イザボー@東京建物 Brillia HALL | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 英米の歴史は登場人物の名前がみんな似ていてわかりにくい&争いが100年単位なので、こうして舞台で見せられるとお勉強になります。今回はジャンヌ・ダルクが登場する前、イザベル(=イザボー)が主役。シャルル七世:甲斐翔真&ヨランド・ダラゴン:那須凜が狂言回しのように登場したり、スカーレット2のような少女が「幸せ?」と言いながらイザボーの前に現れたり、多面的にイザボーを紹介。

 

 イザボーって誰?から始まったミュージカル。タイトルロールが一番無名かもしれません(^-^;「最悪の王妃」という触れ込みだったけれど、年表を追っていくような作りなので、お芝居の変化が乏しくメリハリがなくなってしまうのは致し方ない部分ですかね。望海風斗のイザボーは可愛く見せよう、キレイに見せよう、格好良く見せようなんてかけらもありません。登場と同時に低音でシャウトしまくり、ロックです♪ とはいえ、悪役としての見せ場があるわけでもなく、色仕掛けが多い割に色気があるわけでもないので、ちょっと空回り。マゼラン卿のように「悪人に見せていて実は良い人」だったり、皇帝ネロのような「残虐の極み」はたまたマリー・アントワネットのような「国を亡ぼすほどの贅沢三昧&恋愛三昧」があったりするわけではないので、意外と盛り上がりません。上演時間以上に長く感じました。

 

 イザボーが主役だけど、芝居としてのクライマックスはことごとく男優たちで(水戸黄門みたいw)、シャルル七世:甲斐翔真は歌はコスチューム物が抜群に似合うスタイルの良さ、シャルル六世:上原理生は歌声と長身で「狂っても品格のある王様」ぶり、オルレアン公ルイ:上川一哉はダンサーかと思っていたらいつの間にか歌手として上手くなっていたこと、ブルゴーニュ公フィリップ:石井一孝の衰えない声量と押し出しなど、それぞれに見せ場があるのですが、それ故に冗長感が勝ってしまい、タイトルロールへの求心力も今一つ。このあたり、ミュージカルなんだから、楽曲でワープさせたり、ダンスで表現したりは難しかったんですかね。クライマックスで芝居の見せ場があるわけでなく、楽曲も演出もフルパワーの連続なだけに、歌自慢たちののど自慢なステージになってしまいました。オリジナル作品なのに、歌い手のスイートポイントと和田俊輔による楽曲の盛り上がりとの相性が今一つで、サビの部分で裏声に逃げてしまうキャストが続出なのも残念。

 

 面白かったのは場面転換。3重の蛇の目回しな大道具で「コマ劇場みたい」と思ったんですが、実は盆が回るのではなく、人力で装置を回しているのでした。それも少人数で! これがスピーディーなのと、装置が大きいので迫力満点。c字型で階段状の装置が三重になっているので、ずらして設置すると「カルメン」の闘牛場のように、並べて設置するとサントリーホールのひな壇のようになるのが斬新。そして、ミュージカルあるあるですが、装置転換も見せ場になっていて、逆方向に高速で動く装置に役者が飛び乗ったり、走行中に立ち上がって動いてみたりと大活躍! ところどころに手すりが設置されていましたが、危険なことには違いありません。役者のみなさんに拍手! そして、クライマックスの紙吹雪!この量が尋常じゃなくて『桜の森の満開の下』の幕切れの桜吹雪のような、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』第一幕ラストの薔薇の花を望海風斗(ヌードルス役でした)が薔薇の花に囲まれている時のような、『フラッシュダンス』の天井から水がザッパーンのような、舞台の空気が一瞬で変わる迫力がありました。

 

【キャスト】
イザボー・ド・バヴィエール:望海風斗
シャルル七世:甲斐翔真
シャルル六世:上原理生
ブルゴーニュ公ジャン:中河内雅貴
オルレアン公ルイ:上川一哉
ヨランド・ダラゴン:那須凜
ブルゴーニュ公フィリップ:石井一孝
イザベル:大森未来衣
ヴァレンチーナ:伯鞘麗名

石井咲、加賀谷真聡、川崎愛香里、齋藤千夏、佐々木誠、
高木裕和、堂雪絵、中嶋紗希、宮河愛一郎、安井聡、ユーリック武蔵

スウィング:井上望、齋藤信吾、高倉理子

【スタッフ】
作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
美術:松井るみ
照明:関口裕二
音響:山本浩一
衣裳:前田文子
ヘアメイク:宮内宏明
音楽監督・編曲:桑原まこ
歌唱指導:西野誠
振付:三井聡/港ゆりか
アクション指導:星賢太
演出助手:渋谷真紀子/高橋将貴
舞台監督:幸光順平
宣伝美術:岡垣吏紗
宣伝写真:中村理生