(過去記事1)では,日本株とイギリス株を例に,株式投資に対して消極的な見解を述べた.米株は世界一絶好調な時期であるので過去を見て論じるのもはばかると印象を書いた.

(過去記事2,3)では日本株は,過去において年利0.9-0.7%程度で,指数近似との誤差が大きいので,そもそも年利という考え自体が成り立たないと書いた.

 

 今回はあえて米国株で調べてみる.

 私は特定の持論を固辞してその根拠を探すという方法はとっていない.知りたいことを調べているので,調査結果によっては持論が覆る場合もある.米国株と日本株はかなり違うことが以下で分かる.

 忙しい人は(7)まとめへ。

 

(1)

上のサイトをもとに,

米国株指標SP500(1980-2023)の自然対数log_eをとって,線形近似してみたら,

 

y=0.0647n+6.1216

R^2=0.8636

とでた.

決定係数0.8636>0.5だから,相当近似精度が良い.日本株の0.059とは大違いだ.

2.71828^(0.0647)=1.066839...

だから,年率6.7%のリターンである.

 

(2)

もう少し正確に,

SP500指数(1980-2023)に円ドル率をかけて(円換算にして.ただし手数料は1ドル2円とした)自然対数をとり,線形近似すると,

y=0.0609x+10.8779

R^2=0.8762

となった.

円ドル為替レートのランダムネスがきいて決定係数は悪くなると思ったが,悪くならず少し良くなってさえいる.

ただし,円換算でリターンは年率6.7%から年率6.3%に落ちた.

(なぜなら2.71828^0.0609=1.062793)

 

 

円ドルレートは以下のサイトからとった.

 

 

(3)

そこで,更に上のサイトから国債10年金利(12月末時点)(1980-1985は9年金利)を使って,log_e[SP500*(円ドル率-2)/(1+国債金利/100)]をとって線形近似すると,

y=0.0631x+10.8581

R^2=0.8858

今度は年6.5%になった.(2.71828^0.0631=1.065133)

 

(4)

国債金利は

1980年8.739%

1990年6.619%

2000年1.65%

2010年1.127%

2020年0.035%

なので,

(1+8.739/100)^10(1+6.619/100)^10(1+1.65/100)^10(1+1.127/100)^10(1+0.035/100)^3=5.78629263...

なので43年間で国債なら5.78倍になる.

 

SP500だと,

人気の投資信託
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
だと,信託報酬は年0.09372%だから,

(2)のデータを使って,

 

((1-0.09372/100)*1.062793=1.0617969504004

1.0617969504004^43=13.1759933684..

 

で13.2倍になるので,

13.1759933684/5.78629263=2.27710456607..

税金考慮するなら,

(1+12.1759933684*(1-0.20315))/(1+4.78629263*(1-0.20315))=2.223210487377656..

として,

ここ43年ではSP500のほうが国債より2.2倍良かった計算になる.

ただし,国債は無リスクでSP500は有リスクである

年率で言うと,2.223210487377^(1/43)=1.018753974...

で,米国株は日本国債より2%良い.

 

(5)

43年間は長いので,

20年間(2003-2023)でやり直してみる.

国債金利

2003年1.363%

2013年0.736%

として,

国債だと,

(1+1.363/100)^10(1+0.736/100)^10=1.23208757...

税金抜いて

1+0.23208757*(1-0.20315)=1.18493898...

だから20年で1.18倍になった計算になる.

年率で言うと,

1.18493898^(1/20)=1.0085207

だから,ここ20年の国債の年率は0.85%リターンとなる.

 さっきの(2)の44年間の中から直近の20年間だけ取り出して,線形近似すると

2002+n年として,

y=0.0844x+11.286

R^2=0.7608

2.71828^0.0844=1.088064...

だから年率8.8%リターンとなる.

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
だと,信託報酬は年0.09372%だから,

((1-0.09372/100)*exp(0.0844))^20=5.30817...

1+4.30817*(1-0.20315)=4.43297..

よって,国債との比では,

ここ20年で

4.43297/1.18493898=3.74109....

ここ20年で,SP500は日本国債の3.7倍良いという計算になる.

3.74109^(1/20)=1.068193...

だから年率だと,6.8%良い.

 

(6)おまけ

 

 

上のサイトでは,ここ5年でのリターンは18.20%とあるので,

あえて(2)の44年分(SP500円換算)のうち最近5年分をとる.

2018 301885

2019 316099 1.047087

2020 399316 1.26326

2021 471288 1.180239

2022 514088 1.09816

2023 650515 1.265377

一番右は前年からの一年間年倍率.

その平均は1.169356,つまり年リターンの平均が16.94%,標準偏差は9.9089%

 

線形近似してみた.

2018+n年で,

y=0.1673n+12.564

R^2=0.9778

2.71828^(0.1673)=1.182109

となった.

リターンは18.21%でほぼ一致している.

決定係数R^2はすごく良い.

((1-0.09372/100)(1.182109))^5=2.297479...

1+1.297479*(1-0.20315)=2.033896..

だから税金抜いても5年で2.03倍になる.

 

 

(7)まとめ

 

SP500の方が日本国債より
ここ43年間だと2.2倍(年率にして1.9%)
ここ20年間だと3.7倍(年率にして6.8%)
良い.
指数近似の精度は凄く良い
ここ43年だと米国911や日本のバブル崩壊を挟んでいる.
ここ20年だとリーマンショックを挟んでいる.
 
計算に間違いがあったら教えてほしい.
 
日本株もイギリス株もここ30年は上昇していない.
日本株も指数近似の決定係数が0.059とか,まったく指数近似できていないのに
為替レートを入れても米国株は指数近似の決定係数が0.7-0.9など
絶妙に指数関数近似が高精度で出来ている.これなら年率を考える意味がある.
(近似の精度は決定係数だけで決められるものでないが,グラフを見ればガタガタなのは一目瞭然である.)
 
 過去記事の複利効果の嘘1は一般論だが,嘘2は日本株についてであった.嘘2はここ半世紀の米国株については成立していないようだ.
 

 

 (自分への宿題)

・全世界株(オルカン)はどうか?

・日本の1990年バブル崩壊前までに限ると指数近似はどうなっていたか?

・米国株の指数近似で誤差が少ないは本当か?log(SP500)-(近似一次式)の分散はどの程度でそれにexp()とるとどの範囲か?

 

 

 

 

 


(過去記事1)

 

 

(過去記事2)

 

 

(過去記事3)