飛行隊長が語る勝者の条件 最前線指揮官たちの太平洋戦争 | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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実戦部隊での海軍飛行機隊の責任者は飛行長といって、おもに古参の少佐あたりがその任につき、めったに飛ばない。飛行隊長とは最前線で実戦に参加する指揮官で、おもに大尉で、まれに若い少佐。ここに収録の17編は雑誌‘別冊 丸’誌上に連載されたもので、平成に入ってからのインタビューをもとにしている。著者の雨倉さんは海軍の研究者で、当ブログでも(★)こんな本を以前に紹介している。

 

驚くのが、みな最前線に出ずっぱりであること。短期間内地で教官としての勤務くらいはあるけれど、みな語るべき死線のネタがたくさん。列機が何機やられても指揮官は生き残って部隊に報告をせねばならない。死んだ部下のことを思い出すのは、戦後60年経っていても悲痛だ。でも書名にあるような大仰な‘条件’なんてものは別に無くて、やっぱりみな運がよかったんだと思う。その運のよさが条件だ、といわれれば、そのとおりだが。

 

白菊特攻のはなし、昭和20年5月29日のわが横浜空襲に香取基地から出撃したはなし、悪評高い宇垣纏を大和艦橋で間近に接して褒めるはなしなどは、まったく接したことの無かったもので興味深く読んだ。平成の世に、これだけの実戦を経験した飛行将校が存命だったとは、もう今では想像できない。でもこの本は、副題と書名が逆のほうがいいな。

 

平成19年 (原著‘陣頭指揮’は平成8年)

光人社NF文庫

雨倉孝之 著

 

購入価格 : \110