37. 誰も得しない新課程入試-数学編 | あまちゃんの成長日誌

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2013年度上半期の朝ドラ「あまちゃん」は人生のあまちゃんが海女(時々アイドル)を目指して成長する物語。
このブログでは、人生のあまちゃんこと一人っ子長男の成長を軸に、あまちゃんパパこと私の日々の出来事や想いを綴っていきます。

今の高3まではいわゆるゆとり指導要領。従って2015年度以降、新課程の大学入試が始まる。以前少し書いたが、せっかくなのでもう一度要点を書く。

現課程は数学I・II・III・A・B・Cの6科目で構成されているが、新課程では数学Cが廃止される。現数学Cにある単元は主に数学IIIやBに移動したが、行列だけが新課程では消えた。一方で、現課程で廃止された複素平面が数学IIIに復活した。

なお、I・II・IIIの数字はコア科目、A・Bのアルファベットはオプション科目である。 A・Bはそれぞれ3単位分の単元が用意され、そのうち2単位を各高校の判断で選択履修するという建前になっている。建前と言うのは、進学校では数学Aは3単位分すべて履修していることが予想されるからである。

入試と言う観点から新課程の数学を見てみる。すると、主要な大学ではほとんど出題されない分野があることにお気づきだろう。たとえば統計とか、コンピュータとかの分野である。新課程の数学Bは、「確率分布と統計的な推測」、「数列」、「ベクトル」から2分野を選択履修することになっている。これはほぼ問題ない。進学校なら数列とベクトルを選択するに決まっているし、主要な大学もほとんどこれらの2分野を指定している。問題は数学Aだ。

新課程の数学Aは、「場合の数と確率」、「整数の性質」、「図形の性質」のうち2分野を選択履修することとなっている。このうち「整数の性質」が新課程の目玉だ。いわゆる整数問題は、カリキュラムにははっきりとは存在していなかったが、今までもいろいろな大学で出題されてきた。さて、数学Aは標準的には2単位科目なので、各大学は3分野のうち2分野を指定するか、センター試験みたく選択問題にするかの対応を迫られている。

ここが悩ましいところだ。かつて「整数の性質」が単元立てされてなかった頃は、各大学は平気で整数問題を出題できた。しかし、数学Aの範囲として、「場合の数と確率」、「図形の性質」と指定してしまうと、整数問題を出題しにくくなるではないか。指導要領の範囲外だった頃には平気で出題出来て、範囲内になると出題出来なくなるのだ。

まさか、「場合の数と確率」を外すわけにはいかない。かと言って「図形の性質」も外しにくい。今の数学のカリキュラムはびっくりするような状況になっていて、重心・外心・内心を含む五心が数学Aの範囲なのだ。重心が各中線を2:1の比に内分するというのも数学Aの範囲。この定理は中2で習う中点連結定理のコロラリーに過ぎないが、重心の定義や重心の性質は数学Aの範囲なのだ。また、円に内接する四角形の性質(対角の和が180°)も数学Aの範囲だ。これも中3で習う円周角定理のコロラリーなのだが。しかもこれを知らないと、センター試験の三角比の問題でよく出る、円に内接する四角形のいくつかの辺の長さと角度を与えて、誘導的にいろんな量を計算させる問題も出題出来ないのである!

各大学の対応は次のまとめサイトに詳しい。「河合塾の新課程入試情報」 。これによると、東大・京大などの旧帝大やそれに準ずる大学は、なんと数学Aは全範囲からの出題となっている。一方、中堅以下の大学は、「整数の性質」を範囲外とするか、3分野のうち2分野を履修したとの前提で出題するとして暗に選択問題にすることを匂わせている。はっきり言って、東大や京大などの対応は当然だ。数学Aはオプション科目と言っても、そのどれも履修して当然の単元だからだ。

上で新課程の目玉は数学Aの「整数の性質」と書いたが、実はもうひとつ目玉がある。それは数学I の「データの分析」だ。この単元は現課程では数学Bの、主要大学の入試では範囲外とされている単元から移ってきた。数学I は必修なので高校生全員が学ぶことになるから、新課程の超目玉と言える。しかし、さらに上で書いたように、以前から多くの大学で統計が出題されていないことから、これにより主要大学での統計の出題が増えるとは考えにくい。大学の先生たちはああ見えても案外(?)保守的なのだ。え?分かってるって?

それに前にも書いたが、数学I は他の科目に先だって学ぶこととされているので、この段階でΣ記号は使えない。Σが登場するのは数学Bの数列まで待たなければならないからだ。とすると、平均や分散の定義も+……+とか使って書かなくてはならない。つまり使い物にならないのだ。しかも、その発展的内容である数学Bの「確率分布と統計的な推測」が大抵の大学で範囲外とされているから、なおさら出題されにくい。

つまり今回の新課程の二大目玉が、入試との関連で言えば、何だか残念なことになってしまっているのだ。ここまで主に大学サイドの話だが、高校サイドも困り果てている。つまり大学の態度(数学Aの出題範囲)が定まらないと何を選択して教えたらいいか分かるず困るのだが、入試1年半前の今ごろになって主要大学の入試科目が固まってきたからだ。おそらく多くの高校では見切り発車的に数学Aを教え始めたか教え終わったところだろうから。

高校は大学の顔色をうかがい、大学は高校の履修状況を見極めて範囲を決めようとする。しかも、どう転んでも、どっちにとってもあまりハッピーではない。そもそも数学と言うのは、I とかAとかに分けられるものではなくひとつの体系だ。数学Aとその他の科目の融合問題もあり得る。選択問題にする大学だって作問の苦労が増えるだけだ。新課程入試はかくて誰も得しないのである。

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