エルサレムに滞在中にパレスチナに入れることになった。
Nさんのネットワークによる計らいだった。
日本を発つ前にパレスチナ訪問の可能性は聞いていたが、
実現できるかどうかはその日になるまで分からなかった。
朝早くホテルからタクシーと交渉して僕たちはパレスチナへ向かった。
途中、パレスチナとイスラエルを遮るコンクリートの白い塀があちこちに見える。
ものすごく美しくない! 悲しいな!
僕たちが行ったのはガザ地区ではなく、
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区に位置する都市、ラマッラー。
エルサレムの北10kmに位置し、パレスチナの事実上の首都でもある。
イスラエルとは明らかに雰囲気が違う。
アラブの空気感そのもの。
瓦礫の積み重なった場所や空き地も目立った。
Nさんのネットワークでパレスチナに入れたと先ほど書いたが、
そのネットワークの人たちは
やはり日本から来ている十数人のメンバーからなる友好団体で
実業家や弁護士、医者、オペラ歌手、ジャーナリストもいた。
彼らのリーダーはパレスチナ政府とパイプがあるらしく、
彼の助力を得てNさんは日本から持参してきたピースポールを政府の関係者に
贈呈した。ピースポールとは世界の平和を祈る言葉が書かれた柱のことである。
着いた日の夜に政府主催の歓迎レセプションに僕たちも招待された。
会場に行ってみると雰囲気がなんだか険しく張り詰めていた。
和やかなレセプションからは程遠い。
着席してしばらくすると主催のスタッフがマイクに向かって話し出した。
「本当はゆっくりとディナーパーティをやるはずだったが、
昨日、司令官の一人がイスラエルによって暗殺された。明日から戦争だ」
すごいタイミングに居合わせてしまった。
映画じゃないんだから。
それでも参加者全員ディナーをいただき、その日は散開。
翌日、戦争が起きる気配はなかった。
僕たちは市街地を散策した。
途中で日本人の若者と出会う。
昼食を共にしながら彼からいろいろな話を聞いた。
彼はパレスチナに留学中で将来パレスチナに関わる仕事がしたいと言う。
パレスチナは経済的にも自立できていなくて
ほとんどがイスラエルに頼らざるを得ないのが現状だと言う。
僕には何の予備知識もなかったが、経済的な豊かさの差は歴然と分かる。
通りを歩く人たちに声をかけるとみんな人懐こい笑顔を見せてくれた。
子どもたちも素朴で可愛い。
街のあちこちには銃を持った兵士がいて
「勝手に写真を撮ったりしないように」と注意された。
少し話しているうちに打ち解けて写真にも収まってくれた。
たった二日の滞在で詳細が分かるはずも無いが
イスラエルとパレスチナの緊張関係はヒリヒリと感じた。
イスラエルからパレスチナに入るときはノーチェックだったが、
パレスチナからイスラエルに入るときは大違い。
国境に日本の高速道路の料金所のような検問所がある。
そこを通過する前に一時停止させられた。
帰りはマイクロマバスのような乗り物だったが、
銃を持ったイスラエル兵がドアを開けて入ってきた。
一人一人チェックをするためだ。
全員パスポートを提示させられた。
「Show me your passport.」と言うので
僕はパスポートを渡した。
兵士は僕の赤いパスポートを開くなり、
「Are you Japanese?」と聞くから「Yes.」と答えると
彼は何も調べもせずに黙ってパスポートを僕に返し、
次の乗客を調べ始めた。
僕ら4人の日本人の他に、アジア人らしき人も何人か乗り合わせていたが、
皆、細かく調べられていた。
僕は自分の赤いパスポートの力に驚いた。
これはどういうことだろう!?
パレスチナでも好意的な扱いを受けた。
イスラエルでも、そして、今、赤いパスポート・・・
それは日本がこれまで両方の国に対して行ってきた行動の結果なのではないだろうか。
僕たち日本人は今何をすれば良いのだろうか。
第二次世界大戦で敗北し、唯一の被爆国となり、
戦争放棄の憲法を持つ日本が今やらなければならないことは何か?
いや、日本だからこそやれることは一体何か!?
今日の夕方、パレスチナ関連のニュースを見た。
ガザ地区だけでなく、西岸でもパレスチナ人が
兵に殺害されている状況だという。
日本に留学しているガザからやってきたパレスチナ人が
スマホで家族とやり取りをしていた。
彼の友人が今日、死んだという。
日本の人に関心を持って欲しいと訴えていた。
関心を持つこと、本当にそうだと思う。
そして自分にできることを
たとえ小さなことでもいいからやり始めることだと思う。
現地でボランティアをしたり、様々な援助活動をしている方達、
本当に立派だと思う。
でも、誰でもそれができるわけではない。
自分の暮らしで精一杯という人が多いと思う。
そういうぼくもその一人だ。
でも、できることがある。
それは誰かの、どこかの国の幸せを、平和を祈ることだ。
愛のバイブレーションを送ることだ。
祈りなんて何になる!?という方がたくさんいることは承知している。
それは祈りというもの、波動というもの、
想いのエネルギーをいうものの本質を知らないからだ。
この世界は見えるものも見えないものも全て波動でできている。
いつかそのことについて僕の今認識していることをシェアしたいと思っている。
細かいことはどうでもいい、どんな言葉でもいい、
ふっと心に浮かんだら、その時に愛のエネルギーを発信してほしい。
それは自分の世界が広がることに通じている。
・・・が幸せになりますように
・・・が平和でありますように
パレスチナが平和でありますように
イスラエルが平和でありますように
世界が調和しますように
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