や人が半端じゃない。

 

工場周囲は車通りが激しい上、ひどく見通しが悪い。

ミラーがあるにはあるのだけど、もう20年以上も前のもので役所も管理しているのかどうか怪しい。

それなのに事故の数がないというのだから不思議である。

 

 

ある日、この町工場が閉じた。

住民の反対も前々からあり、

経営していたおじいちゃんが手を引いたのだ。

 

チャンスと言わんばかりに

この町工場のあった場所には

住宅が建った。

 

もともと、家、1、2軒分の土地しかないものだから

建った家もその程度。

 

だけど、

ここに家が建ったとたん、事故の数が急に増えた。

 

いつも、役所の方にはこのことの苦情が寄せられる。

 

「アノ町工場があった頃には・・・」

「あんなところに家を建てるから・・・」

 

だそう。

 

散々文句を言っていた町工場が神聖化されている。

 

事故がなかった原因

 

それは、

町工場の駐車場を通り抜けの道として利用していたから。

 

暗黙の了解で

歩きや自転車の人々は安全にその駐車場を通り抜けの道にしていたのだ。