Tootsie@日生劇場 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 山崎育三郎に代表作が誕生しました。当たり役です。1982年にダスティン・ホフマン&ジェシカ・ラング主演でヒットした映画『Tootsie』が2019年にブロードウェイでミュージカル化、このたびようやく日本初演となりました。才能はあるけれど性格に難ありのため仕事がない役者マイケルが女装してオーディションを受け、ミュージカル(映画だと昼ドラでした)女優としてデビュー。共演者に言い寄られて・・・というコメディ。とても舞台向きの作品で、80年代のミュージカル・コメディ好きだったらきっと大好きになるはず。

 男性が女装したところで、性別不明の役者が珍しくないブロードウェイだったらありうるシチュエーション(オバサンなんだかオジサンなんだかわからない大御所、名前は出さないけど結構いるでしょw)ですが、日本だとなんだかドラアグ・クイーン降臨みたいなオカマミュージカルになるのがお国柄。育ちゃん、女装するととにかくキレイ。メイクだけでなく脚線美と女優へのなりきりぶりも必見です! 目まぐるしく男装と女装を早変わりで行き来するのが圧巻。舞台もだけど、舞台裏の衣装部さん巻き込んでの早変わりを覗いてみたくなります。見た目だけでなくお芝居も余裕があるのは「プリシラ」の経験が活きているのか、客席も安心のなりきりぶり。第一幕ラストで「エニシング・ゴーズ」や「ジプシー」、「シカゴ」などのパロディ版フライヤーになりきった育ちゃんのビジュアルもいかにも英米っぽくて違和感なし! 男女行き来のバタバタや、アイデンティティなどが絡んでくるのは「ヴィクター・ヴィクトリア」などでおなじみの展開ですが、同じシチュエーションでも、男と女で◎だったり✕だったりするのは興味深いところ。男優が発言すると業界から干されてしまうのに、同じ発言でお女優が発言すると大人気になてしまうのが面白くもあり切なくもあり。現代社会における男の立ち位置の辛さの数々に「女は恵まれてるよなぁ」と見せつけられます。男女平等というと女性の権利ばかりフォーカスされますが、男性が差別されていることもアレコレ浮かび上がってくるのがこの作品を今上演する意義なのかもしれません。

 マイケルが恋い焦がれる女優:ジュリーを演じるのは愛希れいか。東宝ミュージカルでは元男役の宝塚出身者が女芝居と男芝居を行き来して笑いを取ることがお約束のようにありますが、今回、そのポジションは山崎育三郎に持っていかれていて、彼女に求められているのは「現代的に格好良い女優像」といったところ。華やかに可愛いのではなく、シャープにクールに演じられることが求められますが、元娘役トップではあるけれど、元々は男役でスタートした愛希れいかなので、低音中心の歌唱も、女装したマイケルへの対応と男にもどったマイケルへの対応との差、フィナーレでの誰よりもキレッキレかついつの間にかセンターを努めているダンスなど見どころいっぱい。

 今回のプロダクションはキャラクター重視でキャスティングされているようで、超歌ウマとか、超ダンサーの見せ場があったりするわけじゃないのですが、クセの強いキャストたちが大暴走! 肩の力を抜いて楽しめるプロダクションに仕上がってます!!!

 

【スタッフ】
音楽・歌詞:デヴィッド・ヤズベック
脚本:ロバート・ホーン
演出:スコット・エリス
振付:デニス・ジョーンズ
演出補:デイヴ・ソロモン
オリジナル装置デザイン:デヴィッド・ロックウェル
オリジナル衣裳デザイン:ウィリアム・アイヴィ・ロング
翻訳:徐 賀世子
訳詞:高橋亜子
音楽監督・指揮:塩田明弘
日本版装置デザイン:中根聡子
照明:日下靖順
音響:山本浩一
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:岡田智江
音楽監督補:田尻真高
歌唱指導:板垣辰治 山下まさよ
稽古ピアノ:宇賀村直佳 中野裕子
オーケストラ:東宝ミュージック ダット・ミュージック
演出補:上田一豪 西 祐子
振付補:青山航士 隈元梨乃
舞台監督:北條 孝 篠崎彰宏
制作:斎藤凌子
アシスタント・プロデューサー:梶原亜沙子
企画コーディネート:冨田雅子
プロデューサー:増永多麻恵 齋藤安彦

【キャスト】
マイケル・ドーシー/ドロシー・マイケルズ:山崎育三郎
ジュリー・ニコルズ:愛希れいか
サンディ・レスター:昆 夏美
ジェフ・スレーター:金井勇太
マックス・ヴァン・ホーン:岡田亮輔
ロン・カーライル:エハラマサヒロ
スタン・フィールズ:羽場裕一
リタ・マーシャル:キムラ緑子

アンサンブル
青山瑠里 岩瀬光世 高瀬育海 田中真由 常川藍里 照井裕隆
富田亜希 藤森蓮華 本田大河 松谷 嵐 村田実紗 米澤賢人

スウィング
髙田実那 蘆川晶祥