前にも書いたが,

投資の世界は,療育・教育の世界と似ている.

どちらも,専門家・初心者という言葉を多用する.

しかし実際には

成果をあげるという点において,専門家と初心者の間に差は無い.

かなり運の要素が強い.

専門家と言う割に,成果をあげる能力も実績もある専門家というわけではない.

双六の専門家というが,内実は双六を売る専門家であって,

双六で勝率が高い専門家

というわけではない.

 例えば,フィナンシャルプランナーなどは,シャープレシオ,アルファ,ベータなど指標を勉強するが,あれは過去のパフォーマンスを測るものであって,未来の推測には何も貢献しない.(あれを理解するのに高校数学程度は必要なので,FPギルドとしてド文系に対して新規参入障壁をつくるためにある.)未来予測に貢献するのだったら公表しないで自分だけ知って大儲けするはずだ.市場は完全にランダムなのだ(インサイダーで無い限り).本当に儲けている人は,まぐれ当たりか,違法ゾーンのインサイダーだけだ(そして運よく摘発されていない人).

 

専門知識が成果をあげることに役立たないのだ.

強いて言えば,

専門知識を蓄え専門的思考力をもっておくことで,

似非専門家に騙されないで済む

ということである.

 私もその程度のことは知っていますよ,という雰囲気を出すだけで,それで商売をする似非専門家を遠ざけることが可能になる.

 

 投資も教育もどちらも,資産や子供が心配な人を操ることで手数料で儲けることで成り立つ.成功報酬で儲けているわけではない.

 

 最近,政府がNISA,iDeCo, 新NISA(2024年1月から)などでテコ入れしていることや,ピケティのr>g本や,株価が調子が良いことで,投資ブームが来ているような気がする.

 

 私は,10年に一回くらい,投資すべきかを塾考して,その結果やらないことにし,10年間投資の事は忘れて,心平穏に,別の事に神経を集中して生活してきた.おおむね後悔はしていない.

 

 ただ,ここ10年は投資をしていたほうが,結果的には儲かったことになる.

 

日経平均株価(各年終値,円)

2023年33464.17

2018年20014.77

2013年16291.31 (安倍内閣,消費税8%決定)

2008年 8859.56

2003年10783.61 (小泉内閣,武富士スキャンダル)

1998年13842.17

1993年17417.24 (細川内閣,皇太子・雅子ご成婚)

 

上は5年ごとの日経平均株価.

たしかに2008年に投資を始めた人は,税金20.315%かかったとして

(8859.56+(33464.17-8859.56)*(1-0.20315))/8859.56=3.21

3.2倍になっていた計算になる.

信託手数料1%としても(今ほど信託手数料低いネット証券はなかった)

おおざっぱに信託手数料は15年で

0.01*15*((33464.1+8859.56)/2)=3174.3

3174.3円かかるとして,(15年ごとの株価データを見ずに線型に増加したと仮定)

(8859.56+(33464.17-8859.56)*(1-0.20315)-3174.3)/8859.56=2.85

で,

2.9倍

になったことになる.(注1)

 

 その人は今頃鼻高々だろう.自分が賢かったと自慢したいだろう.

 

 しかし,それは単に運が良かっただけだ.

 

2008年の時点で15年後に3倍になっているなどと予測することは不可能だ.

2008年の15年前1993年は17417.24円

だったので,0.509倍,

つまりは半分になった計算である.

 

15年間ことあるごとに株価見てどきどきはらはらして不安になって待ち続けて

財産が半分になったわけである.

 45歳のときに投資初めて60歳定年で,つみたてた給与が半分

 60歳の時の退職金を預けて75歳後期高齢者で,退職金が半分

 

になった計算になる.

 

 この約3倍になった鼻高々な人と,15年待って半分になった人との違いは無い.単に運の差だ.

 

 1993年から更に15年前を見てみよう.

 

1978年6001.85円 (第一次大平内閣,江川事件)

だ.

税金20%としても,

(6001.85+(17417.24-6001.85)*0.8)/6001.85=2.52

で,2.5倍だ.

 

この2.5倍という数字を1993年に見て,夢見て投資を初めて15年たった結果が資産半減である.

 

 ただ,消費者物価指数は

 

1978年66.7

1993年97.1

2008年98.6

2013年96.6

だから,2.5倍は

2.58*(66.7/97.1)=1.772..

で1.8倍とみるほうがより正確だろう.

 

 

 長期投資すれば儲けが出るというのがr>gであり,米国経済を追ってきた結果でもある.米ソ冷戦でもソ連が崩壊し,米国はここ150年間では世界で一番経済が好調な国である.日本と米国を比べるのはどうだろうか.日本の栄光は1980ー90年代であって,比較的みじかかった.

 

 例としてイギリスの例を見てみよう.

 

 

 

 

英国FTSE100インデックス(各年終値)と消費者物価指数と,その比率

2023年7733.24  130.98  59.0

2018年6728.13  105.92  63.5

2013年6749.09   98.52  68.5

2008年4434.17   84.73  52.3

2003年4476.87   75.51  59.3

1998年5882.60   71.17  82.7

1993年3418.40   64.19  53.3

1980年 620.60   31.27  19.8

1978年 468.06   ?? 

 

どうだろうか?

ここ20年でイギリス株は変わっていない.30年で見ても殆ど変わっていない.手数料のことや株価みてハラハラドキドキ無用な時間を考えたら損ではないだろうか.

 

 

 まあ,自分個人は使うつもりが無く,孫,ひ孫に相続させる遺産のつもりで投資するほどお金があるなら,良いかもしれない.しかしたかが30年間ぐらいではどう転ぶか分からない.

 

 

(注1)

信託報酬について,この計算は過去データを細かく見ていないというだけでなく理論的な計算でも甘い.

信託報酬の複利効果については,次回書く.

 

 


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