(過去記事1)で宿題としていた

投資信託 全世界株式オールカントリー(オルカン)

の分析を行う.

 以下の(1)(2)ではオルカンは米国S&P500と同じくらい良いことを示す.(3)では,それに関する私の感想.

 

(1)

 

上のサイトの

eMAXIS Slim全世界株式

2018年からの新しいものなのでデータは少ない.

 

年末    AllCountry    Ln(AC)  ACの前年比
2018    9254    9.132811169 
2019    11736    9.37041632   1.268208
2020    12788    9.45626251   1.089639
2021    16971    9.739261284  1.327104
2022    16024    9.681842877  0.944199
2023    20899    9.94745659   1.304231

 

一番右の数値(各年の年率リターン)の平均は1.186676,標準偏差は0.164619.

このLn(AC)つまり価格(円)の自然対数をとった値(9.1-9.9)をグラフにプロットして,線形近似したら,

西暦2017+n年は

y=0.1512n+9.0256

R^2=0.9383

exp(0.1512)=1.163229

となった.

ここ5年間で,年率リターンが16.3%で,決定係数も1に近く,とても近似精度が高い.

まあデータ数が少ないが,

(過去記事1)(6)で

ここ5年間のS&P500は,

2018+n年で,
y=0.1673n+12.564
R^2=0.9778
2.71828^(0.1673)=1.182109

であったので,

オルカン(全世界株)とS&P500は,

年率で16.3%と18.2%

決定係数で0.94と0.98

となり,少しSP500が勝るが,同じ程度ともいえる.

信託報酬(と税)は入れていないので,実際はより下がる.

emaxis slimだと信託報酬は

オルカンもSP500も0.09372%と同じだから,

1.163229*(1-0.09372/100)=1.16213882..

1.182109*(1-0.09372/100)=1.181001127..

オルカン(全世界株)とS&P500は,
年率リターンが16.2%と18.1%

となる.

5年だと

1.16213882^5=2.11977635..

1.181001127^5=2.297479...

となる.5年で2.1倍と2.3倍

 

 上と(過去記事1)の(6)から,オルカンとSP500のここ5年の年率リターンの

算術平均が18.7%,16.9%,

標準偏差が16.46%,9.91%

である.

オルカンの方がSP500より,年リターンの算術平均は大きいのだが,標準偏差も大きいため,近似年率リターンはSP500の方が高い.

 


(2)

結論は変わらないと思うが,念のためここ13年間のデータも見てみた.

下のサイトからとった.

 



これはETFで,信託報酬は高い

0.264%



AllCountry        
年末    AllC(円)    Ln(AC)       
2011    839    6.732210706
2012    1070    6.975413927
2013    1570    7.358830898
2014    1950    7.575584652
2015    1804    7.497761701
2016    1788    7.488852956
2017    2141    7.669028289
2018    1816    7.504391559
2019    2302    7.741533589
2020    2490    7.820037989
2021    3264    8.090708716
2022    3048    8.022240917
2023    3897    8.267962305

西暦2010+n年は

y=0.1023n+6.8799
R^2=0.8763
2.71828^(0.1673)=1.107716


となった.ここ12年で年率10.8%.

(信託報酬は考慮していない.)

まあ,想像の範囲内でした.


(3)

上のサイトによれば,

オルカンの中の60.6%は米国株式だ.そのほとんどがSP500の企業株だ.

それであまり変わらないのであるならば,オルカンも悪くないかもしれない.

 

仮に今後,SP500が(1+m)倍に値上がりしたとすると,

オルカンは,米国以外の株が全部0になってしまったとしても

0.606(1+m)倍にはなる.

これは一年あたりではない.期間は任意だ.

 

つまり,

比率

 

(オルカンの成長率)/(SP500の成長率)      (*)

 

は,最低でも0.606にはなる.

最高の場合は100でも1000でもなりうる.青天井だ.

(本当はSP500の完全に全てがオルカンに入っているわけではないので,0.606ではなくもう少し小さいが,0.5-0.6以上であることは間違いない.)

 

eMAXIS Slimは5年間しかないが,全世界株式をもっと長期で考えると,

上の比率(*)は0.6よりだいぶ小さい(米国株好調)のだが,それは昔は

全世界株にたいする米国株の割合が小さかったからだ.

しかし,今は6割が米国株なので,(*)は0.6以上にしかならない.

今後もっと米国株が好調で,世界の9割が米国株になったとしたら,

ますます全世界株と米国株の差がなくなる.米国株以外の株が無くなるわけだから.

 

 

ならば,

オルカンを買えば良いのか?

今の米国株は80年代日本株のようにバブルであって近々はじけるとしても,世界は成長していくだろう,と考えれば,そうとも言える.

ただ,既に世界の6割が米国だ,米国がこけたら世界もこける.実際,コロナ禍では世界的に株価は下がり,オルカンもSP500も下がり方はほぼ同じだった.オルカンは分散による下落率緩和効果は無かった.

 

 あと,米国株がこけたときに,その富が別の国の株式に異動するなら,オルカンは生きる.しかし,不動産も債権も貴金属も暗号資産もクラウドファンディングもDAOもある.それ以外のものが今後登場するかもしれない.Bitcoinなんて2009年に登場したばかりだ.まだ15年しかたっていない.

 

 (過去記事2)に書いたように本当はリーマンショックで暴落した後に2008年末に日経平均インデックスを買っておけば,約3倍にはなっていた.SP500ならもっと良かったか.

 しかしその頃だったか2015年頃だったか,世間は株式含め金融商品に否定的な論調であった.誰だったか忘れたが,ネット記事で,株式投資は儲けのためにやるものではない.芸人や野球や相撲のタニマチのように,企業を応援するためにやるものだ,という人がいて.そういうものか,と思ったものだ.(過去記事2)でも書いたように,2008年の15年前1993年から日経平均は半減していた.その数字やその当時のマスメディアの金融業界批判が激しかった.

2010年(日本公開2011年)にはドキュメンタリー映画インサイドジョブもあり,アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞も受賞した.

 

 インサイド・ジョブとはインサイダー取引での犯罪のことだ.世界金融危機と言われ,金融業自体が不正の温床でもう駄目だと言われていた.業界全体が素人をだましていると.

 1993年に60歳定年で退職金を株式投資し,2008年に半額以下になった75歳後期高齢者をしり目に,世間の流れに逆らって,大金を株式に回した人って,どういう人たちだったのか?

 少なくとも2024年の今,株式投資を始めた人とは全く違う人種だと思うのだが.

 

 そういえば(過去記事3)などで過去30年・40年で日経平均やSP500のインデックスファンドをやり続けていたら,などと皮算用をしてみたが,インデックスファンドが普及したのはごく最近だ.

 

上の記事で経済評論家故山崎元氏が言っているが,彼でさえインデックスファンドを初めて知ったのが1985年だ.インデックスファンドの優秀性を理解したのも2008年リーマンショックの前くらいだと言う.

 2000年代後半から,

(1)インデックスの銘柄入替が2000年の日経平均の入替ほど乱暴でなくなったこと、

(2)インデックス・ファンドの運用手数料の低下が進んだこと、

(3)個人投資家にとって個別銘柄でリスクのバランスの取れたポートフォリオを運用することが難しいと(山崎元氏が)分かったこと

などの理由から山崎元氏はインデックスファンドを個人投資家に勧めるようになったという.

 そうなのだ.インデックス・ファンドが普及したのはごく最近なのだ.2008年から15年間インデックスファンドをやっていた人は,先の世間の金融業界への不信感など逆境に加え,手数料が高く普及していなかったインデックスファンドを購入したという,ある意味非常識な人たちなのだ.

 ちょっと考えさせられる.

 

(過去記事4)でも、1960-90の30年間の日経平均は年率12%リターンでここ30年のSP500の約2倍のリターンで凄かったと書いたが、バブルの期間にインデックスファンドは無かったので、個人投資家が分散して持つのは難しかったし、1989-1990年の良い時に売り抜けた人なんて殆どいないだろう。1960-90年で年率12%なんて今から振り返ってみた時の絵に描いた餅に過ぎない。

 


(過去記事1)

(過去記事2)

 

 

(過去記事3)

 

(過去記事4)