カラーパープル@新宿ピカデリー | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 スピルバーグが1985年に手がけた映画『カラーパープル』が2005年にミュージカル化され、2015年版プロダクションは第70回トニー賞でミュージカル・リバイバル作品賞を受賞。今回はミュージカル版をベースとした映画化です。人種差別と男尊女卑なアメリカを描いているので、セクハラとパワハラとモラハラしか出てきません!

 

 奴隷解放から50年後のアメリカは、法律はともかくまだまだ差別が酷い時代です。白人>>>黒人男性>>>黒人女性というヒエラルキー。男たちは貧困から抜け出せない生活にイライラし、女たちを支配したがり自分の娘だろうが、未成年だろうが、嫁の妹だろうがお構いなしに種付けしようとするケダモノ。拒絶されようものなら銃をぶっ放す野蛮さ。生まれた子供は里子に出すわ、女たちが何か言い返せば即座にぶん殴るわ、さらには、理由不明で怒りスイッチがいきなりMAXになることも! 女たちは男のDVにすっかり洗脳され未だに奴隷状態。このあたりの描写、観ていて気分が悪くなります。そんな文化の中に生きているので、年寄りも若者も男尊女卑甚だしく、いかに女たちを飼いならすかが大切みたい。

 

 そんな中、自己主張をする女性が登場して徐々に変わってくるのですが、威張り散らしつつも男に性と媚を売るんだからかなり危険なすれすれの線を生きているのに違いはありません。ちょっと変わってきたかな?というヒロインも、そうそう簡単に洗脳が解けるわけではなく、自分が押さえつけられ暴力を受けてきたからと、息子に嫁を殴るように進言するなどすっかり狂ってます。これ、いじめられっ子がいじめっ子になるケースと似てません? でも、そこが人間臭いったら人間臭いところですけど! 息子の嫁は、結構自由人だったがゆえに、白人のあまりに失礼な言葉に反論しただけでリンチにあい、6年間も投獄、挙句の果てに失礼な言葉を浴びせた白人家庭でこき使われるというあまりの屈辱。強気だったキャラクターからすっかり廃人になってしまうほどの心理的ダメージに言葉もありませぬ。見ているこちらは血圧あがりまくりで血管ブチ切れそう。『ラ・マンチャの男』でも『ウェスト・サイド・ストーリー』でも集団レイプシーンが登場しますが、あれはダンスで表現しているので露骨な表現はありませんが、映画でリアルな虐待シーンとして見せられるとかなりこたえます。

 

 でも、そこは、ミュージカル。パワフルなナンバーが登場したり、リズムに乗って体がビートを刻み始めると、不屈の精神の方が大きくなって昇華。ストレートプレイじゃないのがありがたい作品です。そして、ブラック・ミュージカルならではのネットリとした声、パワフルな歌い上げ、激しいシャウトに「負けるな、頑張れ」と応援したくなってくるのでした。「黒人で、女で、ブサイク」と言われ続けて生きてきたセリーが「でも生きてる、私は美しい」と歌い上げる場面に感動。

 

 悪行を働きまくりな男たちは最後に改心(?)し、ヒロインに詫びを入れるのですが、ヒロインは復縁をきっぱり断りつつも「お友達でいましょう」って、そんな甘くて良いのか!?とビックリしてしまうのですが、「赦し」が最後に大きくクローズアップされるのはキリスト教の感覚ですかね。『レ・ミゼラブル』のバルジャンかいっ!

 

2023年製作/141分/G/アメリカ
原題:The Color Purple
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2024年2月9日

【スタッフ】
監督:ブリッツ・バザウーレ
製作:オプラ・ウィンフリー 
   スティーブン・スピルバーグ 
   スコット・サンダース 
   クインシー・ジョーンズ
製作総指揮:アリス・ウォーカー 
   レベッカ・ウォーカー 
   クリスティ・マコスコ・クリーガー 
   カーラ・ガーディニ 
   マーラ・ジェイコブス 
   アダム・フェル 
   コートニー・バレンティ 
   シーラ・ウォルコット 
   マイケル・ビューグ
原作:アリス・ウォーカー
原作ミュージカル:マーシャ・ノーマン
脚本:マーカス・ガードリー
撮影:ダン・ローストセン
美術:ポール・D・オースタベリー
衣装:フランシン・ジェイミソン=タンチャック
編集:ジョン・ポール
音楽:クリス・バワーズ
音楽監修:ジョーダン・キャロル モーガン・ローズ
楽曲:ブレンダ・ラッセル 
   アリー・ウィルス 
   スティーブン・ブレイ
振付:ファティマ・ロビンソン

【キャスト】
セリー:ファンテイジア・バリーノ
シュグ・エイブリー:タラジ・P・ヘンソン
ソフィア:ダニエル・ブルックス
ミスター:コールマン・ドミンゴ
ハーポ:コーリー・ホーキンズ
スクイーク:H.E.R.
若き日のネティ:ハリー・ベイリー
セリーとネティの母親:アーンジャニュー・エリス=テイラー
若き日のセリー:フィリシア・パール・エムパーシ
ネティ:シアラ
エイブリー牧師:デビッド・アラン・グリア
アルフォンソ:デオン・コール
グレイディ:ジョン・バティステ
ミスターの父親:ルイス・ゴセット・Jr.
ファーストレディ:タメラ・マン
ミス・ミリー:エリザベス・マーベル
ヘンリー・“バスター”・ブロードナックス:スティーブン・ヒル