来日ミュージカル『愛の不時着』有楽町よみうりホール | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 2020年に日本でも放送された韓国の大ヒットドラマ『愛の不時着』がミュージカルになりました。連続ドラマの放送時間トータル40時間を、第一幕(ピョンヤン)65分、第二幕(ソウル)65分という尺に収めるとあって、朝ドラや大河ドラマの舞台版の時と同じく「ダイジェスト版」という印象を強く受けました。韓国語はチンプンカンプンなので、字幕を見ていると舞台が観られないし、舞台を観ると字幕が見られないのでストーリーがわからず。次から次へと新たな展開が登場するのですが、強弱なく淡々と演じられるので、単調で盛り上がらないことこの上ナシなのと、衣装も各幕1着ずつ着た切り雀で、その平坦さゆえに時に睡魔が。。。舞台化の不完全燃焼でした。

 

 そもそも、ミュージカルとしての作りが弱くて、音楽やダンスで物語を進行するというよりも、芝居の合間に登場人物の心情を語る音楽が流れる感じ(連続ドラマのラスト5分間で良くあるやつね)。イ・サンフンの音楽が、劇場用にヤマ場に向けて盛り上げていくタイプではなく、どの曲も似た感じなので舞台が盛り上がらないんです。テレビドラマは見ていないけれど、連続ドラマだったら、お約束の場面!となるから似たような曲で良いと思うんです。もしかしたらテレビ版を意識してたんでしょうかね、音楽やダンスでストーリーを動かすのではなく、どことなくBGMや、各場面のエンディング的に挿入されている感じ。そして、そのまま「えっ、終わり?」な結末へ。

 

 パク・ジヘの演出は舞台化ならではの潤色や、舞台演出が欲しかったなぁ。基本的に書割の前でのお芝居で、椅子やテーブルが時おり出てくる位。ただ、この書割がプロジェクトマッピングを使っているのか、とても色鮮やかだったのと、立体的に見えるデザインだったので、舞台がそこまで地味にならなかったのが救い。とはいえ、やっぱり、冒頭は舞台上からパラシュートでユン・セリが降りてくる位の仕掛けが欲しかったのは正直なところ。そして、演奏はカラオケです。でも、この演出だからこそ、有楽町よみうりホールでの上演が可能となったともいえます。

 

 1957年に開館した有楽町よみうりホールは、日生劇場と同じ村野藤吾が設計したホールで、曲線を多用していて、客席全体が包み込まれるような心地よい空間。1100席ありながら、舞台間口も狭く、プロセニアムの高さ=天井高さなので、2階席からも観やすい小屋なのですが、いかんせん舞台機構には問題がありすぎ。すのこが低かったり、舞台袖がなかったり(三角形の建物の鋭角に舞台を設置しているので、ホリゾントもとんでもないことになっています)、はたまた、客席サイドや天井からの照明機器もないという、学校の講堂レベル。今回も、客席後方をつぶして即席の照明コーナーを設けていました。ま、今回の『愛の不時着』はそれでも上演できるプロダクション、ということなのでしょうが、ミュージカル劇場としては欠陥アリゆえ、せっかく来日してくれたカンパニーなのに申し訳ない限り。とはいえ、昭和の市民会館みたいなロビーや売店も、今となってはむしろ新鮮。

 

奥が狭くなっている台形舞台です。
 

 韓国キャストはみなさんお若くて声に張りがある! 日本のカンパニーだと中高年の俳優がキャスティングされる役も若手が演じていて、このあたり、宝塚的。一方、男性キャストはアイドル的なキレイなお兄ちゃんで、ジャニーズ(死語ですね、今では)主演の公演みたい。ダイジェスト感満載な舞台はやっぱり芝居のしどころがないようで、主役カップルのラブラブ度も、サブカップルのツンデレ度も唐突感が先立ってしまいました。「テレビ版はもちろん見てますよね?」が前提だったのかも。作品や芸を堪能するというよりも、アイドルを追いかける、そんな公演でした。

 

【キャスト】
リ・ジョンヒョク:ハン・スンユン
ク·スンジュン:サンヨン
ユン・セリ:キム・リョウォン
ソ・ダン:ジョンヨン


チョ・チョルガン:ホギュ
北朝鮮兵士 ピョ・チス:カンドンジュ
北朝鮮兵士 パク・グァンボム:ジヒョク(SUPERNOVA・超新星)
北朝鮮兵士 キム・ジュモク:カンドンウ
北朝鮮兵士 クム・ウンドン:キムビョンヨン

アンサンブル(女性):ビョジウン、イミジュ、シンチェウォン、ユンアジン 
アンサンブル(男性):キムビョンフン、ソギョンス、ソンジュンボム、イジュンヨン



 

【スタッフ】
原作:パク・ジウン
プロデューサー:キム・ジンソク/キム・テヒョン
演出:パク・ジヘ
脚本:パク・ヘリム
作曲・音楽監督:イ・サンフン

 

R席 ¥19,000 / SS席 ¥17,000 / 注釈付きSS席 ¥17,000 / S席 ¥14,000 / A席 ¥10,000

 

上演時間

第一幕65分+休憩20分+第二幕65分


公式サイト