ここ最近わかってきた「脳の3つのネットワーク」とコーチングの関わりについて、自分なりの私見を語ってみたい。
まず、脳の3つのネットワークについて、簡単に触れておく。
1.セントラルエクゼクティブネットワーク(CEN)
CENは、計画、意思決定、問題解決、目標設定、注意の維持など、高次の認知機能を担っている。
具体的な課題や目標に対する実行機能を統合し、複雑な認知タスクを遂行するのに役立つ。
いわゆる、アドレナリンが出まくっている集中モードや闘争モードのときに働いているネットワークと考えられるだろう。
働きを司る脳内の主要な領域は、外側前頭前野(lateral prefrontal cortex)、後頭頂皮質(posterior parietal cortex)などらしい。
2.デフォルトモードネットワーク(DMN)
DMNは、意識が内向きになるとき、例えば、思考、自己反省、将来の計画、過去の思い出などに関与するネットワークだ。
休憩時や特定の課題を行っていないときに活発になる。
簡単に言えば、入浴してるときやトイレで用達してるとき、散歩のときなどのボーッとしてるときだ。
働きを司る脳内の主要な領域は、内側前頭前野(mPFC)、後部帯状皮質(PCC)、海馬、楔前部、側頭葉の一部などらしい。
3.サリエンスネットワーク(SN)
SNは、重要な刺激や情報に注意を向けるために重要なネットワークだ。
外部の刺激や内部の感覚から、重要な情報を検出し、それに対して適切に反応することを助けている。
わかりやすく説明すると、自分の心の中で考えていることをアウトプットするときに働いてくれているネットワークだ。
また、他のネットワーク(CENとDMNなど)の切り替え、ONとOFFの切り替えを調整する役割も担っている。
働きを司る脳内の主要な領域は、前部帯状皮質(ACC)、前頭島(anterior insula)、扁桃体などらしい。
以上、3つのネットワークは、相互に連携しながら機能しており、認知機能や行動の調整に重要な役割を果たしていて、それぞれのネットワークは異なる役割を担い、必要に応じて他のネットワークと協調し、脳全体の効率的な働きを支えているということだ。
で、本題の3つのネットワークとコーチングの関わりだが、パワポの図に書いたようにコーチングが作用している。
◯セントラルエクゼクティブネットワーク(CEN)
一般的なコーチングは、このCENを活性化させることを目的としていると言っても過言ではない。
コーチがクライアントに問いかけ、クライアントの話を真剣に聴いて、それによってクライアントが自分の頭の中を整理することができる。
クライアントの頭の中が整理されると、難なくゴールを達成するために必要となるタスク(行動)が見えてくるので、それをどんな優先順位でいつまでに実行するのか、コーチは計画を立てるサポートをすれば良い。
そして、行動した結果がどうであったか、上手くいったことを認め、上手くいかなかったことからどんなことを学んだのかを問い、また次の行動の源泉にして行くサポートをコーチはすればいい。
これらは全て理性的な対話の中で育まれ、行動や成果となって現れてくるので、それを繰り返しながらクライアントのゴールを達成をコーチがサポートして行く構図だ。
CENは、計画、意思決定、問題解決、目標設定、注意の維持など、高次の認知機能を担っているので、コーチングによってCENはより活性化して行くとボクは考えている。
◯デフォルトモードネットワーク(DMN)
DMNはボーッとしているときに活性化する脳なので、通常のコーチングセッションでDMNを活性化することは難しい。
しかし、DMNが活性化したときにセッションの内容を思い出すことは可能だ。
というより、セッションで残ったモヤモヤがDMNが活性化したときに蘇ってくるイメージだろう。
では、コーチはどのようなアプローチでクライアントのDMNに働きかければ良いのかというと、セッション中には明確に答えが出ないような、持続的に思考し続けられるような問いを投げかけ、クライアントの頭の中に残った状態を作り出せれば良いのだ。
自分の体験からも、モヤモヤが残ったセッション、コーチの問いが頭に残り続けるようなセッションは、お風呂に入っているときに急に閃きが起きたりする。
なので、コーチとしては、クライアントにモヤモヤ感を残してしまったことを残念がるのではなく、後に効果が現れると捉えて、より深い効果的なセッションができたと自己肯定感を高めた方がいいだろう。
◯サリエンスネットワーク(SN)
SNは、外部の刺激や内部の感覚を言語化するときに働くのと、集中モードとボーッとするモードなどのONとOFFを切り替えるときに働くネットワークだ。
内省や内観など、人の思考や心の深いところにアクセスするようなコーチングは、最終的にその人の自己基盤(ファンデーション)を整え、揺るぎのない行動の源泉となることが多い。
具体的には、外部の刺激(起きたこと)や内部の感覚(感じたこと)を言語化して行くプロセスを辿って行く。
また、コーチからの感覚的なフィードバックも、内省・内観のトリガーとなることが多い。
やる気がみなぎっているとき(戦いに向かうとき)は、自律神経の交感神経が優位であり、アドレナリンが分泌されている状態だと思うけど、この状態から冷静さを取り戻す(副交感神経を優位にする)ときなど、このSNを働かせる必要がある。
クライアントの視点が変わるような問いをコーチが投げかけ、クライアントに気づきが起きるときなども、手元しか見ていなかったものを俯瞰できるようになるなど、脳の中でSNが働いている(ON/OFF切り替えが発生している)可能性が高い。
さらに、コーチはクライアントの状態を見て、フィードバックを通じてクライアントに冷静さを取り戻してもらうサポートをしており、このときのコミュニケーションがSNを働かせるコミュニケーションなんだとボクは考えている。
意外に長くなってしまったけど、このように脳の3つのネットワークとコーチングは密接に関わっている、コーチングは脳の3つのネットワークを活性化させるコミュニケーションと考えているボクの私見を好き勝手に語ってみた。