私は教育界療育界や投資金融界に対して懐疑的である。

そしてこれらには共通点がある。

 

子供や資産といった顧客にとって非常に重要であり未来を見すえるべきであるものに対して、

たいへん乏しい知識と浅い思考で、さもよく知っていて深く考えているかのようなエセ専門家が、顧客を素人扱いして、手数料だけ稼ぎ、責任を取らずに短期的に関わった後は永久に行方をくらます存在であるという点で一致している。

 

 

 私は昔、銀行へ行った時に、綺麗なパンフレットを受け取った。それは外貨貯金だったか投資を勧める内容で、そこにはドルコスト平均法が薦められていた。

 

 ドルコスト平均法とは定額購入法とも言う。

  時刻1,2,…,nにおける一株の価格がP_1,…,P_nであるとする。(各P_iは正の実数をとる確率変数) 各時刻iにおいて1ドルで1/P_i株購入し、

トータルで(1/P_1)+…+(1/P_n)株購入する。

これがドルコスト平均法である。

 

 

 ん?これはおかしい。私は直感的に思った。その銀行のパンフレットは、カラー刷りで投資初心者向けに一見易しそうに(でも実際は全然丁寧では無い)解説しており、ドルコスト平均法が優れていると薦めている。他の初心者向けの本やwebページにもほぼそのように書いてある。実は今だにそうだ。

 

 たとえばこんな感じ

 

 

 

 (#) 株価が高い時は少なく安い時は多く買えるから

だと言う。

 ん?本当か?だって各時刻でその株価が高いか安いかは過去と比べて言えるだけで、将来から見て、現在の価格が高いか安いかは現時点では判別つかないぞ?長期的に使わず遠い将来に換金する予定なんだよね?

 下では(#)と同じ事をもっと数学的に書いている。

 

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドル・コスト平均法

 

Wikiでは、もう少し数学的に上の(#)を焼き直して以下のようにある。

 

ドルコスト平均法だと一株あたり

n/((1/P_1)+…+(1/P_n))

ドルで

購入できるが、

これは

一株の算術平均価格(P_1+…+P_n)/nより安い。

(これは算術平均>=調和平均から求められる。証明は易しい。以下の関係式の欄)

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/平均#一般化平均

 

 

 

 算術平均価格以下の価格で買えてしまうから得?まてよ?どうやって算術平均価格で購入するのさ?それって、各時刻に同株数ずつ計n株購入する時と一株あたりの株価を比べてるでしょ?(注1)

 

いや、ドカンとある時刻でnドル分買う場合を考えよう。

 

時刻Iでnドルでn/P_i株買えるから、

ランダムにi を選べば平均で

(n/P_1+…n/P_n)/n株買えるので

期待値として価格は

n/(1/P_1+…1/P_n)

である。つまりドルコスト平均法と同じなのだ。

価格はランダムに動くから、

時刻n/2の時点でnドル分購入するのと変わりない。

 

でもさ、株をやると言うことは、長期的には上がるという予測のもとであるわけだよね?だったら、時刻n/2と遅くはじめてる分、値上がり機会が損なわれている。nはそこそこ大きい事を想定してるでしょう?

 

 貯金が全くなくて、給与収入の一部から株にあてるしか無い人は、毎月ちまちま買うしかないし、それが証券会社の望むところ。

 でも貯金があるなら、どんっと時刻1で全額買った方が期待値としては収益最大になるよね?

 

 まあ、こんなこともちゃんと分かった上で、やらない、やる、ドルコスト平均法採用するしないを判断するなら、良いわけよ。

 しかしどう考えてもドルコスト平均法が一推しで他より優れているわけでは無い。

 たぶんドルコスト平均法を薦めている証券マンは二つのタイプのうちのどちらかだろう。

 1.分かってない。本当にドルコスト平均法最強と信じちゃってる

 2.薄々分かってるけど、証券マンにとってカモである株初心者をこの道に引きずりこむのに良くかかるセールス術だから、ドルコスト薦めてる。

 

 投資に詳しくない初心者の方、とくにご老人の方に、投資のプロが親切に教えてあげましょう

 

 なんて嘘だから。鴨にされるだけ。手数料でくってる彼らは株で利益を得る専門家では無い。

 

 双六を売ってる人は双六売るプロだけど、双六で勝つプロでは無い。サイコロ何回振ってもサイコロの次の目は読めない。双六を売るプロなのに、勝手に双六のプロと、省略して名乗って騙してる。

 

 

 

 

 

 

 ここまで書いてきたけど、より丁寧で詳しいサイトを見つけた。それが上のサイトだ。よく著者欄を見たら私が好きな山崎元氏だった。そこでは当口数法と比べてもドルコスト平均法は優れているわけではないことも書いてある。

 あのマルキール著ウォール街のランダムウォーカーでさえ、5ページにも渡ってドルコスト平均法の利点を書いてるとか。

 数学的学問的には大したことない小ネタを大袈裟に誇張して教科書に書いて有り難がるのは経済学の悪いところと言える。

 

 ドルコスト平均法のwikiにしてもそうだが、数学的な誤りがあるわけではない。どんな前提条件の時に何に比べてどの基準で有効かを気に留めないといけない。都合の悪い条件下で都合の悪い手法と都合の悪い基準で比べずに単に、有効とされている、としちゃうのはいただけない。初心者がそう間違えやすいのをちゃんと指摘してただしてやるのが良心的な職業専門家のはずなのだが、実際にはそうはせず、初心者をカモにするのが金融界。

 

 このブログで書いたような事を先の教科書の執筆者に話しても、こう答えるでしょう。

そうですね、でも私の書いてある事にも数学的な間違いはないでしょう。どんな条件下で何と比べてどの基準で論じてるか、あなたの言う解釈と一致することは、ちゃんと読めば分かります。Aの時Bになる、という命題に対して、Bになる事を強調するか、Bになる事が言えているのはAの時でしかない事を強調するかは主観の問題

 

と言って経済学者である著者からは逃げられて終わり。

 

 経済学者、証券マン、顧客

へと連携していくうちに、小さな嘘が蓄積されて顧客に届く頃には、比較対象も基準も省かれて大きな嘘になり、顧客だけが損をする事になる。

 

 学問的な本を読む時って、初心者に分かりやすいとうたっている薄い本を読んではダメね。最初から原典や学術書や論文に触れる事が大事。神は細部に宿る。

 特に経済学や精神医学は前提知識はそれ程必要がない。

 

(過去記事1)で取り上げたブルシットジョブの本でも証券業金融業はブルシットジョブとしてるし、(過去記事2)で取り上げたカーネマンの本でも証券業界の無意味さを指摘している。

 

(注1)ここについては次回記事で細く説明する。ドルコスト平均法が、その当口数購入法より優れていない理由を補足する。

 

 

続き

 

 

 


 

(過去記事1)

https://ameblo.jp/am20230302/entry-12811001156.html

 

 

(過去記事2)

 

https://ameblo.jp/am20230302/entry-12810779429.html